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賃貸事例 1306-R-0120掲載日:2013年6月
定期建物転貸借契約が締結されている定期建物賃貸借契約の終了とその対抗関係
当社は、定期借家契約で一括賃借している集合店舗ビルを、個別店舗ごとに、同じ定期借家契約で転貸している。
このような場合、当社とビルのオーナーとの定期借家契約が終了したときは、当社と個別店舗の借主との定期転貸借契約はどうなるか。定期の転借人にも、借地借家法第34条の転借人保護の規定の適用はあるのか。もしあるとした場合、ビルのオーナーは、借地借家法第34条の通知のほかに、第38条第4項の通知もしないと、転借人や賃借人に対抗できないということか。そうなると、当社からも個別店舗の借主(転借人)に同法第38条第4項の通知をしないと、定期建物転貸借契約の終了を転借人に対抗できないということか。
事実関係
当社は、事業用定期借地上の集合店舗ビルを定期借家で一括賃借し、それを個別店舗ごとに定期借家で転貸しているが、このたびある店舗の経営者から「貴社(転貸人=当社)が賃料の不払いや倒産等によって、ビルのオーナーとの定期借家契約が解除されたりした場合、当社(転借人)の立場はどうなるのか。その場合でも、当社は借地借家法第34条の転借人の保護の規定の適用を受けることができるのか。」と聞かれた。
質問
- 当社とビルのオーナーとの定期借家契約が終了した場合、当社と店舗の借主との定期借家契約(転貸借契約)はどうなるか。
- 当社とビルのオーナーとの定期借家契約が終了した場合、店舗の借主(転借人)にも、借地借家法第34条の転借人保護の規定の適用はあるのか。
- もし適用があるとした場合、当社とビルのオーナーとの定期借家契約が期間の満了により終了する場合には、ビルのオーナーは、借地借家法第34条の規定に基づく6か月前までの通知を店舗の借主(転借人)に対し行う必要があるほか(同条第2項)、当社(賃借人)に対しても、期間満了1年前から6か月前までの間に借地借家法第38条第4項の通知をしなければ、店舗の借主に対しても、当社に対しても、当社との定期借家契約の終了を対抗することができないということか。ということは、当社からも店舗の借主(転借人)に対し、借地借家法第38条第4項の通知をしなければ、定期建物転貸借契約の終了を転借人に対抗することができないということか。
回答
⑴ | 質問1.について ― 貴社とビルのオーナーとの定期借家契約が終了した場合、貴社と店舗の借主との定期借家契約(転貸借契約)も終了するのが原則である。しかし、その終了の原因が当事者の合意による解約の場合には、判例は、原則としてその合意解約の効果を転借人に対抗することができないとしている(最判昭和37年2月1日裁判集民5巻441頁)。 | |
⑵ | 質問2.について ― 貴社とビルのオーナーとの定期借家契約が期間の満了または解約の申入れによって終了する場合には、借地借家法第34条の規定の適用がある(同条第1項)。しかし、その終了の原因が貴社の債務不履行による契約解除であった場合には、転貸借の消滅を転借人に対抗できるので(最判昭和39年3月31日判夕164号70頁)、同条の適用はないと解される。 | |
⑶ | 質問3.について ― そのとおり。ビルのオーナーは転借人である店舗の借主に対し、借地借家法第34条の規定に基づく6か月前の通知をしなければ、転借人に対し、貴社との定期借家契約の終了を対抗することができず、また貴社に対しても、同法第38条第4項の通知をしなければ、その定期借家契約の終了を対抗することができない。他方、貴社においても、転借人である店舗の借主に対し、同法第38条第4項の通知をしなければ、店舗の定期転貸借契約の終了を対抗することができない。 つまり、オーナー(賃貸人)は、転借人に対し借地借家法第34条の通知をしない限り、転借人に建物の明渡しを求めることができないが、貴社(転貸人)も、転借人に対し同法第38条第4項の通知をしない限り、転借人に建物の明渡しを求めることができないということである。 |
参照条文
○ | 借地借家法第34条(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護) | |
① | 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。 | |
② | 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6月を経過することによって終了する。 | |
○ | 同法第38条(定期建物賃貸借) | |
① | 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。 | |
② | 、③ (略) | |
④ | 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。 | |
⑤ | ~⑦ (略) |
監修者のコメント
回答のとおり、最高裁の判例は、賃貸借契約を合意解約した場合は、転借人に対抗しえないが、賃貸借が債務不履行により解除された場合は転借人に対抗できる、すなわち賃貸人は転貸借の消滅を主張できるとしている。このことは、定期建物賃貸借のときでも同じと解される。
なお、定期建物賃貸借に対する借地借家法の各条文の適用の有無については、同法第38条において適用しない旨を明示している条文以外はすべて適用される。
より詳しく学ぶための関連リンク
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「事業用定期借地」
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「定期建物賃貸借(定期借家)」