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売買事例 1206-B-0153掲載日:2012年6月
接面道路が倒産した分譲業者名義のままになっている場合の重要事項説明の内容
20年以上前の開発道路が、昔の分譲会社の名義のままになっている場合、媒介業者としては、売買の場合にどのような重要事項説明をしたらよいか。分譲会社はすでに倒産し、連絡がとれないが、分譲会社の清算が結了し、その登記がなされていたら、どうしたらよいか。このような場合、開発道路なのだから、その管理は本来市町村が行うべきだと思うが、どうか。
事実関係
当社は、20年以上前のミニ開発物件(戸建住宅)の売買の媒介をするが、その媒介する物件の前面道路は開発道路であるにもかかわらず、昔の分譲会社の名義のまま残っており、その会社はすでに倒産し、連絡がとれない状況になっている。
質問
- このような道路の場合、媒介する当社はどのような重要事項説明をしたらよいか。もし分譲会社が清算結了の登記をしていた場合には、どうしたらよいか。
- このような場合、前面道路が開発道路なのだから、道路は市町村が引き取り、市町村で維持管理すべきだと思うが、どうか。
回答
⑴ | 質問1.について ― 清算が結了した旨の登記がなされていたとしても、実際の清算(①現務の結了、②債権の取立て・債務の弁済、③残余財産の分配=会社法第481条)が完了していない以上、会社は消滅していないので(後記【参照判例】参照、会社法第476条)、ひとつの方法としては、その会社の閉鎖登記簿の登記記録から、清算人(当時の取締役など)を探し出し、前面道路の所有権を分譲地購入者全員に贈与してもらうなりして、分譲地購入者全員の共有私道として維持管理していくようにすべきであろう。 したがって、媒介する貴社としては、その重要事項説明書には、道路についての他の分譲地購入者や関係市町村からのヒヤリング結果を踏まえ、現状の維持管理の実状を記載するとともに、今後の方向性について清算人に確認がとれれば、その確認された内容を記載し説明することになる。 |
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⑵ | 質問2.について ― 道路が開発道路であっても、市町村がその道路をすべて管理するというわけではない。実際に公的管理の対象になるのは、たとえば東京都の某区の場合には、幅員が4.5m以上あり、かつ、その道路が公道から公道に接続しており、広く一般の通行の用に供されていることを要件としている。したがって、もし本件の開発道路が行き止まりの道路であれば、その道路はその道路に面している人達だけが利用する道路ということになり、市町村が管理するということは、難しいということになろう。 |
参照条文
○ | 会社法第475条(清算の開始原因) | |||||
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
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○ | 会社法第476条(清算株式会社の能力) | |||||
前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。 | ||||||
○ | 会社法第478条(清算人の就任) | |||||
① | 次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。 一 取締役(次号又は第3号に掲げる者がある場合を除く。) 二 定款で定める者 三 株主総会の決議によって選任された者 |
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② | ~⑥(略) | |||||
○ | 会社法第481条(清算人の職務) | |||||
清算人は、次に掲げる職務を行う。 一 現務の結了 二 債権の取立て及び債務の弁済 三 残余財産の分配 |
参照判例
○ | 大判大正5年3月17日民録22巻364頁 | |
清算が結了した旨の登記がある場合でも、実際清算が結了していないときは、登記は実体上その効力を生ずることなく、会社は消滅しない。 |
監修者のコメント
世上、質問のようなケースは案外多い。分譲会社の清算人と回答のような合意ができれば理想的であるが、現実的には難しいことも多い。ただ、その分譲会社が倒産してしまっているということは、考えようによっては、所有者から買い取りを要求されたり、通行を妨害されることもない。
媒介業者としては、接面道路が開発業者の所有のままになっていること等、客観的事実を重要事項説明において正確に伝えることが必要であり、それが万全になされていれば責任を問われることはない。最も注意しなければならないのは、安易に「近い将来、市町村に移管されるであろう」などと保証のないことを説明してはならないことである。