公益財団法人不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター) > 不動産相談 > 売買 > 建築条件付土地売買の条件成就までの期間を短縮することの是非

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売買事例 1206-B-0152
建築条件付土地売買の条件成就までの期間を短縮することの是非

 当社は宅建業者兼建築業者であるが、最近のアンケート調査結果に基づいて、建築条件付土地売買における条件成就までの期間を3か月から2か月に短縮したいと考えているが、法的に問題ないか。
 当社は建築条件を解除条件としているが、そのような場合には、媒介業者が土地売買契約締結時に、買主に対し媒介手数料の請求をしても問題ないと思うが、どうか。土地の売買契約が有効に成立した以上、買主が建物についての商談に入らず、土地売買契約を一方的に解除した場合は、当社は買主に対し、違約金や損害賠償を請求できると思うが、どうか。

事実関係

 当社は、宅建業者兼建築業者であるが、当社は今まで建築条件付土地売買を行うにあたり、買主との間で、売買契約締結後3か月以内に建物についての建築工事請負契約が成立しなかったときは、その売買契約は自動的に失効するという解除条件を定めてきたが、最近のお客様からのアンケートによると、建物の発注までの期間(条件成就までの期間)について、もう少し短くしても構わないという結果が出ている。

質問

  •  このようなアンケート結果を踏まえ、当社は、建物の発注期限(条件成就までの期間)を3か月から2か月に短縮したいと考えているが、法的に問題があるか。あるとすれば、それはどのような法的根拠に基づくものか。
  •  当社の土地売買契約における条件は、停止条件ではなく、解除条件であるから、このような条件の場合には、土地売買契約の締結時点で、媒介業者が買主に対し、媒介手数料を請求しても問題ないと思うが、どうか。
  •  土地の売買契約が有効に成立した以上、買主が建物(建築)についてのパンフレットを見ただけで、商談に入らず、一方的に土地売買契約をキャンセルした場合、当社は買主に対し、約定の違約金を請求できると思うが、どうか。少なくとも、何がしかの損害賠償請求はできると思うが、どうか。

回答

   質問1.について ― 法的に問題があるかどうかの判断は、その具体的な取引の中で、建物の発注者が自分の希望する建物を建てることができるだけの十分な協議の時間が確保できたかどうかで判断されるので、一概にはいえない。
 なお、この問題の是非を判断する根拠として、かつては独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)が定める「不公正な取引方法」(同法第2条第9項、同公正取引委員会告示第15号(抱き合わせ販売=後記【参照判例】参照))に該当しないよう広告規制の面から実体的な規制もしていたが、現在はこのかつての規制の内容を改正し、業界団体の自主規制としての「不動産の表示に関する公正競争規約」のみによって規制をしている(後記【参照規約】参照)。
   質問2.について ― 原則として問題ないが、解除条件が成就した場合には、受領済の媒介手数料を返還するという対応が望ましい。
   質問3.について ― 土地の買主が、建物についての協議にも入らず、一方的に売買契約をキャンセルしたというのであれば、これは買主の債務不履行であり、違約金の請求は可能である。しかし、実際にそのような一方的なキャンセルであるということを売主が立証できるかどうかを考えると、かなり難しい面があることは否定できないので、実費以外の請求は話し合いで解決するのが適当であろう。

参照条文

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第2条(定義)〔改正前〕
  ~⑧(略)
   この法律において、「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。
一~四 (略)
五 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
六 (略)
同法第19条(不公正な取引方法の禁止)
   事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
同法昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号(不公正な取引方法)
  1~9 (略)
10  (抱き合わせ販売等)
 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するよう強制すること。
11 ~14 (略)

参照判例

   公取判審平成4年2月28日審決集38巻41頁
 抱き合わせ販売における公正な競争を阻害するおそれとは、当該抱き合わせ販売がなされることにより、買い手は被抱き合わせ商品の購入を強制され商品選択の自由が妨げられ、その結果、良質・廉価な商品を提供して顧客を獲得するという能率競争が侵害され、もって競争秩序に悪影響を及ぼすおそれのあることを指すものと解するのが相当である。

参照規約

   不動産の表示に関する公正競争規約第6条(建築条件付土地取引に関する広告表示中に表示される建物に関する表示
 前条の規定は、建築条件付土地取引に関する広告表示中に表示される当該土地に建築すべき建物に関する表示については、次に掲げるすべての要件を満たすものに限り、適用しない。
(1)    次の事項について、見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分りやすい表現で表示していること。
    取引の対象が建築条件付土地である旨
    建築請負契約を締結すべき期限(土地購入者が表示された建物の設計プランを採用するか否かを問わず、土地購入者が自己の希望する建物の設計協議をするために必要な相当の期間を経過した日以降に設定される期限)
    建築条件が成就しない場合においては、土地売買契約は、解除され、かつ、土地購入者から受領した金銭は、名目のいかんにかかわらず、すべて遅滞なく返還する旨
    表示に係る建物の設計プランについて、次に掲げる事項
(ア)  当該プランは、土地の購入者の設計プランの参考に資するための一例であって、当該プランを採用するか否かは土地購入者の自由な判断に委ねられている旨
(イ)  当該プランに係る建物の建築代金並びにこれ以外に必要となる費用の内容及びその額
(2)    土地取引に係る第8条に規定する必要な表示事項を満たしていること。

監修者のコメント

 建築条件付土地売買については、不当表示防止法第11条第1項に基づき制定されている「不動産の表示に関する公正競争規約」において、単なる表示の規制を超え、独禁法の思想をも取り入れた実体的規制をしている(同規約第6条)。
 それによれば、建築請負契約を締結すべき期限は、「土地購入者が表示された建物の設計プランを採用するか否かを問わず、土地購入者が自己の希望する建物の設計協議をするために必要な相当の期間を経過した日以降に設定される期限」でなければならないとしている。すなわち、従前の「3か月」という制限は改正されている。質問の「3か月」を「2か月」とすることができるかの具体的規範はこれのみであるが、2か月という期間は、よほどの特殊事情がなければ「設計協議をするために必要な相当期間」といえるであろう。しかし、回答にあるとおり、ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ない。

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