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売買事例 1104-B-0133掲載日:2011年4月
業者売主の場合の商人間売買における売主の瑕疵担保責任
売主が宅建業者で買主が一般の会社の場合の取引で、当事者が売主の瑕疵担保責任について何らの取り決めもしなかったときは、民法の規定が適用されるのか、それとも商人間売買ということで商法の規定が適用されるのか。その場合、宅建業法との関係はどうなるのか。
事実関係
当社は不動産の媒介業者であるが、宅建業者が売主で一般の会社が買主になる不動産の売買の媒介をする場合は、宅建業法が適用されると思いつつも、契約の当事者がいずれも商人なので、売買そのものに適用される法律は民法よりも商法が優先適用されると思っている。
そのように考えてくると、業者が売主で一般の会社が買主となる不動産の取引の場合の売主の瑕疵担保責任について、どのような法律をどのように適用したらよいのかがわからなくなってくる。
質問
このような宅建業者が売主になる取引において、売主の瑕疵担保責任について、当事者間で何らの取り決めをしなかったときは、どのような法律がどのように適用されるのか。
回答
1. 結論 | |
商法第526条が適用されるので、買主である会社は、同条第1項に規定されている検査をすみやかに実施し、瑕疵が発見された場合には、直ちにその旨を売主に通知しなければ、売主に対し損害賠償等の請求をすることができず、また隠れた瑕疵についても、6か月以内に瑕疵を発見し、その旨を直ちに売主に通知しなければ、売主に対し損害賠償等の請求をすることができない(同条第2項)。 |
2. 理由 | ||
宅建業者が売主となり宅建業者以外の者が買主となる宅地建物の売買において、売主が負うべき瑕疵担保責任について特約を定めるときは、宅建業法第40条の規定が適用される。すなわち、この宅建業法第40条の規定は、上記当事者間で瑕疵担保責任についての特約を定めるときの制限規定であり、その制限の内容は、売主が負うべき瑕疵担保責任の期間を2年以上とする場合を除き、民法に定めるものより買主に不利となる特約をしてはならず(同条第1項)、してもその特約は無効とするという規定である(同条第2項)。 しかし、本件の【質問】は、上記当事者間で何らの取り決めをしなかったときにはどのような法律が適用されるかということであるから、そのような場合には、宅建業法第40条の規定は適用されず、民法か商法が適用になるわけであるが、本件の場合は、商人間の売買であるから、商法が適用されるということになる。 なお、この場合に適用される商法の規定は第526条の規定である(後記【参照条文】参照)。 |
参照条文
○ 民法第570条(売主の瑕疵担保責任) | ||
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。 | ||
○ 民法第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任) | ||
①② (略) | ||
③ | 第2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。 | |
○ 商法第526条(買主による目的物の検査及び通知) | ||
① | 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければなららない。 | |
② | 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6か月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。 | |
③ | 前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。 | |
○ 宅地建物取引業法第40条(瑕疵担保責任についての特約の制限) | ||
① | 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法(明治29年法律第89号)第570条において準用する同法第566条第3項に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。 | |
② | 前項の規定に反する特約は、無効とする。 |
監修者のコメント
本ケースでは、瑕疵担保責任について何ら特約しなかったというのであるから、商法第526条が優先適用される。
民法、商法、宅建業法の3つの法律の関係を言えば、商法は民法の特別法で、宅建業法は民法及び商法の特別法である。
ところが、宅建業法第40条の規定については、かなり博識の方でも誤解されている向きが多い。業法第40条は、あくまでも瑕疵担保責任に関する「特約の制限」であって、「責任期間について引渡しの日から2年以上とする特約をする場合を除いて、民法の規定より買主に不利となる特約」は無効とするという規定であって、言い換えれば、責任期間を2年未満と特約したときは無効であって、民法の原則(買主が事実を知った時から1年間)に戻ることになるという規定である。何ら特約しなかった場合は宅建業法第40条は、何ら関係しないのであって、特約しなかった場合は民法等の一般法の適用を受けることになる。この点、どのような場合でも、宅建業者が売主で宅建業者でない者が買主となる売買では、引渡しの日から最低2年以上責任を負わなければならないと考えるのは誤りである。業法第40条はあくまでも「特約の制限」であり、特約がない場合は、民法が適用されることになる。しかし、商人間の売買では、商法第526条があり、同条は民法の特則であるから、本ケースでは商法が優先適用されることになる。