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不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2412-R-0283
賃貸借契約における更新料の妥当額

 賃借人に更新料の支払いを依頼したが、更新料は月額賃料の2倍を超えているのは不当であり、消費者契約法上も無効であると支払いを拒否している。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介兼管理業者である。当社が仲介し、管理している期間1年の普通賃貸借契約が満期を迎え、賃借人に対し更新手続きの通知をした。通知は更新合意書への署名捺印及び更新料の賃貸人への支払いの依頼である。賃貸借契約の内容は、2DKの居住用賃貸マンションで、賃借人は個人、契約期間1年、賃料月額6万円、更新料20万円である。通知後、賃借人から当社に、更新料を支払うのはやぶさかでないが、更新料額が月額賃料の3倍以上であるのは、消費者契約法上、消費者の義務を加重する消費者に不利な約定であり、無効であると更新料全額の支払いを拒否すると言ってきた。
 当社は、賃借人に、更新料そのものに違法性はないこと、賃貸契約書で合意の上約定している旨及び賃貸借契約を継続するための対価であること等を説明したが、賃借人の理解を得られなかった。ちなみに、賃借人の想定する妥当な更新料の水準を聞いたところ、賃貸借期間の多くは2年であり、更新料は月額賃料の1か月相当が多いところから、期間1年の契約では月額賃料の0.5か月相当、譲歩しても1か月相当が妥当であるとの返答であった。

質 問

1.  更新料の妥当な水準の考え方があるか。
2.  賃料額に比べて更新料が過大である場合、消費者契約法に抵触するか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 更新料が過大であるかの明確な基準はなく、妥当か否かは諸事情を総合的に勘案して判断する。
 質問2.について ― 更新料額が過大であると判断されれば、消費者契約法に抵触し、妥当な金額を超える金額が無効とされることがある。
2.  理 由
⑵について
 賃貸借契約における更新料の支払約定は、更新料が賃料や更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り認められており、消費者契約法の消費者の利益を一方的に害するものに反するものでないと判示している(【参照判例①】参照)。しかしながら、裁判例は「高額に過ぎるなどの特段の事情」についての基準の金額の明示はしていない。高額過ぎなければ更新料特約は有効であるとし、月額賃料に比する倍率や金額そのものの妥当性についての判断はしていない。
 最高裁の更新料の支払約定の有効判決後、更新料の性格を「賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情、更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量し、具体的事実関係に即して判断されるべきであるが、更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するもの」と最高裁の判旨を踏襲しながらも、賃料の倍率により、有効・無効を判断した裁判例がある。
 「具体的な賃貸借契約における個別具体的な事情にかかわらず高額に過ぎると直ちに断定することができず、特段の事情があるとは認めることができない」とし、1年ごとの更新で更新料が賃料の2.9か月分相当を容認したもの(【参照判例②】参照)、「同じく1年更新で賃料の3.12か月分相当は消費者契約法に違反しない」としたもの(平成24年7月27日大阪高裁)、「1年ごとの更新料の上限は賃料年額の2割が相当(月額賃料の2.4か月分相当)で、超過分は無効」としたもの(京都地裁平成24年2月29日)がある。1年更新の契約で賃料の2か月相当分を超えていても容認しているものがある。
 高額に過ぎるなどの特段の事情の判断根拠については、「賃貸借契約の目的物件の使用収益に対する適正対価の額や、約定賃料の額、更新期間等を含め広範囲の事情を検討する必要があり、その事情は、いずれも事業者と消費者との個別具体的な賃貸借契約における個別具体的な事情であり」とし、「仮に評価の根拠事情のうち一部について一定の前提を採用したとしても(例えば、更新期間及び約定賃料の額並びに更新料の額の比率について、更新期間1年間で、更新料の額が約定賃料月額の2倍以上との前提で検討するとしても)、約定賃料の額が適正な使用収益の対価に比較して廉価に抑えられているなどの事情が認められれば、当該更新料条項に定める更新料の額が高額に過ぎるとの評価に至らない場合もありうる」として、「消費者契約法第10条により無効と認めうるか否かは、専ら個別具体的な事情により決まるものであるといわざるを得ない」と一律に判断されるものでないとしている(【参照判例②】参照)。
 媒介業者は、賃貸借契約契約の際、更新料特約があるときは、賃借人に十分な説明をし、理解を求める必要がある。また、賃貸人に対しては、付近の物件の賃借料や更新料の水準、礼金の有無等を説明の上、妥当と思われる条件設定を助言することが肝要であろう。

参照条文

 民法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
 消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
   消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

参照判例①

 最高裁平成23年7月15日 判タ1461号89頁(要旨)
 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。

参照判例②

 京都地裁平成24年1月17日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 更新料は、期間が満了し、賃貸借契約を更新する際に、賃借人と賃貸人との間で授受される金員である。これがいかなる性質を有するかは、賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情、更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量し、具体的事実関係に即して判断されるべきであるが、更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。(中略)
 更新料条項(契約締結の際に礼金を15万円支払うことに加え、1年ごとの更新の際、賃料〔5万1000円〕の2.941か月分である15万円の更新料を定めるもの)も、具体的な賃貸借契約における個別具体的な事情にかかわらず高額に過ぎると直ちに断定することができず、特段の事情があるとは認めることができないから、消費者契約法第10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないというべきである。(中略)
 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情があるときには、消費者契約法第10条により無効となると解される。
 しかしながら、更新料の額が高額に過ぎるか否かの評価の根拠となる事情としては、主要なものでも、少なくとも賃貸借契約の目的物件の使用収益に対する適正対価の額や、約定賃料の額、さらに更新期間といった事情があり、これらを含め広範囲の事情を検討する必要があると考えられる。そして、これらの事情は、いずれも事業者と消費者との個別具体的な賃貸借契約における個別具体的な事情であり、しかも、仮に評価の根拠事情のうち一部について一定の前提を採用したとしても(例えば、更新期間及び約定賃料の額並びに更新料の額の比率について、更新期間1年間で、更新料の額が約定賃料月額の2倍以上との前提で検討するとしても)、約定賃料の額が適正な使用収益の対価に比較して廉価に抑えられているなどの事情が認められれば、当該更新料条項に定める更新料の額が高額に過ぎるとの評価に至らない場合もありうると考えられる。
 このように、更新料の額が高額に過ぎるなどの特段の事情がありこれが同法第10条により無効と認めうるか否かは、専ら個別具体的な事情により決まるものであるといわざるを得ない。

監修者のコメント

 更新料の支払特約は、必ずしも全国的なものでなく、首都圏、京阪地域で多く行われているものであり、民法や借地借家法などの法律に規定されているものではない。そこで、その有効性について、かねてから裁判で争われ、有効と無効と判断は分かれていた。しかし、平成13年4月1日施行の消費者契約法の制定により、更新料の支払特約は同法の第10条に抵触し、無効であるとの下級審(地裁・高裁)の判決が相次いで出された。そして、そのうちの3件が最高裁で審理され、出された判決が参照判例①のものである。そのうちの1件は、契約期間1年で更新料は月額賃料の約3ヵ月分であったが、最高裁は、高額に過ぎるとは判断しなかった。本相談ケースも【回答】で解説しているとおり、諸事情を総合して判断しなければならないので、【事実関係】に記載の事実だけで結論を出すことは困難であるが、少なくとも賃借人の主張根拠は、説得力を持たないことは明らかである。

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