公益財団法人不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター) > 不動産相談 > 売買 > 地役権の登記がされていない承役地の譲受人の要役地所有者に対する対抗力。

不動産相談

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

== 更に詳しい相談を希望される方は、当センター認定の全国の資格保有者へ ==

不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2206-B-0305
地役権の登記がされていない承役地の譲受人の要役地所有者に対する対抗力。

 宅建業者である当社は建売用地の購入を予定している。土地の一部に公道に面していない土地建物所有者の通路がある。地役権の設定はされているようであるが、その登記がされていないのでその部分も区画の一部として販売を考えている。

事実関係

 当社は、宅建業者である。地主から土地の売却依頼があった。土地は複数区画の建売住宅用地として適しているため、価格が折り合えば、当社が購入したいと考えている。売主は、代々の地主であるが、以前に借地人に底地を売却したり、所有土地の整理を行っており、権利関係が複雑なものがある。当社が購入を検討している土地は、公道に面している下記概略図のB地であり、公道に面していないA地の通路を含んでいる。A地には、築古の建物の所有者が自宅として居住している。通路の現況は、2m幅で砂利を敷いている。登記情報を確認したところ、通路になっている部分に地役権は設定されているが、その登記はされていない。A地所有者は、当該通路以外に公道から自宅への出入りはできない。

概略図

質 問

1.  地役権は登記がないと第三者に対抗できないと思うが、当社がB地を購入した場合、A地通路部分を含めて建売用地にできると考えてよいか。
2.  A地の所有者は、B地を購入する譲受人である当社に対して、A地通路の地役権を主張できるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 地役権が登記されていなくても、要役地所有者は、通路部分である承役地の権利を主張することができる場合があり、B地の新所有者は通路部分を利用することができない可能性が高い。
 質問2.について ― 通路使用者は、新所有者に対して、通行の権利を主張することができ、地役権設定登記を請求することも可能である。
2.  理 由
⑵について
 地役権は、不動産に関する物権の一種であり、物権の得喪及び変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができないとされている(民法第177条)。そして、地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する(同法第280条)ものである。事例のような通行に関する地役権が代表的ものである。この場合の地役権は、公道に面していないA地(要役地)の通行のために、B地(承役地)を通路として利用できる権利である。原則は、A地通路に通行を目的とする地役権が登記されていなければ、購入する第三者である貴社に対して、A地所有者は、承役地である通路の地役権を主張できないと言える。
 しかし、第三者に該当するか否かについて、「譲渡の時に、承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張することの正当な利益を有する第三者に当たらない」という最高裁判例がある(【参照判例①】参照)。貴社は、購入検討に際して、B地に砂利が敷かれ、A地宅の通路として使用されていることを認識しているのであれば、A地通路のA地所有者から地役権を主張されても貴社は拒否できないであろう。
 また、最高裁は、「通行地役権者が譲受人に対し登記なくして通行地役権を対抗できる場合には、通行地役権者は、譲受人に対し、同権利に基づいて地役権設定登記手続を請求することができ、譲受人はこれに応ずる義務を負う」と解している(【参照判例②】参照)。貴社が、当該土地を購入した後に、A地所有者から、地役権設定登記を請求されることも考えられる。
 なお、登記のない通行地役権の承役地が競売された場合でも、「最先順位の抵当権の設定時に、既に設定されている通行地役権の承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが明らかであれば、通行地役権者は、買受人に対し、当該通行地役権を主張することができる」と解している(【参照判例③】参照)。
 宅建業者は、土地の購入や媒介をする場合、登記情報の地役権の確認のみならず、現況がどの様に使用されているかを確認することが重要である。

参照条文

 民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
   不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
 同法第280条(地役権の内容)
   地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第3章第1節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

参照判例①

 最高裁平成10年2月13日 判タ969号122頁(要旨)
 通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である。

参照判例②

 最高裁平成10年12月18日 判タ992号85頁(要旨)
 通行地役権の承役地の譲受人が地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらず、通行地役権者が譲受人に対し登記なくして通行地役権を対抗できる場合には、通行地役権者は、譲受人に対し、同権利に基づいて地役権設定登記手続を請求することができ、譲受人はこれに応ずる義務を負うものと解すべきである。

参照判例③

 最高裁平成25年2月26日 判タ1391号133頁(要旨) 
 通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合において、最先順位の抵当権の設定時に、既に設定されている通行地役権に係る承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、上記抵当権の抵当権者がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、特段の事情がない限り、登記がなくとも、通行地役権は上記の売却によっては消滅せず、通行地役権者は、買受人に対し、当該通行地役権を主張することができると解するのが相当である。

監修者のコメント

 地役権は、登記することにより第三者に対抗できる(民法第177条)。現在、登記されている地役権のほとんどは、電気事業者が有する電線路敷設のための地役権であり、地役権としても最も多いと思われる通行地役権については未登記のものが多い。それは、通行のための正式な契約書を作らなかったり、黙示の意思表示で設定したり、時効で取得したりすることが多いことが、その背景にある。それゆえに通行地役権が裁判になることが最も多いが、内容は、承役地の所有権の譲受人と未登記地役権の対抗関係である。
 不動産の所有権など物権の変動(設定・移転が代表例)は、登記しなければ第三者に対抗できないという原則をうたう民法第177条について、かねてから学説・判例上、種々の議論がなされてきたが、なかでも同条の「第三者」とは、どのような者か大いに議論があった。しかし、現在では学説・判例ともに、正義公平の実質的考慮から、他人の登記がないことを知って、しかもその取引意図が信義則からみて容認できないような「背信的悪意者」には、未登記権利者でも自らの権利を主張できるとか、双方の事情を比較衡量して、他人の未登記を主張させるわけにはいかない者を、他人の「登記の欠缺(けんけつ)を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない」という論理で、同条の「第三者」を制限的に解釈しようとする傾向にある。回答の参照判例に掲げる3つの最高裁判例もその流れに沿うものであり、そのような事情にある場合は、承役地の譲受人が敗けたとしても同人に決して酷ではないとの判断があるからである。
 質問の宅建業者は、そのような観点から慎重に判断する必要がある。

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

更に詳しい相談を希望される方は、
当センター認定の全国の資格保有者へ

不動産のプロフェッショナル

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ページトップへ

single