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2102-R-0228
貸店舗に隣接し、駐車場として賃貸借している土地のみの更新拒絶の可否。

 当社は不動産の媒介業者であるが、賃貸店舗用の土地建物と隣接する店舗利用者用の駐車場土地の売買契約の媒介をした。前賃貸人は、賃借人に対して期間満了日の1年2ヶ月前に更新拒絶を通知した。新賃貸人となった買主は、借地借家法の規定が及ばない駐車場土地のみでも契約を終了させて、ビル建築を始めたいと考えている。

事実関係

 当社は不動産の媒介業者である。半年前に飲食店として第三者に賃貸している建物とその敷地及び来客用駐車場に使用している隣接の土地の売買契約の媒介をした。飲食店を営業している賃借人は、前所有者と4年6ヶ月前に期間5年とする建物及び駐車場土地の賃貸借契約を締結した。その後、前所有者は、当該不動産を売却したいと思い、賃貸借契約のない状態の方が売却のためには顧客層も広がるのではないかと考え、賃借人に対して、期間満了日の1年2ヶ月前に建物及び駐車場土地の賃貸借契約を更新しない旨の通知をした。建物及び駐車場土地を一体とするビル建築を計画していた現賃貸人は、前賃貸人から引渡を受けた後、期間満了日の4ヶ月前に賃借人に対し、期間満了日をもって更新拒絶をする旨の通知を行い、更に期間満了日後に明渡しを要求する旨の通知をした。
 現賃貸人は、賃借人が建物及び駐車場土地の明渡しに応じなければ、借地借家法の及ばない駐車場土地のみでも賃貸借契約を解除し、ビルの一部の建築を進めたいと考えている。

質 問

1.  前賃貸人は、賃借人に対し、建物及び駐車場土地の賃貸借契約を更新しない旨の通知を期間満了1年2ヶ月前に行い、新賃貸人は地位を承継した後の期間満了4ヶ月前に同様の通知をしたが、この更新拒絶は有効か。
2.  賃貸人は、店舗に付帯して使用している隣接の駐車場土地のみを契約解除することができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 賃貸人が賃貸借契約を期間満了により更新拒絶するには、法的要件を満たす必要があり、要件を満たさずに契約期間が満了日を渡過したときは、法定更新となる。
 質問2.について ― 賃借人が、店舗用建物及びこれと一体利用するための土地の双方の賃貸借契約を別々の契約でしている場合でも、賃貸人の賃借人に対する土地のみの契約解除の要求又は更新拒絶は権利の濫用となる場合がある。
2.  理 由
⑵について
 賃貸借契約は契約期間満了により契約が終了するが、当事者の合意により契約の更新をすることができる(民法第604条。ただし、建物賃貸借の契約期間については借地借家法第29条)。建物の賃貸借契約の更新に関しては、当事者が期間の満了の1年前から6ヶ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされ、その期間は、定めがないものとなる(借地借家法第26条)。これが法定更新といわれるものである。相談ケースの前賃貸人からの期間満了1年2ヶ月前の更新拒絶の通知は、前記の法的要件を具備せず、賃借人が継続して使用していれば法定更新となる。また、新賃貸人のした4ヶ月前の更新拒絶通知については、6ヶ月前までの間という時期を徒過した通知であり、これも有効とはならず賃借人は賃貸人の要求に従う義務はない。
 法定更新となった後は賃貸借期間の定めのない契約となり(同法第26条ただし書)、賃貸人が賃貸借に対して解約を求める場合は6ヶ月前に申し入れることにより、賃貸借契約は終了となる(同法第27条)が、更新拒絶も解約の申し入れも、賃貸人から賃借人への立退料等の財産上の給付を考慮した賃貸人の正当事由のあることが認められる必要がある(同法第28条)。
 質問1.の新旧賃貸人の更新拒絶は、建物賃貸借契約については借地借家法上の規定により有効とはならない可能性が高いが、駐車場の土地賃貸借契約については、借地借家法の規定は適用されず、賃貸借期間満了により終了と考えることも可能である。しかしながら、建物賃貸借の使用に伴って賃借した土地は必ずしも契約終了とはならない。裁判例では、終了とならない理由として、「建物及びその敷地のほかに、土地を客用の駐車場として利用することが不可欠な状況」にある場合、「建物及びその敷地について更新拒絶が認められずに法定更新され、賃貸借契約関係が継続しているにもかかわらず、駐車場土地賃貸借契約が契約更新拒絶により終了しているとして、駐車場土地の明渡請求が認められることとなれば、結局、建物及びその敷地の契約の目的は達せられない」、「建物契約が終了していないにもかかわらず、駐車場土地契約について更新拒絶をすることは権利の濫用にあたる」とし、「駐車場土地契約が建物契約とともに存続すべきこと等を考えると、駐車場土地契約は更新されて、期間の定めのない契約」となると解している。ただし、「駐車場の土地のみでの利用価値は低く、建物及びその敷地と一体として利用されることが社会経済上も望ましいし、当事者の合理的意思にも合致する」(参照判例】参照)ことが背景にあることが判断を左右するといえる。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
  ・② (略)
   権利の濫用は、これを許さない。
 同法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
 同法第604条(賃貸借の存続期間)
   賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。
   賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から50年を超えることができない。
 同法第617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
   当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
     土地の賃貸借 1年
     建物の賃貸借 3箇月
     (略)
   (略)
 借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)
   建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
  ・③ (略)
 同法第27条(解約による建物賃貸借の終了)
   建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
   (略)
 同法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
   建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 同法第29条(建物賃貸借の期間)
   期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
   民法第604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。

参照判例

 福岡高裁平成27年8月27日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 本件各不動産の位置関係、利用状況、本件各契約の内容等を総合すれば、本件各契約はカラオケ店営業のために事実上一体として締結されたものであって、本件各不動産でカラオケ店営業をするためには、建物及びその敷地のほかに、土地を客用の駐車場として利用することが不可欠な状況にあることを認めることができる。
 しかるところ、建物及びその敷地について更新拒絶が認められずに法定更新され、その後の解約申入れも正当事由がないとして賃貸借契約関係が継続しているにもかかわらず、駐車場土地契約が契約更新拒絶により終了しているとして、駐車場土地の明渡請求が認められることとなれば、結局、建物及びその敷地の契約の目的は達せられないこととなり、建物契約の更新拒絶あるいは解約申入れについて、賃借人の保護と賃貸人との利益調整の観点から正当事由を要求した借地借家法の趣旨に明らかに反する結果となる。(中略)
 駐車場土地契約について更新拒絶を認めなかったとしても、駐車場の土地のみでの利用価値は低く、建物及びその敷地と一体として利用されることが社会経済上も望ましいし、当事者の合理的意思にも合致する上、その賃料が適正でない場合には賃料増額請求の手続きを行うことも可能であり、賃貸人に特段の不利益はない。
 以上からすれば、本件建物契約が終了していないにもかかわらず、駐車場土地契約について更新拒絶をすることは権利の濫用にあたるというべきであり、賃貸人が行った本件通知はその限度で無効であって、上記のとおり駐車場土地契約が建物契約とともに存続すべきこと等を考えると、駐車場土地契約は更新されて、期間の定めのない契約となったと解するのが相当である。

監修者のコメント

 賃借人としての立場から本相談ケースのような紛争を防止するためには、建物賃貸借契約の付随内容として、駐車場利用権を建物賃貸借契約の内容としてしまうことである。建物と土地は、別個の不動産であるが、そのような内容の契約は有効である。そうすれば、両者は密接不可分のものとして、駐車場としての土地賃貸借契約を独立別個のものとして、更新拒絶や解約申し入れをすることはできない。
 回答に掲げられている参照判例の事案も別々の契約であったため「当事者の合理的意思」とか「権利の濫用」といったやや曖昧な概念を持ち出して賃借人を勝たせたのであって、両者が一つの契約内容となっていれば、そのような不確定な概念を持ち出す必要はなく、シンプルに結論を導くことができると思われる。

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