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1912-B-0268掲載日:2019年12月
農地を農転と開発の許可条件付で宅建業者が取得する場合の宅建業法第36条の適用の有無とその法的根拠
農地を、宅建業者が農地の転用と開発の許可を条件に取得する場合、宅建業法第36条の契約締結等の時期の制限の規定に抵触するか。もし抵触しないとした場合、その法的根拠はどこにあるか。それが業者間取引の場合はどうか。
事実関係
当社は地方都市で営業しているため、農地絡みの取引を行うことが結構ある。しかし、農地の場合は農地の転用という問題がその前提にあるため、農地の所有者が農地を売却するときは、買主との間である程度の造成工事についての協議をし、それを条件に農地転用の許可の申請をするというケースが多いが、最初から宅建業者が買主になるケースの場合には、その買主(宅建業者)から資金提供を受けて、売主(農地の所有者)が単独あるいは共同の名義で開発行為を行うという条件で農地転用の許可の申請をすることがある。
しかしいずれにしても、そのようなケースで宅建業者が買主になる場合に、いかに許可を条件とする売買であるとはいえ、その農地転用の許可すなわち開発行為の許可(両許可は同時になされる。)前に売買契約を締結することは、宅建業法第36条の契約締結等の時期の制限の規定に抵触するのではないかとうことで、取引ができるのかどうか判断に迷ってしまう。なぜならば、その宅建業法第36条の規定を見ると、その条文の中の「当該工事に関し必要とされる(中略)許可等の処分で政令で定めるもの」の中には農地転用の許可も開発行為の許可も含まれているからであり、更に同条が、「宅建業者は(それらの許可等で政令で定めるものがあった後でなければ、)自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、又は売買若しくは交換の媒介をしてはならない。」と定めているからである。
質 問
1. | この宅建業法第36条の規定を見る限り、宅建業者が自ら当事者(買主)となる本件両許可を条件とする農地の売買は、同条に抵触することになると思うが、どうか。 |
2. | もし抵触しないというのであれば、その法的根拠がどこにあるのかを知りたい。 |
3. | このような条件付の農地を、宅建業者が宅建業者に対し売却する場合には、本条の適用はないと考えてよいか。 |
回 答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 本条は、売主が宅建業者である場合の規定であり、抵触することにはならない。 | |
⑵ | 質問2.について ― その法的根拠は、宅建業法第1条(目的)の規定と、そこから導き出される第36条の立法趣旨から、前記⑴の結論が導かれるということである。 | |
⑶ | 質問3.について ― いわゆる業者間取引の場合には、本条(第36条)の規定が適用されるので(宅建業法第78条第2項)、売主(宅建業者)は、買主が宅建業者であっても、両許可を得なければ売買することができない。 | |
2. | 理 由 | |
⑴ | ~⑶についてについて 宅建業法第36条(契約締結等の時期の制限)の規定に関し、その条文上、「当事者」に「買主」も含まれることから、宅建業者が「買主」になる場合にも同条の適用があるのではないかという問い合せが多い。もちろん、宅建業者が買主になる場合でも、いわゆる「業者間取引」の場合には同条の適用があるが(同法第78条第2項)、それはあくまでも売主が宅建業者だからであって、もし売主が宅建業者以外の者であれば、いかに宅建業者が買主になるといっても、同条の適用はない。なぜならば、結論で述べたとおり、そもそもこの宅建業法は、その第1条(法の目的)に規定されているように、「宅建業者が営む事業に対し必要な規制をし、もって購入者等の利益の保護を図る」ことを第一義とする法律であるから、その法の目的に沿って同条(第36条)の規定の趣旨を考えた場合、宅建業者以外の者が売主になっている場合に同条を適用することは、法の目的に反することになるからである。 なお、上記【事実関係】にあるような、農地の売主が開発行為の名義人になる場合で、農地の売主がその付加価値の付いた土地の売買を、宅建業者その他の者(ハウスメーカーなど)との間で反覆して行ったり、それらの業者と共同で、一般の消費者との間で取引を行ったりした場合には、農地の売主の行為は宅建業法第12条の無免許事業に該当すると解され、それに関与したそれらの業者は、その無免許事業を幇助したとみなされる可能性がある。 |
参照条文
○ | 宅地建物取引業法第1条(目的) | |
この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もって購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。 | ||
○ | 同法第12条(無免許事業等の禁止) | |
① | 第3条第1項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない。 | |
② | (略) | |
○ | 同法第36条(契約締結等の時期の制限) | |
宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第29条第1項又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物につき、自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない。 |
監修者のコメント
いわゆる青田売り(未完成物件の売買その他)について、開発許可や建築確認をとる前の広告活動が消費者保護の見地から好ましくないというケースが発生したため、昭和46年の宅建業法改正において「広告の開始時期の制限」(第33条)の規定が設けられた。その際、開発許可等をまだとっていない分譲予定物件の「広告」だけを規制しても、広告なしで「契約」を締結することをも規制しなければ、改正法の目的が達成できないのではないかということから「契約締結時期の制限」に関する第36条の規定も設けられた。したがって、36条の条文の文理上は、ハッキリ書いていないが、売買であれば宅建業者が売主になるケースを当然の前提としている。回答のとおり、本ケースは業法36条との関係は問題とならない。