不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1902-R-0199
使用貸借している土地は、借主の死亡によって使用貸借契約が終了するとされているが、終了しない場合もあるか

 当社は、売買の媒介業者である。土地売却の相談を受けているが、売却予定の土地は、土地所有者の弟に自宅の敷地として無償使用させていた。その弟が死亡したので、建物を相続し、弟と同居していたその息子に退去を申し入れたが、息子は拒否している。

事実関係

 当社は、郊外エリアで営業している不動産売買の媒介業者である。当社の周辺は、住宅地と農地が混在している地域であり、旧家やその親戚関係も多く居住し、土地を賃貸している者もいる。このような旧家である地主から土地売却の相談を受けている。
 地主の父親は、20年前に死亡し、父親が所有していた財産は、当地に多く見られるように、長男である地主が大半を相続し、財産の散逸を免れている。地主は、父親の相続財産の取分が少なかった他の兄弟姉妹に土地を無償又は低い賃料で使用させている。今回売却を予定している土地は、地主の弟が地主から無償で借り、自宅を建て住んでいたが、最近、病気で亡くなった。建物は10年前に建て替えたものであるが、同居していた息子がその建物を相続し、引続き家族とともに住んでいる。地主と使用していた弟との間には、書面による契約書はないが、弟が自宅を建て住むことは了解していた。
 地主は、土地を無償で使用させていたので、使用していた借主である弟が亡くなったので使用貸借は終了するので売却したいといっているが、建物を相続した弟の息子は、亡くなった親を5年前から家族で介護しながら居住しており、土地の使用貸借の権利を引き継いでいるとして退去に応じない。

質 問

 使用貸借契約は、借主の死亡により使用貸借が終了すると法で規定されているが、借主の死亡によっても使用貸借が終了しないことがあるのか。

回 答

1.  結 論
 建物の所有を目的とした土地の使用貸借契約は、借主が死亡したからといって当然に終了するわけではない。特段の事情がない限り、建物所有の用途にしたがってその使用を終えたときに終了するとされている。
2.  理 由
 使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる契約である(民法第593条)が、借主の死亡によって使用貸借契約は終了すると規定されている(民法第599条)。借主の死亡に伴って、使用貸借の権利である使用借権が借主の相続人に相続されることはない。
 借主の死亡以外にも、次の事実によって使用貸借は終了し、借主の借用物は、貸主に返還される。①返還を約定した期限②返還時期を定めない場合の目的に従い使用及び収益が終わったとき③使用及び収益が終わる前でも、使用及び収益をするのに足りる期間の経過後④返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときの貸主の返還申入れ(同法597条)。
 土地の使用貸借の場合も、前記と同様であるが、使用貸借は、貸主と借主の信頼関係や特別な関係を基礎として成り立っているとされ、建物所有目的の使用貸借の場合、借主の死亡で使用貸借契約が終了しないという例外が認められる場合がある。
 借主が死亡しても、相続人に使用貸借土地での使用収益の必要性があれば、継続して使用が認められる。当事者の合意が前提であるが、使用貸借の存続について暗黙の合意でも成立する。相談のように、地主の弟が地主から使用貸借した経緯、建物の築年数、同居家族が親を介護していたこと、建物は同居していた息子が相続したこと等は、地主である貸主も了解していたと思われ、地主の弟の息子について、今後も当該土地を使用する必要性があると判断される可能性が高い。
 「土地に関する使用貸借契約がその敷地上の建物を所有することを目的としている場合には、当事者間の個人的要素以上に敷地上の建物所有の目的が重視される」とし、借主が死亡したとしても、「土地に関する使用貸借契約が当然に終了するということにはならない」と使用貸借の継続を認めている裁判例がある(【参照判例】参照)。
 使用貸借している土地の返還の時期については、「特段の事情がない限り、建物所有の用途にしたがってその使用を終えたときに、その返還の時期が到来するものと解するのが相当である」としており、具体的には、息子家族の住居移転や建物の老朽化等が判断基準となるであろう。しかし、土地の返還を求めている貸主と使用を継続したい借主の争いとなれば、裁判所は双方の背景や事情を斟酌して相当の期間を判断することになる。

参照条文

 民法第593条(使用貸借)
 使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
 同法第597条(借用物の返還の時期)
   借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
   当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
   当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。
 同法第599条(借主の死亡による使用貸借の終了)
 使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。

参照判例

 東京地裁平成5年9月14日 判タ870号208頁(要旨)
 土地に関する使用貸借契約がその敷地上の建物を所有することを目的としている場合には、当事者間の個人的要素以上に敷地上の建物所有の目的が重視されるべきであって、特段の事情がない限り、建物所有の用途にしたがってその使用を終えたときに、その返還の時期が到来するものと解するのが相当であるから、借主が死亡したとしても、土地に関する使用貸借契約が当然に終了するということにはならないというべきである。そして、前認定のとおり、本件使用貸借契約は、敷地上に建物を所有する目的、あるいは第三者に建物を所有させて利用させるために成立したものであり、現在も土地上に建物が存続し、あるいは第三者が建物を所有して土地を利用しているのであるから、建物使用が終了し、あるいは、第三者の建物所有の用途が終了したものとは認められない。

監修者のコメント

 使用貸借は、賃貸借と異なり無償の貸借であるから、借主の死亡によって終了するものと定められている(民法第599条)。これはタダで貸すということは当事者間の関係が極めて濃く、「その人だから貸す」ということであって、借りる人が死亡したら、その相続人にまでタダで貸すという意思ではないのが常識的だからである。
 しかし、たとえ法文はそうなっていても、裁判実務においては、いろいろな論理を駆使して、できるだけ常識に合致するような結論を導いている。

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