不動産相談

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1902-R-0198
賃貸ビルの設備工事で、店舗として賃借している物件を使用できない期間の、賃借人による賃料減額及び休業補償金の請求の是非について

 賃貸ビルで必要設備を交換・設置する期間中は、賃借人は賃借している店舗を使用できないが、その場合、貸主に対し賃料減額請求や、営業補償金の要求はできるか。
 一方、契約時に、設備工事期間中は賃借部分が使用できないことを説明しなかった媒介業者に、責任はあるのか。

事実関係

 当社は賃貸媒介兼管理を行う宅建業者であるが、管理しているテナントビルの貸主から、ビル内に設置しているキュービクル(高圧受電設備)の交換をするので、賃借人に通知してほしいと依頼された。設備を交換することになったのは、3か月前の定期点検で交換時期が到来していると指摘されたことによる。当該物件は築28年の古いビルで、設備は地下に設置してあり、取り替え工事には平日の3日間がかかる。その間ビル内は停電になるため、テナントの通常業務はできなくなる。設備交換工事について各賃借人に通知したところ、半年前から小売店舗として入居している賃借人(法人1社)から、賃貸契約の際に媒介業者である当社からも貸主からも工事について説明されておらず、休業すると業務にも当然支障があると、否定的な反応が返ってきた。工事の必要性については理解を示しているものの、どうしても工事をしなければいけないのなら、停電等で店舗を使用できないわけだから、営業ができない3日分の賃料減額と、営業補償金の支払いをしてほしいと要求されている。

質 問

1.  事務所が使用できない間、賃借人の賃料を減額する必要はあるか。
2.  貸主は賃借人に対し営業補償金を払わなくてはならないか。
3.  賃借人に、賃貸契約をした事務所を使用できない日があることを、契約時に説明しなかったことによる責任は、貸主及び媒介業者である当社にあるか。

回 答

 質問1.について ― 貸主が賃貸物を使用・収益させることができないという理由により、貸主は、賃借人の賃料減額請求に応じなければならないと考える。賃貸借における、賃料を増減額できる要件は、土地・建物等租税の増減、土地・建物価格の上昇・低下、経済事情の変化、近傍同種の建物の賃料に比較して不相応になった場合に限っている(借地借家法第32条)。しかし、貸主は、賃借人に使用及び収益をさせる義務を負っており、賃借人はその対価として賃料を支払う(民法第601条)のであるから、賃借人が使用・収益できない期間においても、通常の賃料を請求できるというのは、不相当である。また、賃借物の一部滅失による賃料の減額請求権(同法第611条)を類推解釈しても、賃借物を使用できない期間については、減額請求をできると解される。
 質問2.について ― 賃借人は、貸主に、賃借物の使用不能期間の営業補償金を当然には請求できないと考える。相手方の不法行為又は債務不履行により、損害を被った当事者は、損害賠償ができる(同法第415条、第416条)が、貸主には賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務があり、貸主が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない(同法第606条)。これは民法で認められた貸主の義務であり、賃借人には受忍する義務があると言える。よって、貸主に営業補償金の支払い義務は、ないと解される。
 質問3.について ― 契約時点では設備交換の予定はなく、賃貸借契約後の定期点検で指摘されたため、貸主には、賃借人に説明しなかった責任はないと考える。また、媒介業者も、貸主からの情報提供がない以上、工事の必要性を知り得ず、賃借人への説明義務はないものと解される。
 ただし、契約時に、設備交換の工事日程や内容が確定されているのであれば、貸主は賃借人にその旨を説明しなければいけない。宅建業者が知り得たのであれば、貸主同様に説明しなければいけない。
 なお、工事は確定していないが、予定されている、工事する可能性があるのであれば、説明しておいたほうがいいであろう。いずれにしても賃借人の理解、協力が必要である。

参照条文

 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 同法第416条(損害賠償の範囲)
   債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
   特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
 同法第601条(賃貸借)
 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
 同法第606条(賃貸物の修繕等)
   賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
   賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
 同法第611条(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
   賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
   前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
 借地借家法第32条(借賃増減請求権)
   建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
  〜③ (略)

監修者のコメント

 賃借人の責めに帰すべき事由によらず、賃借物の使用が妨げられた場合については、民法に明文の規定はない。しかし、賃料の支払義務は賃借物の使用収益の対価であるので、使用収益の不完全な割合に応じて賃料減額請求をすることができるというのが多数説・判例である。もっとも、その理論構成は区々であるが、結論としては回答のとおりである。
 なお、媒介業者の責任は、契約締結時にその工事を予測し得たか否かで決まる。

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