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1710-R-0179掲載日:2017年10月
残置エアコンの修理義務に関するトラブルとその未然防止策
当社は賃貸借の媒介業者兼管理業者であるが、当社が1年半前に媒介した借主から、エアコン(12年程度使用)が故障したので、修理をして欲しいという連絡を受けた。ところが、貸主はそのエアコンは従前の借主が残置したもので、自分(貸主)のものではないので、修理はできないと言ってきた。このような場合の修理費用は誰が負担するのか。今後このようなトラブルを防止するためには、どのような措置をとったらよいか。
事実関係
当社は、賃貸借の媒介業者兼管理業者であるが、当社が管理をしている賃貸マンションに備え付けられたエアコン(12年程度使用)が故障した。そのため、借主からエアコンの修理の申し出がなされたが、貸主がこれを拒否した。その理由は、そのエアコンが従前の入居者の「残置物」だったからである。
なお、この借主は約1年半前に当社の媒介で入居したが、当社は、その借主に対する重要事項説明や賃貸借契約の締結に際し、そのエアコンが「残置物」だという説明をしていないし、貸主からも従前の管理業者からもその旨の説明がなかったので、単に「付帯設備」として、「エアコン有り」としか説明していない。
質 問
1. | このような場合、エアコンの修理費用は誰が負担すべきか。 なお、貸主は「自分のものではないので、自分には修理義務はない」と言っており、本件の賃貸借契約書には「残置エアコン」であることによる修理費用の分担に関する特約はもとより、「付帯設備」全般に関する修理費用の分担についての特約も一切定めていない。 |
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2. | 当社が、今後このような設備の修理に関するトラブルを防止するためには、どのような措置をとったらよいか。 |
回 答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 貸主が負担すべきである。 | |
⑵ | 質問2.について ― たとえば、入居時の「物件状況確認リスト」の中に別欄を設け、付帯設備ごとの修理分担区分を記載するなり、取り付け時からの経過年数や修繕履歴などを記載するなりして、それを管理台帳兼用で、重要事項説明書にその写しを添付したり、入退居時や更新時ごとにチェックをしていくという方法が考えられる。したがって本件のような「残置エアコン」についても、あらかじめ「物件状況確認リスト」の中に「残置物」の欄を設け、残置物がある場合にはそのリストによって修理分担等の管理をしていくということである。 | |
2. | 理 由 | |
⑴ | について 本件の「残置エアコン」の所有権は、従前の入居者が放棄したものと考えることができる。したがって、それをいかに貸主が「自分のものではないから」と言っても、それが「付帯設備」として建物と一緒に賃貸されている以上、賃貸借の目的物の一部を構成するものとして、当事者間に特約でもない限り、貸主が修繕義務を負担するというのが民法の規定の趣旨であると解されるからである(民法第606条、第559条、第560条)。 |
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⑵ | について (略) |
参照条文
○ | 民法第606条(賃貸物の修繕等) | ||
① | 賃貸人は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負う。 | ||
② | (略) | ||
○ | 民法第559条(有償契約への準用) | ||
この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。 | |||
○ | 民法第560条(他人の権利の売買における売主の義務) | ||
他人の権利を売買の目的にしたときは、売主は、その権利を取得し買主に移転する義務を負う。 |
監修者のコメント
本件のエアコンは、前の借主の残置物だとしても、前の借主が持っていくつもりの物でなく、意識して残していった物である限り、建物と一体となった造作設備であり、賃貸建物の対象を構成するので、貸主の主張は正しくない。貸主がそう主張できるのは、賃貸に当たり「このエアコンは、前の借主が置いていった物で、今後はあなたの所有物です。」と告げ、その借主がそれを了承した場合だけである。