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賃貸事例 1004-R-0076
借主からの中途解約を防止するための約定と重要事項説明の内容

 業務用物件の賃貸借の媒介において、借主からの中途解約を防止するための約定方法として、(1)中途解約を認めない方法、(2)解約申入れ期間を定めない方法、(3)中途解約は認めるが、ペナルティをとる方法の3通りが考えられるが、どの方法が適当か。

事実関係
   当社は賃貸の媒介業者であるが、業務用の倉庫や店舗などの賃貸の媒介を受けるときに、貸主から、借主からの中途解約がなされないように、強く要望されることがある。
 
質問
1.  貸主からの要望に応えるためには、賃貸借契約書に、(1)契約期間内は中途解約ができない旨を定めるか、(2)解約申入れ期間の定めをしない(つまり、解約権の留保条項を定めない)などの方法が考えられるが、これらの方法を用いても問題ないか。
2.  もう1つの方法としては、中途解約を認める代わりにペナルティをとるという方法が考えられるが、この方法はどうか。
 
回答
  1.結 論
 質問1.2.のいずれの方法も、業務用の賃貸物件である限り、法的には原則として問題ないが、いずれも相手(借主)があることなので、借主を門前払いしたり、後に問題を残すような質問1.の方法より、質問2.の方法の方が適当であると考えられる。
  2. 理由
 質問1.−(1)の方法を用いた場合は、借主が契約をしないということが考えられる。したがって、その例外を認めるケースとして質問1.−(2)の方法を用いた場合、たとえば重要事項説明書に、「この賃貸借契約においては、解約の申入れについての定めがありませんので、借主が契約期間の途中で解約するには貸主の承諾が必要になります。その場合、借主には違約金の支払いが発生する場合があります。」と記載するなどして、事前に借主に説明し納得を得る必要があるからである(後記【参照条文】参照)。つまり借主は、事前の申し出さえすれば中途解約ができると誤解している人が多いだけに、もし媒介業者がそのような説明をしないで契約を締結した場合には、必ずと言ってよいほどトラブルになる可能性があるからである。
 それに引き換え、質問2.の方法を用いた場合には、ペナルティのことが事前に明示されるため、そのペナルティの額が妥当である限り、法的にも問題になることはないからである。しかし、その場合においても、ペナルティの額や計算方法について、あらかじめどの時点での解約の場合はいくらで、どの時点ではいくらというように具体的に明示しておかないと、後日トラブルに発展する可能性がないとはいえないので、注意が必要である。
 
参照条文
 
宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
(1)
宅地建物取引業者は、(中略)、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、取引主任者をして、少なくとも次に掲げる事項について、(中略)説明をさせなければならない。
一 〜 七 (略)
八 契約の解除に関する事項
九 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
十 〜 十四 (略)
(2)〜 (5)(略)
 

同法第37条(書面の交付)
(1)宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、(中略)契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 〜 六 (略)
(注)契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
(注)損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
(2)宅地建物取引業者は、宅地又は建物の貸借(注)に関し、(中略)契約が成立したときは当該契約の各当事者に、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 前項第1号、第2、第4号、第7号(注)、第8号(注)及び第10号に掲げる事項
二 〜 三 (略)
(3)(略)
(注)上記のとおり、「契約の解除(解約)」や「違約金」に関する事項についての「貸借」の場合の書面に記載すべき事項は、「売買・交換」の場合の第7号・第8号の規定を準用することになっているため、いずれも「定めがあるとき」にその内容を記載することになっている。したがって、本件の場合の質問1.−(1)のケースにおいては、「契約解除(解約)」に関する事項としては「中途解約ができない」ことを契約書に定める必要があるが、質問1.−(2)のケースでは契約書には何も定めないということになるであろうから、「違約金」についての定めもないのが普通であろう。そうなると、貸主が借主からの申し出によって中途解約を認める場合の「違約金」については、【回答】の「理由」において述べたとおり、中途解約の場合には、少なくとも「違約金」を請求される可能性があることを重要事項として説明しておかないと、トラブルになる可能性があることに注意が必要である。
 
監修者のコメント
 
契約期間の定めをした場合には、定期借家契約の一定の場合(借地借家法38条5項)を除いて、特約のない限り、借家人からも中途解約はできない。この点、案外誤解されている。世上、借家人からの中途解約が認められているのは、中途解約ができる旨の契約条項(特約)があるか、そのような特約がなくても、事実上貸主が借主の中途解約の申入れを認めることが多いからである。2年なら2年という契約期間を定めた以上、借主は借りる権利をもつと同時にその2年間借りる義務をも負ったことになる。
 したがって、契約期間を定めた以上、解約のことについて何も取り決めなければ、借主は中途解約はできないことになる。しかし、ただ何も決めない限りはそうなると言っても、多くの借主は誤解していることが多いので、回答のとおり、明確な取り決めをしておくことが適切である。

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