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賃貸事例 0906-R-0065
賃貸マンションからの立退きのための定期借家制度の活用

 
古いマンションの建て替えのため、入居者に円滑に立退いてもらう方法として定期借家への切り替えを考えているが、普通借家からの切り替えは「当分の間できない」のではないか。

事実関係
 
当社は賃貸の媒介兼管理業者であるが、すでに全戸入居している賃貸マンションについて、そのオーナーから、「このマンションは古いので、入居者に次の更新時から1年を目処に立ち退いてもらい、建て替えを考えたい。立退きをスムーズに進めていくためのアイデアはないか」と言われた。
なお、入居者の入居時期については、そのすべてが10年以内の入居である。
 
質問
1. 当社は、オーナーに対し、更新時に従来の賃貸借を期間1年の定期建物賃貸借に切り替えることを提案したいが、この定期建物賃貸借への切り替えは「当分の間できない」と聞いているが、本当か。
2. 定期建物賃貸借への切り替えができるとしても、同じ条件では切り替えはできないと思うが、どうか。どのような考え方で提案をまとめたらよいか。
 
回答
1.結論
  (1) 質問1.について — 本当ではない。
  (2) 質問2.について — 同じ条件での切り替えができないのはそのとおりであり、何がしかの条件変更が必要であろう。
なお、立退きについて交渉がまとまった人との合意内容については、弁護士に依頼し、即決和解の申立てをし、その結果を和解調書にしておくことが有効であろう(後記【参照条文】参照)。
   
2. 理由
(1)について
 普通借家から定期借家への切り替えが「当分の間できない」とされているのは、平成11年の借地借家法の改正(良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法による定期建物賃貸借制度の導入)法の施行日(平成12年3月1日)前からの居住用の建物賃貸借(ただし、旧法第38条第1項の規定による賃貸借(賃貸人の不在期間の建物賃貸借)を除く。)であって、施行日以降に締結された居住用の建物賃貸借については、その適用はないからである(定期建物賃貸借契約制度創設に伴う良質な賃貸借住宅等の供給の促進に関する特別措置法附則第3条:後記【参照条文】参照)。
(2)について
 普通借家、すなわち更新のある建物賃貸借は、それ自体が借主にとっては権利であるから、その権利を一定期間内に消滅させる契約(定期建物賃貸借)に切り替えるには、当然それなりの条件が必要となると考えるべきで、そのためには、その条件について全体説明会を開くなど、公平・誠実に交渉を進めていくことが必要であろう。
 なお、このような業務について、管理業者が報酬を得て行うことは、弁護士法第72条の規定(非弁護士の法律事務の取扱等の禁止規定)に抵触するおそれがあるので、事前に弁護士に相談するなどの慎重な対応が必要である。
 
参照条文
 
良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法附則第3条
第5条の規定(定期建物賃貸借契約制度の創設の規定)の施行前にされた居住の用に供する建物の賃貸借(旧法第38条第1項の規定による賃貸借を除く。)の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、第5条の規定による改正後の借地借家法第38条の規定(定期建物賃貸借契約の規定)は、適用しない。

民事訴訟法第275条(訴え提起前の和解)
(1) 民事上の争いについては、当事者は、請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。
(2)〜(4) (略)
 

同法第267条(和解調書等の効力)
和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は確定判決と同一の効力を有する。
 
 
監修者のコメント
 
「建て替えのため」というのが真実である場合、回答にある、切り替えができない旨の条文が、そのまま適用されるかは議論の余地はあるが、どちらにせよ、賃借人との合意がなければできないことである。
 そして、その合意が成立したということは、実質的には期限付きの建物明渡し合意であるから、そのことを念頭において、ただ「定期借家に切り替えれば簡単に立退かせることができる」などと賃貸人が考えている場合は、法的な教示、説明も必要であろう。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「定期建物賃貸借(定期借家)」

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