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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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賃貸事例 0902-R-0057
民事再生会社の物件の賃貸・分譲等の代理・媒介

 近時の景気の悪化で、民事再生の手続に入る会社が増加している。
 ついては、このような会社の物件を賃貸したり、販売したりすることは、法的に可能なのか。また、現在分譲・賃貸中の物件についての継続対応も可能なのか。

事実関係
 最近の景気の悪化で、民事再生の手続に入る企業が多くなってきているが、当社も不況の影響を受けている不動産業者なので、取引先の中にそのような企業が含まれるのを避けては通れなくなってきている。
 ついては、次の点について知っておきたい。
 
質問
 民事再生の手続の開始決定があった会社または再生計画が遂行されている会社(以下「再生会社」という。)が所有しているビルの賃貸の媒介や、再生会社が分譲している物件の代理・媒介を行うことは、法的に可能か。また、再生会社がすでに分譲を開始し、買主から手付金を受領しているものや、賃貸中の物件についても業務の継続実施が可能か。
 
回答
1.結論
   いずれも、その実施・継続は可能である。ただし、当該物件に抵当権等の担保権(別除権=民事再生法第53条)を有している者(以下「別除権者」という。)が、その担保権を実行するおそれがないかどうか等について、弁護士等の専門家の意見を聞いたうえで(あるいは、再生会社の監督委員の(注)同意を得たうえで)、行うことが前提である。
(注)監督委員は、通常、再生手続の開始決定の際に裁判所によって選任され、再生会社の登記事項証明書の役員欄に、その「監督委員の同意を得べき事項」とともに記録されるので、誰でも確認することができる(後記【参考資料】参照)。
 
2.理由
(1)  民事再生法は、基本的には再建型の手続であるため、再生会社の財産(固定資産のほか、棚卸資産も含む。)については、その管理処分権を再生会社が維持し続けるのが原則である(民事再生法第1条、第49条第1項・第2項)。
 したがって、当該物件の賃貸や分譲が、再生会社の再生計画に組み込まれ、その計画が認可(同法第174条)されれば、その再生計画は、再生債権者や再生債務者(再生会社)を拘束し、その結果として、貴社の代理・媒介行為が可能となる(同法第177条第1項)。

 しかし、再生計画は、「別除権者」には影響を与えないため(同法第177条第2項)、その別除権の行使を未然に防止するための手続として、事前に、申立人(再生会社)等の利害関係人から、当該担保権の実行(競売)手続の中止命令の申立てがなされているかどうかを確認しておくことが必要である。

 なお、この競売手続の中止命令は、再生手続の開始決定前の保全手続とは異なり、申立時期の制限はなく、再生手続の開始決定後においても裁判所は発令できるので(同法第31条第1項)、他の物件についても、中止命令が発令されれば、適宜その代理・媒介をすることが可能となる。
(2)  次に、継続業務の問題点として、再生会社が賃貸中の物件について、貸主(再生会社)が、再生手続に入ったことを理由に、賃貸借契約を解除するのではないかという心配があるが、この点については、民事再生法は、破産法の規定を準用し、賃借人が登記その他の第三者対抗要件を備えている場合には、民事再生法第49条の規定(再生債務者(再生会社)が双務契約についての解除等ができる旨の規定)は適用されず、賃貸人(再生会社)は、賃貸借契約を解除することはできないとしている(民事再生法第51条、破産法第56条第1項)。したがって、現在賃貸中のものに限らず、新たに賃貸する物件についても、貸主(再生会社)からの契約解除の心配は、原則としてないということがいえる。
   
参考資料
  ○ 監督委員の同意事項が登記されている会社登記簿(抜粋)
監督委員の同意事項が登記されている会社登記簿(抜粋)
(注)(1)については、「(常務に属する取引に関する場合を除く。)」という登記がされることもある。この場合には、「常務に属する取引」については、監督委員の同意を要しない。
 
参照条文
  ○ 民事再生法第1条(目的)
 この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。
 
○ 同法第49条(双務契約)
(1)  双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、再生債務者等は、契約の解除をし、又は再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
(2)  前項の場合には、相手方は、再生債務者等に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、再生債務者等がその期間内に確答をしないときは、同項の規定による解除権を放棄したものとみなす。
(3)〜(5)(略)
 
○ 同法第53条(別除権)
(1)  再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権をいう。第3項において同じ。)を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。
(2)  別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。
(3) (略)
 
○ 同法第174条(再生計画の認可又は不認可の決定)
(1)再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
(2)〜(5)(略)
 
○ 同法第177条(再生計画の効力範囲)
(1)  再生計画は、再生債務者、すべての再生債権者及び再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する。
(2)  再生計画は、別除権者が有する第53条第1項に規定する担保権、(中略)及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。
 
○ 同法第31条(担保権の実行手続の中止命令)
(1)  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、(中略)、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、第53条第1項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行手続の中止を命ずることができる。(以下(略))
(2)  裁判所は、前項の規定による中止の命令を発する場合には、競売申立人の意見を聴かなければならない。
(3)〜(6)(略)
 
○ 同法第51条(双務契約についての破産法の準用)
 破産法第56条、(中略)の規定は、再生手続が開始された場合について準用する。(以下(略))
 
○ 破産法第56条(賃貸借契約等)
(1)  第53条第1項及び第2項の規定(破産管財人が双務契約についての解除等ができる旨の規定)は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する契約について破産者の相手方が当該権利につき登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えている場合には、適用しない。
(2)(略)
 
監修者のコメント
 回答に付け加えるべきことはないが、民事再生は破産と異なり、再建型の手続であって、通常のケースと同じとはいえ、分譲を受け、又は賃借をする者にとって、取引の相手方が再生会社であることはやはり重要な事実と思われる。したがって、媒介業者はその旨すなわち再生手続の開始決定がなされた会社あるいは再生計画遂行中の会社であることについて告知義務があると考えて媒介を進めるべきである。

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