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賃貸事例 0810-R-0049
店舗の経営委託と無断転貸

 店舗の借主が、貸主に無断で経営者を変えて営業する行為は、無断転貸になるか。無断転貸になるとした場合、貸主は、転借人に対しどのような請求ができるか。

事実関係
 当社が媒介した店舗の借主が、貸主に無断で経営者を変えて営業を行っている。そこで、その事情を借主に聞いたところ、「自分は、経営を委託しているだけであって、店舗の看板(屋号)も変えていないし、経営の主体は自分であるので、転貸ではない」と言っている。
当社は、この物件の管理もしているので、どのように対応したらよいのか迷っている。
 
質問
(1)  このような経営方式は、転貸にならないのか。
(2)  そもそも、無断転貸の場合の転貸借契約というのは有効なのか。無断転貸の場合、賃貸人は転借人に対し、どのような請求ができるのか。
 
回答
(1)  質問1.について — 借主が言っているように、経営の主体が委託者(借主)に残っている(つまり、委託者(借主)の計算のもとで経営をしている)のであれば、転貸にはならないが、営業の利益も損失も受託者に帰属する(つまり、委託者(借主)は一定の報酬だけを受託者から受領している)というのであれば、実質的な転貸である可能性もある。したがって、借主、経営者双方からその点の事実確認をしたうえで、借主の経営方法について貸主にも説明し、貸主の理解を得るように対応する必要もあろう。
  なお、本件のような経営形態を、一般に、前者の場合を「経営管理」、後者の場合を「狭義の経営委任」といっているが、いずれも経営主体としての実質が変更していない限り、転貸には該当しないとされている。
(2)  質問2.について — 判例は、無断転貸であっても、転貸借そのものは無効ではなく、単に転借人がその賃借権(転借権)を賃貸人に対抗できないだけであるとしている。したがって、その結果、賃貸借の目的物を転貸した賃借人は、賃貸人にその承諾を求める義務を負担することになり(大判明治43年12月9日民録16輯918頁)、それと同時に、転借人に対する転貸料を請求する権利を有することになる(大判明治40年5月27日民録13輯588頁)。
一方、賃貸人は、無断転貸が行われたこととは関係なく、賃借人に対し賃料を請求することができる(大判明治37年9月29日民録10輯1196頁)し、転借人に対し、賃借人との契約を解除することなしに目的物の明渡しを請求することもでき(大判昭和15年2月23日民集19巻433頁、最判昭和26年5月31日民集5巻359頁)、また、賃料相当の損害賠償を請求することもできる(最判昭和41年10月21日民集20巻1640頁)。しかし、賃貸人が賃借人の無断転貸を理由に賃借人との間の契約を解除することができるかどうかについては、判例は、単に無断転貸があったという事実だけでは直ちに解除ができるとはしないで、その事実が賃貸人に対する「背信的行為」と認めるに足りない特段の事情があるときは、解除できないとする理論を採っているのに注意が必要である(最判昭和28年9月25日民集7巻979頁)。
 
参照条文
  ○ 民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
(1)  賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
(2)  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物を使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
 
監修者のコメント
 「経営委託」という形態は、その多くが無断転貸を隠ぺいするために考えられたものであることは、現実の実態からみて否定できない事実である。
 具体的なケースにおいて、外形的な事象は無視して、その実質的な内容はどうかという観点で判断しなければならない。
 各種の要素を検討しながら判断しなければならないが、結局は「実質的な経営主体」は誰かを判断・確定することによって結論が導かれる。少なくとも、営業名義とか、屋号、営業店舗の変更の有無とか、賃料の支払い名義が誰になったのか、などという点のみで判断できるものではない。

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