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賃貸事例 0807-R-0038掲載日:2008年7月
期間満了2日前の解約申入れの効力
借主が、期間満了日の2日前に解約の申入れをしてきた。約定では、借主からの解約の申入れは2か月前までにしなければならないことになっている。
この場合、契約は2か月後に終了するのか、それとも更新されるのか。更新料の支払はどうなるのか。
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当社は、賃貸物件の媒介と管理を行っている業者であるが、このたび、当社が以前に媒介した店舗の借主から、契約期間満了日の2日前に解約の申入れを受けた。しかし、約定では、「借主からの解約の申入れは2か月前までに行う。」ということになっている。
なお、契約書には、「期間満了までに、貸主または借主から何らの申し出がないときは、本契約は、更に○年間同一条件をもって更新されるものとする。」という約定もある。 |
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このような契約条件の場合、借主からの期間満了2日前の解約の申入れは有効なのか。契約は解約の申入れから2か月後には終了するのか、それとも更新されるのか。その場合、更新料の支払はどうなるのか。
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1.結論 |
本問は、当事者の意思ないし契約の解釈の問題であり、ここでは最終的な結論は出せない。
しかし、この場合の考え方として、契約は一旦「法定更新」されるが、そのうえで借主があらためて解約の申入れをすることによって、その時点から2か月後に契約を終了させることができるので、更新料の支払についても、その期間に対応した月割り計算で行う、あるいは約定どおり全額を支払い円満終了を図るという方法が考えられる。 |
2.理由 |
(1) |
「解約の申入れ」は、契約期間を将来に向って終了させる契約当事者の一方の意思表示であって、その効力が生じるために、相手方の承諾を要するものではない、と解されている(後記【参照判例】参照)。したがって、借主が約定に基づいて2か月前までに貸主に解約する旨の通知をしておけば、その時から2か月後には賃貸借契約を終了させることができたのであるが、本件の場合は、たったの2日前ということであるから、それでは、貸主にとっては、借主に解約権を留保させた意味がない(次の借主を探すことができない)ということになる。しかも、その解約権を借主に留保したのは、あくまでも契約期間内における解約を認めるということであって、期間を跨いでの(あるいは更新後の)解約までも認める趣旨であったかどうかという点については、少なくとも約定のうえでは明確になっていないので、あとは、当時の当事者の意思をどう解釈するかという問題になってくる。 |
(2) |
また、この契約では、自動更新のための約定として、「期間満了までに、貸主または借主から何らの申し出がないときは、本契約は、更に○年間同一条件をもって更新されるものとする。」という条項が定められている。したがって、本件においては、借主が期間満了の「2日前」に「解約する」という意思表示をしているのであるから、契約は自動更新(合意更新)されずに、「法定更新」されるということになるし、また、仮に、今回の期間満了「2日前」の解約申入れが、約定違反による無効なものであったとしても、貸主・借主ともに、その相手方に対し更新拒絶の通知を期間満了の1年前から6か月前までの間にしていないことは明らかであるから、本件の契約は、従前の契約と同一条件をもって更新(法定更新)したものとみなされるということになる(借地借家法第26条第1項)。 |
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参照条文 |
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○ 借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等) |
(1)建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。 (2)(3) (略) |
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参照判例 |
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○最判昭和25年2月14日民集4巻2号24頁(要旨) |
「解約の申入れは、当初から6か月の猶予期間を付さなくても、解約申入れの後6か月を経過すれば解約の効力が生じる。」 |
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本ケースは、当事者の意思解釈をめぐって裁判で争われてもよい難しい問題であり、【回答】の解釈とは別に法定更新されるので、更新料支払い義務が生ずる、しかし、その後も2か月前の解約申入れにより、契約を終了させることができると解することも可能である。
なお、合意更新でなく、法定更新の場合も更新料支払特約が有効と認められるかについては裁判例が分かれているという別の問題もある。 |