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賃貸事例 1512-R-0154掲載日:2015年12月
借地契約における私設下水管の破損費用の負担者いかん
30年前から続いている借地契約において、地主所有の私道内私設管が破損した。このような場合、その修理費用は誰が負担するのか。その件に関し、地主と借地人との間には何らの取り決めもないが、今後の対応としては、どのようにしたらよいか。なお、市は当分の間、その私道や配管を引き取る予定はないと回答している。
事実関係
当社は、ある都市部の郊外で営業をしている宅建業者であるが、このたび地元の地主から、「貸している土地の前面道路の下水管が破損した。誰が修理をするのか」という相談があった。
なお、この前面道路は、同じ地主が所有する位置指定道路で、その下水管も、先代の地主が土地を貸す際に水道管やガス管と一緒に配管したもので、いわゆる「私設管」である。そのため、すでに土地を貸してから30年が経過しているが(10年前に契約を1回更新している)、その間に修理が1回も発生しなかったことから、借地人との間では道路や配管の修理に関する取り決めは何らなされていない。
質 問
1. | このような場合の下水管の修理は、誰が行わなければならないか。 | |
2. | 市は当分の間、この私道や配管を引き取る予定はないとのことであるが、このような場合、地主としては、今後の対応としてどのようにしたらよいか。 |
回 答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 原則として、地主(貸主)が行わなければならない。 | |
⑵ | 質問2.について ― 今後の対応としては、借地人間の共同管理を前提に、次の更新契約の締結までに具体的な内容を取り決めるという方法もあろうし、場合によっては、地主を交えた共同管理という方法もあろう。 | |
2. | 理 由 | |
⑴ | ⑵について 本件の私道およびその埋設管は、すべて地主が所有する「賃貸物」である。したがって、その「賃貸物」の修理については、当事者間で何らの取り決めもしていない以上、貸主(地主)が自らの費用で修理をしなければならないのが原則である(民法第606条)。ただ、特定の借地人が何らかの理由で下水管を破損させたというような事情でもあれば、その借地人に不法行為を理由に費用の負担をしてもらうことになろうが、本件のようなケースの場合は、借地人の数が多いだけに、往々にしてそれらの複数の借地人が使用する車両の重み等で下水管が破損したということも十分考えられる。したがって、本件の下水管の破損の原因をよく調べたうえで、これを機会に今後の対応も含め、地主と借地人全員がよく話し合う必要があろう。その場合、借地人に対し今回の道路と下水管の補修代のほかに、今後の維持費の負担もさせるということになれば、地主としても、更新後の地代の額についての考慮はせざるを得ないであろう。 |
参照条文
○ | 民法第606条(賃貸物の修繕等) | ||
① | 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 | ||
② | 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。 |
監修者のコメント
本件の埋設管は、回答のとおり、貸主の所有物であり、賃貸目的物の一部であるから、貸主(地主)がその修理費用を負担しなければならない。ただ、その利益を享受しているのは、各借地人であるから、その費用を地代に転嫁させることは可能である。
なお、特定の借地人が下水管を破損させた場合でも、その修理費の負担者は、貸主(地主)であって、費用を負担することによる損害を不法行為(民法第709条)を理由に、その特定の借地人に請求していくということになる。