不動産相談

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

== 更に詳しい相談を希望される方は、当センター認定の全国の資格保有者へ ==

不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 0710-R-0018
介護老人ホームの他人物転貸の媒介

地元の建設会社と地元の名士との共同事業で、介護老人ホームの賃貸事業を行うが、実際に介護事業を行う会社との間で賃貸借契約が締結されていない段階で、同社と利用者との間の転貸借契約の媒介(他人物転貸の媒介)を行っても、業法上問題ないか。

事実関係
   当社は賃貸の媒介業者であるが、現在地元の建設業者と地元の名士がタイアップして介護老人ホームをつくり、それを介護専門の会社に一括賃貸し、その会社が一般の利用者に転貸する事業が進められている。
 そして、建物が完成し、利用できるような状況になったので、事業の関係者から、当社に対し、入居者募集の依頼があった。
 
質問
 
1.  本事業においては、建物の所有者・貸主は地元の名士という宅建業の免許のない者になるが、このような物件の転貸の媒介をしても宅建業法上問題ないか。
2.  現在、地元の名士(貸主)と介護事業専門会社(借主兼転貸人)との間にはまだ賃貸借契約は締結していないが、このような状況の中で、利用者との間で介護老人ホームの賃貸借契約(転貸借契約)を締結しても、問題ないか。
3.  前記(【質問】2.)のような転貸借契約は、いわゆる「他人物転貸」のようなかたちになると思うが、このような契約は有効なのか。
 
回答
 
1.  結論
(1)  質問1.について
 原則として、問題ない。
(2)  質問2.について
 問題がある。
(3)  質問3.について
 有効である。 
2.  理由
(1)  について
   宅建業法は、賃貸の貸主には宅建業の免許の取得までは要求していないからである(業法第2条第2号)。ただし、介護老人ホームとしての施設や施設オーナーとしての適格性の問題は別である。したがって、もしこの施設が介護保険法による特定施設としての指定が受けられないようなものであるにもかかわらず、その指定が受けられることを軽信して営業活動を行い、利用者に不測の損害を与えた場合には、当然媒介業者としての善管注意義務違反に問われ、状況いかんによっては、宅建業法上の重要事項説明義務違反に問われることも十分考えられる。
(2)  について
   宅建業者である貴社が媒介をする以上、貸主である地元の名士と借主・転貸人である介護専門業者との間の賃貸借契約が締結されていない段階で、利用者との転貸借契約を締結するのは問題がある。なぜなら、賃貸借契約(またはその予約)が存在しなければ、転貸人に転貸権限が確定的に生じるとはいえず、そもそも転貸借契約の始期あるいはその予定日を定めるにしても、定めようがないからである。したがって、転貸借契約を締結するのは、その前提となる賃貸借契約が締結されてから行うべきである。
 なお、賃貸借契約の内容の確認にあたっては、将来賃貸借契約が何らかの事情で終了しても、貸主(あるいは別の介護事業者)と利用者との間で転貸借契約の内容が承継されるようになっているかどうかなどを確認しておく必要がある。この点については、この建物が介護老人ホームとしての施設指定がなされるかどうかの一つのポイントになるので、まずは、その指定申請の進捗状況を見てから営業活動の準備をすべきであり、このことは、施設の利用を利用権方式で募集する場合においても同様である。
(3)  について
   賃貸借契約においても、他人物売買の規定(民法第560条、第561条)が準用される(民法第559条)。したがって、現在借主の地位にない転貸人(介護事業専門会社)であっても、有効に転貸借契約を締結することはできる。しかし、前述(前記(2))のとおり、他人物賃貸が有効であるからといって、無条件で他人物賃貸の媒介を行ってよいということにはならない。
 
参照条文
 
○  民法第559条(有償契約への準用)
 この節(第3節売買)の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
○  同法第560条(他人の権利の売買における売主の義務)
 他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
○  同法561条(他人の権利の売買における売主の担保責任)
 前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。
 
参考資料
 
○  東京都有料老人ホーム設置運営指導指針(抜粋)
 
(1)  (略)
(2)   有料老人ホームの事業の用に供する土地及び建物については、有料老人ホーム事業以外の目的による抵当権その他の有料老人ホームとしての利用を制限するおそれのある権利が存しないことが登記簿謄本及び必要に応じた現地調査等により確認できること。
(3)   借地・借家により有料老人ホームを設置する場合には、入居契約の契約期間中における入居者の居住の継続を確実なものとするため、契約関係について次の要件を満たすこと。(以下(略))
ア.   借地の場合
 (略)
イ.   借家の場合
有料老人ホーム事業のための借家であること及び建物の所有者は有料老人ホーム事業の継続について協力する旨を契約上明記すること。
入居者との入居契約の期間が終身である場合には、当初契約の契約期間は20年であることとし、更新後の契約期間(極端に短期間でないこと)を定めた自動更新条項が契約に入っていること。
無断譲渡、無断転貸の禁止条項が契約に入っていること。
賃料改定の方法が長期にわたり定まっていること。
相続、譲渡等により建物の所有者が変更された場合であっても、契約が新たな所有者に承継される旨の条項が契約に入っていること。
借家人に著しく不利な契約条件が定められていないこと。
入居者との入居契約の契約期間が終身である場合には、建物の優先買取権が契約に定められていることが望ましいこと。
 
監修者のコメント
 本件【質問】の「他人物転貸」も賃貸であるから、その媒介は宅地建物取引業法の対象である。そして、いわゆる他人物売買の禁止規定(業法第33条の2)とは関係しないので、宅建業法上、できないないわけではない。
 しかし、その媒介は【回答】の2.理由(2)の後半部分の解説にあるとおり、老人ホームの設置には各種の条件が要求されているので、かなりのリスクを伴うことを意識して、慎重にも慎重を期すことが必要である。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「他人物売買」

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-208110:00~16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

更に詳しい相談を希望される方は、
当センター認定の全国の資格保有者へ

不動産のプロフェッショナル

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ページトップへ

single