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賃貸事例 0709-R-0016
更新料に関する諸問題とその対応

更新料の支払特約のある建物賃貸借契約で、借主が更新時に特約の無効を主張し更新契約が締結されなかった場合、契約はどうなるか。貸主はその後も更新料の請求ができるのか。

事実関係
   当社は賃貸の媒介を中心に行っている媒介業者であるが、2年前に当社で媒介した建物賃貸借契約の借主が、契約の更新に際し、更新料の支払特約は借地借家法第30条の規定により無効だから支払わないと言ってきたため、更新契約の締結ができなくなってしまった。
 なお、契約書の特約欄には、「本契約の更新にあたっては、借主は賃料の1か月分相当額の更新料を貸主に支払わなければならない。」と定められている。
 
質問
 
1. このような場合、賃貸借契約はどうなるのか。
2. 「更新料の支払特約は無効」という借主の主張は正しいか。
3. 貸主は、その後も更新料の請求ができるのか。
4. そもそも更新料とはどういうものなのか。
 
回答
 
1.  結論
(1)  質問1.について
 特約が履行されなくても、また、更新契約が締結されなくても、賃貸借契約は従前の契約と同一の条件で更新されたものとみなされる(いわゆる「法定更新」。借地借家法第26条第1項)。
(2)  質問2.について
(今までの判例を見る限り)借主の主張は必ずしも正しいとはいえない(後記「2.理由」中(2)の判例参照)。
(3)  質問3.について
 法定更新後の更新料の請求については、裁判所も見解が分かれており、ここでは結論が出せない。しかし一方、その不払いが契約の解除原因ともなると判断している裁判例もあり(後記「2.理由」中(3)の判例参照)、媒介業者としては、その後の対応について、弁護士などの法律の専門家に相談するなどして、円満解決が図れるよう慎重に対応することが必要である。
(4)  質問4.について
 諸説あり、必ずしもはっきりしないが、一つの考え方としては、貸主からみれば現行賃料と更新後の新賃料との差額(不足額)の一括前受けであり、借主からみれば、貸主からの更新拒絶を回避するための対価(安心料)であるとも考えられている(後記「2.理由」中(2)(3)の判例参照)。
2.  理由
(1)  について
 建物の賃貸借において、期間の定めがある場合に、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新しない旨の通知または条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約が更新されたものとみなされる。ただし、その期間は、定めがないものとされる(借地借家法第26条第1項)。
(2)  について
 建物の賃貸借において、更新料の支払特約の合法性について判断した裁判例には次のようなものがあり、いずれもその更新料の額が適当である限り、無効ではないと判断している。
○  東京地判昭和48年2月16日判時714号196頁(要旨)
 「借家人は約定の更新料を支払うことにより、家主から更新拒絶に伴う明渡請求等の紛争を免れるという利益を得るのであるから、更新料の額が適当である限り、更新料支払の合意が借家人に不利な特約であるとは断定できない。」
○  東京地判昭和50年9月22日下民集26巻9〜12号792頁(要旨)
 「期間満了により契約を更新する場合、借家人は更新料として家賃1か月分に相当する金員を家主に支払うという特約は、借家人が約定の賃料とは別に建物使用の対価の前払いとして家賃1か月分を支払うことにより、それまでと同一の契約内容で合意更新が成立する趣旨の合意であり、借家人は約定更新料を支払えば更新前の契約と同じ賃借期間が確保されることとなるから、法定更新される場合と比較して一方的に借家人に不利な特約とはいえず、更新料の額も1か月分で適当な額であるから、実質的に旧借家法第6条を潜脱するための特約とはいえない。」
(3)  について
 法定更新後の更新料の請求の可否については、裁判所の見解も分かれており、「更新料は、実質的には、更新後の賃料の一部前払いとしての性質を有するものと推定しうるから、(中略)賃借人が更新の協議に応じない間に期間が満了して法定更新された場合に更新料の支払義務を免れるとすれば、かえって賃貸人との公平を害するおそれがあることなどを総合して考えると、法定更新の場合にも、賃借人は更新料の支払義務を免れないと解すべきである(東京地判昭和57年10月20日判時1077号80頁。同旨:東京地判平成2年11月30日判時1395号97頁)。」とする判決と、「法定更新の場合、賃借人は、何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができるのが借家法の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料の支払いの約定があっても、その約定は、法定更新の場合には適用の余地がないと解する(東京高判昭和56年7月15日東高民32巻7号166頁。同旨:東京地判平成2年7月30日判時1385号75頁)。」とする判決とが対立している。
 なお、「賃借人の更新料の不払いは契約の解除原因とするに足る債務不履行である。」と判示するものとして、先の東京地判昭和57年10月20日判時1077号80頁があり、同旨のものとして、東京地判昭和59年12月26日判タ556号163頁があるので、媒介業者としては、その後の対応について、「1.結論(3)」に記したように慎重に対処することが必要である。
(4)  について
 (上記(2)(3)の判例参照)
 
監修者のコメント
 平成4年8月施行の借地借家法の立法過程で、更新料について明定化することも検討されたが、更新料の授受の慣行は全国的なものではないこと、更新料の額は当事者間の諸事情を総合判断して決められるので、法律による画一的規制になじまないこと、契約更新を保障する借地法、借家法の観点からみて、積極、消極いずれかの見解に一方的に与することはできないことなどの理由で立法化は見送られ、従来どおり解釈に委ねられることになった。
 更新料の問題は、いくつかあるが、最も大きな問題は、その支払特約が合意更新のみならず、法定更新の場合にも有効として適用があるかという点である。【回答】にあるように裁判例は分かれているが、【回答】欄に掲げられている裁判例以外でも、近時は更新料支払特約は法定更新の場合には適用されない(合意の効力がない)という裁判例が目立つ。そのように解さないと、更新拒絶には正当事由が必要として更新を保障する借地借家法の趣旨が没却されるからであるが、さらにその根底には、そもそも更新料とは何なのかという、その法的性格についての考え方の相違がある。
 いずれにせよ、裁判例が分かれている以上、更新料をもらう貸主の立場に立てば、必ず新たな更新後の契約書を作成し、合意更新をし、法定更新を避けることである。

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