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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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売買事例 0903-B-0096
「告知書」による売主の建築協定違反の不告知と媒介業者の責任

 売主が建築協定に違反していることを「告知書」に記入しなかったために、媒介業者がそのことを買主に告げることができなかった場合、媒介業者に責任はあるか。

事実関係
 当社は媒介業者であるが、当社が先日媒介した土地・建物の売買について、買主から苦情が持ち込まれた。

 苦情の内容は、当社が媒介した土地の区域には建築協定が締結されていて、当社が媒介した建物が建築協定に違反しているというもので、その違反の内容は、売主が建物を増築した際に、協定上の壁面後退の距離1mを守っておらず、60cm程度となっているというものである。

 なお、当社が売主から「告知書」の提出を受けたときには、売主からは、協定の存在はもとより、そのような違反事実があり、委員会との間でトラブルがあるとは聞かされていないし、もちろん「告知書」の中にも書かれていない。

 そこで、そのことについて当社から売主に確認したところ、売主からは、「告知書の(注)用紙には建築協定のことを書く欄がなかったので、何も書かなかった」という返事が返ってきた。
(注) 本事例の「告知書」(後記【参照資料】参照)は、全宅連様式のものを使用しているので、「建築協定」そのものについて直接告知(記入)する欄は設けられていないが、記入欄の18には、「近隣との申し合わせ事項」として、近隣地域(自治会・町内会等)での協定や取決め(ゴミ集積場所、会費等)で、特に買主に引き継ぐべき事項を記入する欄が設けられているほか、
21に、「その他売主から買主に引き継ぐべき事項」として、列挙項目以外(近隣とのトラブル等)で買主に説明すべき事実があれば記入する、という欄が設けられている。
質問
1. 売主の本件「告知」についての言い分は、認められるか。
2. このような、売主が告知をしなかった場合においても、当社は重要事項説明義務違反として責任を問われるのか。
3. 建築協定の違反者には、どのような罰則が課せられるのか。
回答
  1.結 論
(1) 質問1.について—認められない。
(2) 質問2.について—責任を問われる。
(3) 質問3.について—建築協定の違反者に対し、罰則が課せられたり、協定を認可した特定行政庁から是正措置命令等が発せられるようなことはないが、違反者に対する協定上の措置として、協定の運営組織から是正を求められたり、場合によっては、裁判所から強制履行や損害賠償等を命じられることはあり得る。
 
2.理由
  (1)について
 全宅連様式の「告知書」の場合は、その記入欄18は、「周辺環境」に関する協定について告知を求めているので、売主が建築協定について記入しないことがあってもおかしくはないが、21の欄は、その「記入願い」の中の記入例に、カッコ書きで(近隣とのトラブル等)と例示されているので、この欄への記入がないということは、明らかに売主に記入拒否、すなわち告知回避の意思があるものと認められる。

 したがって、その売主の告知回避は、買主に対する一種の債務不履行(付随義務違反)であるから、状況によっては買主に対する損害賠償責任が発生するものと考えられる。
(2)について
 建築協定の効力が買主に及ぶこと(建築基準法第75条)については、宅建業法第35条第1項第2号の「法令上の制限」の内容として、買主に対し説明をすることが義務づけられている(同法施行令第3条第1項第2号)。
 したがって、本件の場合、媒介業者としてはまずその点についての調査をし、買主に対し、その協定の効力が承継されることを説明しなければならない。まして、本件のように売主が協定に違反しているというのであれば、さらにその内容についても調査をし、違反の是正等について協定運営委員会等との合意があれば、その内容を買主に承継させるべく説明をしなければならない。
したがって、いかに売主が建築協定違反の告知をしなかったからといっても、媒介業者がその前提となる建築協定の有無についての調査をしていないのであれば、本件のようなトラブルは通常発見できないであろうし、売主からの告知についてもあまり期待できないわけであるから、本件の媒介を行った宅建業者は、協定の効力の承継等に関する重要事項説明義務違反はもとより、本件の協定違反による後処理の問題についても責任を免れないというべきである。
(3)について

 協定を認可した特定行政庁その他の機関が、協定の違反者に対して罰則を課したり、何らかの是正措置命令等を発することは、いずれも法令にその根拠がないので、できないとされている。

 しかし、特定行政庁が協定を認可する際の要件として、建築協定書の中に違反者に対する措置が盛り込まれていない場合には認可されないことになっているので(建築基準法第70条第1項)、その協定を運営する運営委員会等から、違反者に対し、その是正が求められたり、場合によっては、その代表者が裁判所に是正を求める訴えを提起し、裁判所からその強制履行を命じられたり、損害賠償を命じられることはあり得る(後記「建築協定書」(モデル)参照)。
 
参照資料
  ○ 付帯設備及び物件状況確認書(告知書:抜すい)
 
 
参照条文
  ○ 建築基準法第75条(建築協定の効力)
 (中略)認可の公告(中略)のあった建築協定は、その公告のあった日以後において当該建築協定区域内の土地の所有者等となった者(中略)に対しても、その効力があるものとする。
 
○ 同法第70条(建築協定の認可の申請)
 (1)前条の規定による建築協定を締結しようとする土地所有者等は、協定の目的となっている土地の区域(中略)、建築物に関する基準、協定の有効期間及び協定違反があった場合の措置を定めた建築協定書を作成し、その代表者によって、これを特定行政庁に提出し、その認可を受けなければならない。
 (2)〜(4)(略)
 
参照資料
  ○ 建築協定書(モデル:抜すい)
(違反者の措置)
第○条 第○条の規定に違反した者があった場合、第○条に定める委員長は第○条に定める委員会の決定に基づき、当該土地の所有者等に対して、工事施工の停止を請求し、かつ、文書をもって相当の猶予期間をつけて当該行為を是正するために必要な措置をとることを請求するものとする。

2.前項の請求があった場合においては、当該土地の所有者等はこれに従わなければならない。
(裁判所への提訴)
第○条 前条第1項の請求があった場合において、当該土地の所有者等がその請求に従わないときは、委員長はその強制履行又は当該土地の所有者等の費用をもって第三者にこれを為さしめることを裁判所に請求するものとする。

2.前項の出訴手続きに要する費用は、当該土地の所有者等の負担とする。
 
監修者のコメント
 宅建業法35条1項2号をうけた同法施行令3条1項2号に、建築協定の承継効(建築基準法75条)を法令上の制限として説明しなければならないことを定めているのは、その土地に建築協定の締結がなされていること自体が重要事項説明の対象であることを前提としている。売主が協定違反をしていなくても、買主にとって購入土地に建築協定が存在していることは重要なことである。媒介業者が建築協定の存在を見落したことは、業法の重要事項説明義務違反になることはもちろん、媒介契約の受任者としての調査説明義務を怠ったという民事上の責任を負う可能性も高い。売主の告知書がどうであったかは、業者の責任回避の理由にはならない。

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