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売買事例 0902-B-0093掲載日:2009年2月
重要事項説明における「公道・私道の別」
建築基準法42条2項道路に接面している物件で、当該物件だけがセットバック部分が未舗装で、私人名義になっている物件を媒介する。このような物件に接道している道路は、「公道」か「私道」か。そもそも公道・私道の区分は、どのような基準で行うのか。
事実関係 | |
当社は媒介業者であるが、このたび接道部分が下図のような建築基準法42条2項道路で、そのセットバック部分が未舗装で、私人名義のままになっている物件の売買の媒介を行う。 |
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質問 | |
1. | このような物件の場合、重要事項説明書における「公道・私道の別」は、「公道」にチェックすべきか、それとも「公道」「私道」の両方にチェックすべきか。 |
2. | そもそも「公道」と「私道」の別は、どのような基準で区分されるのか。 |
回答 | ||
1.結論 | ||
(1) | 質問1.について——「公道・私道の別」は、売買の対象が「公道」(建築基準法42条2項道路)に面しているのであるから、「公道」にチェックすべきである。 ただ、セットバック部分は「道路」として扱われるので、備考欄に、「セットバック部分(約○m2)は、道路扱い。」と記載するか、それに加えて、「当該セットバック部分は、管轄する行政庁に寄付す(注)ることにより、公道となる。」などと追記しておくことが望ましい。 (注)セットバック部分の寄付は義務ではないが、寄付をすることにより、予算が付けば公費で舗装等がなされるほか、舗装費用についての一定の助成措置が講じられている市区町村が多い。 |
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(2) | 質問2.について——本件のようなケースにおいては、原則としてその所有権名義によって区分されるが、その他のケースにおいては、必ずしも一様ではない。 | |
2.理由 | ||
(1) | 重要事項説明において「公道・私道の別」を説明する理由は、一義的には物件の購入者が、その接面している道路が建築基準法上の道路として、建物が建築できるのかどうかという、いわば購入目的に添ったものになっているのかどうかを判断するための根拠として説明することになっている。 したがって、その接面している道路が「公道」であれば、通常、特に問題となることはないのであるが、「私道」の場合には、そもそもそれが建築基準法上の道路になるのかどうかということと、その維持管理面での負担がどうなるのかということ等について、事前に十分な説明をしておかないと、あとで物件の購入者に不測の損害を与えることになることから、まずその「公道・私道の別」を説明することになっているのである。 |
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(2) | ところで、その「公道」と「私道」との別を区分する基準であるが、先の【回答】の結論でも述べたとおり、その基準は必ずしも一様ではない。 たとえば、本件のような建築基準法42条2項道路のセットバック部分であれば、その所有権の名義を基準に「公・私」の区分をするのが適当と考えられる(その意味では、本件のセットバック部分が、すでに事実上の道路として一般の通行の用に供されているのであれば、当該部分を「私道」として取引することも可能である。)が、それでは公法人(国・地方公共団体・独立行政法人など)が所有している道路がすべて「公道」かというと必ずしもそうではなく、その道路が特定の目的(たとえば、施設の利用)のために開設されたものであれば、その道路が仮に一般の通行の用に供されていたとしても、その道路は「公道」ではなく、むしろ当該公法人が所有する「私道」というべきであろう(後記【参照判例】参照)。 したがって、「公・私の別」を所有権の名義だけで分けるのは必ずしも適当ではないので、「公・私の別」がつけ難いものについては、公が維持管理をしているか、税の徴収がなされているかなどを基準に、「公道扱い」とか「私道扱い」などと表示することも許されよう。 |
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参照判例 | |
○ 東京地判昭和40年12月17日訟務月報11巻12号1757頁(要旨) | |
原告が、国立大学の敷地を通っている道路について、道路法上の道路と異ならないとして、公法上の通行権を主張したのに対して、裁判所は、「本件道路が、その中に、原告主張の2本の公道を包含していること、国が20年来、付近の一般人の通行を黙認してきたことは、いずれも、当事者間に争いがないが、それだからといって、本件道路内の公道以外の部分が、当然国の私道たる性質を失うとはいえず、したがって、一般人が、右部分につき、道路法の適用がある道路と全く同様な意味で、公法上の通行権を取得するいわれはない」とした。 | |
監修者のコメント | |
「公道」と「私道」の概念は、法律上明確な定義があるわけではなく、一般には道路法上の道路を「公道」と称し、私人の所有する土地で道路として利用されているものを「私道」と称している。しかし、そのような基準でも、そのいずれと表示するのが適切か単純には答えの出せないものがある。ただ、重要事項説明の観点からみると、そのどちらかということも大切ではあるが、さらに重要なことは、その土地の購入者が不測の損害を被ることになるか否かである。公道、私道のいずれであっても、所有者がどのような制限を受け、負担があるのかを契約成立前に十分説明しておくことが肝要である。本ケースのようなセットバック部分がある場合、単にその部分が道路とみなされるということだけでなく、その部分には建物の建築はもろん、塀その他の工作物を造れず、またその敷地の建ぺい率や容積率の計算をするに当たり、敷地面積に算入されないということをよく知っておいてもらうことが必要である。 |
より詳しく学ぶための関連リンク
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「他人の私道の通行・掘削同意」
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「公道・私道」
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「2項道路」