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売買事例 0811-B-0086掲載日:2008年11月
更地渡しの特約付売買における売主・宅建業者、買主・消費者間の手付放棄による契約解除の問題点
売主が宅建業者で、買主が一般の消費者の場合の取引において、売主業者が建物の解体等、更地渡しにするための多大の費用がかかる義務を負担しているにもかかわらず、買主は、手付放棄により一方的に売買契約を解除することができるのか。
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当社は宅建業者が売主になっている物件を、一般の消費者に売却する媒介を行ったが、契約後間もなく、買主から売買契約を手付放棄で解除したいとの申し入れを受けた。 しかし、売主業者としては、これから電柱の移設や建物の解体など、更地渡しにする義務も残っており、それらの義務を履行する前に契約を一方的にキャンセルすることは契約違反だと言って、違約金を請求すると言ってきた。
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媒介業者としては、本件の問題をどのように考えたらよいか。 |
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回答 |
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1. |
結論 |
売主が宅建業者で、買主が一般の消費者の場合には、売主業者がどのような義務を負担していても、原則として、買主の手付放棄による契約の解除によって、決着を付けるべき問題であると考える。 |
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2. |
理由 |
(1) |
本件の問題は、まさに業法第39条第2項の問題で、買主は、売主が契約の履行に着手するまでは、手付を放棄して売買契約を解除することができる。つまり、本件の取引においては、買主に解除権が留保されているので、売主にいかなる事情があろうとも、原則として、買主はその権利(解除権)を行使して契約を解除することができる。 |
(2) |
ただ、本件の場合に、売主の付随義務(本件の場合は電柱の移設と建物の解体)の履行がすでに完了し、しかもその履行に多大な費用を要していたような場合には、売主に本契約における債務の履行に着手があったとみなされる可能性もあり、もしそうであれば、買主は手付放棄による契約の解除ができないということも考えられる。 |
(3) |
しかし、本件のように業者が売主となり、業者以外の者が買主となる取引においては、前記(2)のようなケースは別として、通常の取引においては、売主に履行の着手が認められるケースは少ないと考えられる。なぜならば、売主側が物件の引渡し前にそのような多大な費用をかける準備をしなければならないのであれば、契約の段階で手付の額をそれなりの額にしたうえで、契約を締結することもできるはずだからである。 |
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参照条文 |
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○宅地建物取引業法第39条(手付の額の制限等) |
(1) |
(略) |
(2) |
宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。 |
(3) |
前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは無効とする。 |
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本ケースにおいて、売主が電柱の移設と建物の解体をすでに行ったという場合は、売主の「履行の着手」が認められる可能性が極めて高いが、そのような義務を負っているというだけの理由で、買主からの手付解除が制約を受けることはないと解される。回答にあるとおり、売主が宅建業者、買主が非宅建業者の売買の場合において宅建業者が受領する手付について解約手付の性格を絶対的に付与しているからである。
なお、質問のケースは買主が「一般消費者」であるが、買主が宅建業者でない限り、たとえば宅建業者でない会社の場合でも、回答の結論は同じである。
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