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売買事例 0809-B-0080
ビルの売買で、エレベーターの警備用電話回線の名義変更の説明を怠った場合の料金の負担責任

 ビルの売買にあたり、媒介業者が、エレベーターの警備用電話回線の名義変更についての説明を怠ったために、売主企業がそのまま2年間も電話料金を支払い続けてしまった。この場合の電話料金の負担について、媒介業者としてどのように対応したらよいか。

事実関係
 当社は、2年前にビルの売買の媒介をしたが、その際に、エレベーターの警備用の電話回線の名義変更について説明をしなかったために、売却後も名義が売主企業のままになっており、そのことを知らない経理部の者が、そのまま電話料金を支払い続け、その額が10万円を超えてしまった。そして後日そのことに気が付いた売主企業の担当者が、買主企業に対し、それまでの料金の償還を請求した。ところが、買主企業は、名義変更についての説明を受けていないので、今更払えないと言っている。
質問
 このような場合、媒介業者としては、どのような対応をとったらよいか。
回答
 
1. 結論
 本件についての直接的な原因責任は媒介業者にあるが、その際の経過を踏まえた結果責任においては、ビルの売買の売主企業の担当者(つまり、売主企業)にも過失はあると考えられる。したがって、一義的には、媒介業者と売主企業との間で負担すべき問題とも考えられるが、だからといって、実際に2年間も料金を利得している買主企業が全く負担に応じなくてもよいということにはならないので(民法第703条)、3社でよく話し合って、各社納得のいくかたちで負担すべきであろう。
 
2. 理由
(1)   通常、ビルの設備は、小規模なビルでも、住宅の場合の数倍から数十倍の規模で付設されている。したがって、通常、ビルの売買の媒介をする場合には、内外装を含め、まず、それらの点について問題がないかどうかを、売主企業からビルのメンテナンス会社等に調査を依頼してもらい、必要な調査をしたうえで、修理すべき点があれば修理をし、また、それらの修繕履歴やメンテナンス業務についての記録の写しのほかに、電話回線なども含めた電気・ガス・水道等の名義変更を要する設備のリストなどを提出してもらい、それらの資料に基づいて、媒介業者が必要な説明をしていくのである。
(2)  にもかかわらず、本件の場合には、媒介業者にそれらの業務についての注意義務違反(結果的には、説明義務違反)があったことは明らかである。しかし、一方、売主企業においても、今日まで売却済物件の警備用回線の料金が支払われていたという内部管理の不十分さからも、当時、メンテナンス業者に対し、必要な資料の作成を指示しなかった、あるいは不十分な資料を作成させたという過失があったとも考えられる。したがって、本来ならば、媒介業者と売主企業とが今回の料金についての負担をすべきものとも考えられるが、本件の場合には、買主企業に何らの損害もなく、逆に、買主企業がすでに2年間もの間、料金相当額の利益を得ているということからも、その利得分の返還を含めた話し合いがなされることが望ましいと考えられる(民法第703条)。
 
 
参照条文
  民法第703条(不当利得の返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
 
監修者のコメント
 本件は、ビルの所有権を取得した者が本来負担すべき料金をたまたま売主側がそのまま負担し続けたというものであり、ビルの買主への引渡し後もそのエレベーターの警備用電話回線が稼働していたのであれば、【回答】のとおり、買主企業の不当利得である。問題は媒介業者が説明を怠ったことが、買主企業にいかなる損害を与えたかであるが、買主が売主に仮に返還することとなった場合でも感情論は別として、その出捐と媒介業者が説明を怠ったこととは因果関係はない。説明を怠ろうが怠らなかろうが、もともと支払わなければならない金額である。説明がなかったから負担せざるを得なくなったとか、説明を受けていれば負担しなくて済んだというような性格の金銭ではない。
 三者それぞれに過失があると認められるので、【回答】のように三者で話し合って相応の分担により解決すべきケースである。万一不幸にして訴訟になったとしても、三者の分担による「和解」で解決となる可能性が極めて高いと思われる。

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