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売買事例 0803-B-0059
業者が売主の場合の売主からの解除防止のためのペナルティの加重

業者が売主で、業者以外の者が買主となる売買契約において、売主からの契約解除を防止するために、売主に対しペナルティの加重をすることは、解約手付との関係で、業法上問題となることはないか。

事実関係
 
業者が売主で、一般の法人が買主となる不動産取引を媒介するが、買主の希望により、売主からのキャンセルを防止するために、売主が契約を解除するときは、手付金の倍返しのほかに、手付金と同額の違約金を支払うことを約定したいと考えている。
質問
  このような変則的な売買契約を締結しても、業法第39条の解約手付性との関係で、業法上問題となることはないか。
回答
 
問題となることはない。ただし、その場合は、手付金の額が代金の額の20%以内で、かつ、買主から契約を解除するときは、売主が契約の履行に着手するまでは、手付金の放棄だけで解除できるように定められていることが前提である(宅地建物取引業法第39条)。
理由
宅地建物取引業法第39条の趣旨は、宅地建物取引業者が売主で、宅地建物取引業者以外の者が買主である場合に、買主に取引上の不利益が生じないように、手付金の額を制限するとともに、一定の場合に、買主が当該売買契約からの離脱ができるように設けられたものである。
したがって、売主である宅地建物取引業者が不利益になっても、買主である宅地建物取引業者以外の者が不利益にならない限り、上記【事実関係】にあるような特約をしても、業法上何ら問題はない(同法第39条第3項)。
 
参照条文
 
○  宅地建物取引業法第39条(手付の額の制限等)
(1) 宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2をこえる額の手付を受領することができない。
  (2) 宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付はいかなる性質のものであっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
(3) 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。
 
監修者のコメント
 宅建業法第39条第2項は、【回答】にように、宅建業者が売主として、宅建業者以外の者が買主となる売買における手付金の性格について、たとえその手付金が証約手付あるいは違約手付と合意されたとしても、併せて解約手付の性格を強行法的に付与し、買主からの手付放棄、売主からの手付倍返しによる解除を保証したものである。そして、本来契約自由の原則により、手付金の額も民法上は自由に決められる筈であるが、代金の2割を超えるとなると、買主は実質にそれを放棄して解除することにかなりの制約を受けてしまうため上限の規制をした。
 しかし、同条は第3項において「買主に不利」な特約のみを無効としたので、反対に「売主に不利」なものは有効であって、たとえば売主からの手付解除は手付金の3倍、4倍の額を返還しなければならないという特約も有効である。

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