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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 1412-B-0189
個人間売買における中間金解除特約の有効性と業法47条との関係

 個人間の売買の媒介で、売主から、「買主が支払う手付金の額が少ないので、買主からの手付解除を防止するために、手付解除に代わる中間金解除特約を定めてもらいたい」と言われた。
 このような特約は、法的に有効な特約といえるか。このような特約を定めた場合、当社は、宅建業法第47条第3号の手付に関する信用供与の禁止規定に抵触しないか。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、このたび個人間の売買における売主からの申入れで、「手付金の額が少ないので、買主からの手付解除を防止するために、手付解除に代わる中間金解除という特約を定めてもらいたい」と言われた。
 当社は、そのようなことができるのかどうかわからなかったが、とりあえず売主から話を聞いてみたところ、その内容は次のようなものであった。
 手付金の額が50万円と少額なため、買主は中間金として、あと50万円を売買契約締結後2週間以内に売主に支払う。
 売主および買主は、互いに手付解除は行わず、その代わりに中間金が支払われた日以降、それぞれ手付金・中間金の合計額(100万円)を買主は放棄し、売主はその倍額を買主に償還し、売買契約を解除することができる。
 売主または買主がこの特約に違反した場合は、互いに違約金として、売買代金の20%相当額を相手方に支払う。

質 問

1.  このような、当事者に手付解除の権利を放棄させ、中間金を含めた支払金の全額の放棄・倍返しによって買主が履行に着手した(中間金を支払った)後も売主が売買契約を解除することができるというような特約は、民法の規定にも判例の趣旨にも反すると思うが、法的に有効か。
2.  このような特約を定めた場合、その取引が個人間の売買であっても、媒介業者の行為が、宅建業法第47条第3号の手付に関する信用供与の禁止規定に抵触するというようなことにはならないか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 有効と解される。
 質問2.について ― 個人間の売買であっても、宅建業法第47条第3号の規定の適用は受けるが、本件の場合は媒介業者の行為が同条の禁止規定に抵触するようなことにはならないと解される。
2.  理 由
について
 本件の特約は、民法の任意規定やそれに伴う判例の内容と異なる特約のかたちになってはいるが(後記【参照判例】参照)、その内容は当事者間の契約自由の原則の範囲内のものと考えられるので、法的に有効なものと解される。
 ただ、本件の特約は買主に多少なりとも無理を強いる特約となるので、特にその中間金の支払時期については、あまり買主に無理がないように媒介する必要があろう。
について
 宅建業法第47条第3号の手付に関する信用供与の禁止規定は、売主が一般の個人であっても、その媒介をする宅建業者を規制するという趣旨の規定であるから(同条本文)、結論で述べたとおり、本件の個人間売買においても、同条の規定の適用を受けるということはそのとおりである。
 しかし、本件の取引においては、売主が安易な手付解除をできるだけ避けたいということから、手付金の額を100万円以上に設定したいという強い意向があり、その意向を買主が理解したうえで2週間後に中間金を用意し、それを売主に支払うということで当事者間の意思の合致を見い出そうとしているものと解されるので、媒介業者が、その売主の意向に添わせるために、買主に対し、その意思に反し中間金を支払わせるということでもなければ、本件の特約が同条の脱法行為だということにはならないと解されるからである。

参照条文

 民法第557条(手付)
 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
  (略)
 宅地建物取引業法第47条(業務に関する禁止事項)
 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
一、二 (略)
三 手付けについて貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為

参照判例

 最判昭和40年11月24日民集19巻8号2019頁(抜すい)
 民法557条1項にいう履行の着手とは、債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す
 大判昭和14年5月26日評論28号民734頁(要旨)
 民法557条1項は強行規定ではないから、履行の着手の前後を問わず履行の終了までは解約手付による解約権を行使することのできる旨の特約も有効である。

監修者のコメント

 手付金と中間金の合計額の損害を覚悟すれば、互いに契約解除ができるという特約は、宅建業者が売主のときは無効であるが(宅建業法第39条)、そうでない限り、回答のとおり契約自由の原則の範囲内の問題であり可能である。また、業法の手付貸与の禁止規定にも抵触しない。ただ、手付を放棄すれば買主が解除できるということは、広く知られているのに対し、また民法の手付についての規定(第557条)が任意規定であることはあまり知られていないので、媒介に当たり買主に本件特約の効果をよく説明して理解してもらうことが大切である。
 なお、手付解除を防止したいのであれば、「互いに手付解除はできない」旨の特約をする方法もある。その特約も有効だからである。

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