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売買事例 0712-B-0046
マンション事業における「日照地役権」の設定

当社のマンション事業地の南側隣接地に空地があるが、将来、何が建つか心配である。ついては、当社のマンションについて、将来の日照を確保する方法はないか。

事実関係
 当社は今回初めてマンションの分譲事業を行うが、当社の事業地(約1,000m2)の南側隣接地に空地(約1,000m2)があり、将来、その空地に高い建物が建つと、当社の分譲事業に支障が出る。
 
なお、本件両地の用途地域とその容積率は、いずれも準工300%の地域である。
質問
 ついては、当社は、その南側隣接地の所有者と何らかのかたちで協定を取り交わし、少なくとも事業地の東南方向には高層の建物を建てないようにしてもらおうと思っているが、どのような提案をしたら、了承をしてもらえるだろうか。その場合の履行を確保する手段として、どのような方法があるか。
回答
 
1. 結論
 まず、貴社が考えている住棟配置を説明したうえで、貴社が南側隣接地の所有者に一定の対価を支払うことを条件に、その南側隣接地の東南部分に、いわゆる「日照地役権」を設定し、登記をすることの了承が得られれば、貴社のマンションに一定の日照を確保することが可能となる。
 なお、貴社の現状での提案としては、下図のような住棟配置と地役権の設定が考えられるが、もし、両土地の一体開発が可能であれば、貴社からの対価の支払は発生しないだろうし、また、商品グレードの向上や、容積率の問題についても、敷地内に一定の空地を確保することにより、その1.5倍を限度とした割増しも考えられ(建築基準法第52条第8項、同法施行令第135条の16)、事業収支の大幅な改善も期待できる(後記【参考資料】参照)。
2. 理由
(1)  マンション事業においては、日照の確保は不可欠である。したがって、担当者としては、周辺の建物に関する新たな建築計画について、重大な関心を寄せざるを得ない。
 本件の場合も、これ以上の隣地の追加買収や、隣地との一体開発が難しいというのであれば、あとは、特に南側隣接地との建築計画についての協議を行わざるを得ない状況にあるといえる。
 その場合、事業地の南側が将来的にも空いているか、建物を建てる計画があるかによって、分譲価格や販売状況に差が出るため、事業収支に大きな影響を与えることになり、担当者にとっては、何としても、南側隣接地の所有者に建物を左右(東西)のどちらかにずらして建ててもらい、その反対側の土地は空地として空けておいてもらいたいと考えるのは、当然のことである。
 
(2)  問題は、南側隣接地の所有者から同意が得られた場合に、その将来の(不作為の)履行をどのように確保するかということと、その対価をどのように計算するかということである。
 この点については、前者の問題は、すでに【回答】の1.結論で述べたとおり、当事者間で日照の確保を目的とする不作為の地役権(いわゆる「日照地役権」)を設定し、これを登記することにより確保できると考えられるが、その後者(対価)の問題については、もし南側隣接地の建築計画において、建物を西にずらしても、300%の容積率をすべて消化できるのであれば、不動産鑑定評価理論における「立体利用阻害率」は0(ゼロ)ということになるので、話し合いいかんによっては、その対価は、かなり少額に抑えることもできるのではないかと考えられる(参考:「新版・不動産評価の法律実務」(住宅新報社))。
 
参考資料
 
○  建築基準法第52条第8項、同法施行令第135条の16
<一定の住居系建築物の容積率の緩和について>
 建築物の全部または一部を住宅の用に供するもので、次の条件に該当するものにあっては、当該建築物の中での住宅の床面積の割合に応じて政令で定める方法により算出した数値(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内にあっては、その範囲内でその議を経て別に定めた数値)まで、用途地域に関する都市計画で定める容積率の1.5倍を限度として、その容積率が緩和される。
(1)  第1種・第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域もしくは準工業地域内にあること(ただし、高層住居誘導地区および特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。)。
(2)  敷地内に政令で定める規模以上の空地を有し、かつ、この空地の道路に接して有効な部分が政令で定める規模以上であり、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上であること。
i  この場合の政令で定める規模以上の空地は、法第53条に定める建ぺい率の最高限度(以下、「建ぺい率限度」という。)に応じて、次の表のとおりとなっている(施行令第135条の16第1項)。
法第53条に定める建ぺい率の最高限度(建ぺい率限度) 確保すべき空地の合計(敷地面積に対する割合で表示) 上乗せして確保すべき空地の割合(参考)
5/10以下 1−建ぺい率限度+1.5/10 15%
5/10を超え5.5/10以下 6.5/10 15%〜20%
5.5/10超 1−建ぺい率限度+2/10 20%
定めがない 2/10 20%
(注)  地方公共団体は、土地利用の状況等を考慮し、上乗せして確保すべき空地の部分の割合を1.5/10または2/10を超え3/10以下の範囲内で確保すべき空地の規模を条例で別に定めることができる(同項ただし書)。
ii  また、当該空地の「道路に接して有効な部分」の規模については、当該空地の合計規模に2分の1を乗じて得たものとされる(施行令第135条の16第2項)。
iii  さらに、政令で定める敷地面積の規模は、近隣商業地域、商業地域では1,000m2、それ以外の地域では2,000m2以上となっている。ただし、条例でそれぞれ500m2から2,000m2未満および500m2から4,000m2未満の範囲で別に定めることができる(施行令第135条の16第3項)。
(出典:平成19年度版「不動産従業者のための−法令改正と実務上のポイント」(推進センター))
 
参照条文
 
○  民法第280条(地役権の内容)
 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
 
監修者のコメント
 南側隣地の所有者と何らかの協定を締結する方法もあるが、協定はあくまでも債権的契約であるので、南側隣地所有者がその土地を売却した場合は、当該協定を譲受人に承継させる旨を協定に定めていたとしても、第三者である譲受人に対してそのことを主張できるわけではない。もし、承継させなかった場合は、債務不履行として損害賠償請求の問題になるだけであり、本来の目的を貫徹できない。
 したがって、第三者にも主張できるようにするには、【回答】のとおり地役権を設定し、登記することである。地役権は、通行、引水や高圧電線路敷設のためのものが多いが、日照や眺望を妨げるような建物を建てないという不作為を内容とするものも成立する。しかし、あくまでも地役権設定契約によるものであるから、相手方(承役地)の土地利用の制約度いかんによっては、相応の対価を覚悟しなければならない。

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