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賃貸事例 1410-R-0139掲載日:2014年10月
自動更新条項と解約申入れ条項の優劣
建物賃貸借契約において、自動更新特約によって更新の合意が成立しても、その後に発生した借主からの解約の申入れによって契約が終了するという考え方は、正しいか。また、自動更新特約は、専ら貸主側の都合で定めるものであるという考え方は、正しいか。
事実関係
当社は賃貸借の媒介業者であるが、先日あるオーナー(貸主)から、「建物賃貸借契約書に自動更新条項が定められていたとしても借主からの中途解約条項が定められていた場合には、その中途解約条項が優先するということで、たとえば、貸主としては約定どおり3か月前に当事者間で自動更新の合意が成立したと思っていても、その後に借主から約定による1か月前に解約申入れがなされた場合には、契約が終了してしまうのはおかしい」という申し出があった。事情を聞くと、そのオーナーは、他の宅建業者からそのようなことを聞いたのだという。
質問
1. | この他の宅建業者が言っているという「期間満了3か月前の自動更新条項が、借主からの1か月前の解約申入れ条項に劣後するため、その解約申入れによって契約が終了する」という考え方は、正しいか。 | |
2. | 聞くところによると、自動更新条項というのは、専ら貸主側の都合で定めるものであって、必ずしも借主のためにはなっていないという人がいるが、その考え方は正しいか。 |
回答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 正しいかどうかは即断し難いが、実務的には妥当な考え方だと解される。 | |
⑵ | 質問2.について ― 正しくない。 |
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2. | 理 由 | |
⑴ | について 自動更新の特約は、当事者が約定した「一定の期間内」に、当事者間に何らの条件変更等の申し出がない場合に、更に同一期間、同一条件をもって契約を更新するという事前の合意が一般的なものであるから、その合意自体に特に問題があるわけではないが、問題は、その「一定の期間」があまりに長い場合や、その期間経過後に借主に契約を終了させたいという事情が生じた場合に、その自動更新の特約をどのように解釈するかということである。 思うに、自動更新の特約というのは、その更新される契約が、期間の満了まで存続し、その存続している契約を終了させないで継続させるという合意であると解されるから、当事者の意思解釈としては、その契約が、その後に発生した借主のやむを得ない事情により解約の申入れがなされ、期間の満了までに契約を終了させる場合には、契約は更新されないということになると解されるからである。その意味で、このようなケースの自動更新特約は、一種の停止条件付の特約と解される。 |
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⑵ | について その意見は、更新料の支払特約がある場合などのケースを言っているのではないかと考えられるが、借主にとっても、更新料を支払うことによって、約定の期間内はその建物を使用する権利が確保できると解されるので、貸主の都合だけで自動更新特約が定められるという考え方は妥当ではない。 ちなみに、自動更新特約が定められていない場合には、その都度、契約更新の合意をしなければならず、その合意がなされない場合には、法定更新ということで、期間の定めがない契約として更新されてしまう(借地借家法第26条第1項ただし書き)。そうなった場合、借主はいつ貸主から建物の明渡しを求められるかも知れないということになり、また逆に借主から契約を終了させる場合においても、民法の規定に基づいて、3か月前の予告をもって終了させなければならないということになる(民法第617条)。したがって、その意味においても、自動更新特約を定めることは、貸主側においても、借主側においてもメリットがあるということである。 |
参照条文
○ | 民法第617条(期間の定めのない賃貸借の解約申入れ) | ||
① | 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。 一 土地の賃貸借 1年 二 建物の賃貸借 3箇月 三 (略) |
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② | (略) | ||
○ | 借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等) | ||
① | 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 | ||
② | 、③ (略) |
監修者のコメント
質問1については、回答のような考え方に対して、3か月前までに当事者同士何らの意思表示がない限り、更新が合意されたことになるので期間満了後の契約の継続を互いに保証したことになり、1か月の予告期間による解約申入れは、更新後に初めてできるという考え方もあり得る。この点に関する裁判例は見当らない。おそらく、このようなケースが生じても話合いで決着し、裁判にまでならないからであろう。
いずれにせよ、媒介業者としては、当事者に明確にしておくことが望ましい。
なお、自動更新条項は回答のとおり、貸主、借主にとって公平なものである。