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売買事例 1410-B-0185掲載日:2014年10月
クーリングオフの適用の有無等に関する取引上の諸問題
「事業のために」不動産を購入する個人や会社などの「事業者」は、クーリングオフの対象にはならないというのは本当か。買主が、所定のクーリングオフに関する告知を書面で受けたにもかかわらず、売買契約を解除しなかったときは、買主は手付解除ができなくなるというのは本当か。売主が、買主に対し所定のクーリングオフの適用がある旨の告知を書面でしなかったときは、買主は、決済・引渡しが終了するまでは契約を解除することができるというのは本当か。
事実関係
当社は宅建業者であるが、先日ある同業者から、宅建業者が売主になっている物件のクーリングオフの適用について聞かれたが、よくわからなかった。ついては、その聞かれた内容についての正しい答えが知りたい。
質 問
1. | クーリングオフの対象になる買主には、「事業のために」不動産を購入する個人や会社などの「事業者」は含まれないというのは本当か。 | |
2. | 買主が、売主から所定のクーリングオフの適用がある旨の告知を書面で受けたにもかかわらず、その権利行使の期間内に契約の解除をしなかったときは、買主が手付解除ができなくなるというのは本当か。 | |
3. | 売主が、買主に対し所定のクーリングオフの適用がある旨の告知を書面でしなかったときは、買主は、決済・引渡しが終るまでは契約の解除ができるというのは本当か。 |
回答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 本当ではない。 | |
⑵ | 質問2.について ― 本当ではない。 | |
⑶ | 質問3.について ― 本当である。 | |
2. | 理 由 | |
⑴ | について クーリングオフの対象になる買主には、「事業者」(事業のために不動産を購入する個人も「事業者」である=消費者契約法第2条第2項)も含まれる。なぜならば、宅建業法においてクーリングオフの対象にならないのは、「買主が宅建業者」の場合だけだからである(宅地建物取引業法第78条第2項)。 |
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⑵ | について 買主がクーリングオフに基づく権利行使の期間内に契約の解除をしなかったとしても、その後に契約を解除すべき事由が生じたときは、それが手付解除であろうと違約解除であろうと、買主に解除権がある限り、契約を解除することができる。なぜならば、宅建業法のクーリングオフの規定に基づく解除権の行使と、契約や民法その他の規定に基づく解除権の行使とは、それぞれ立法趣旨の異なる別次元の問題であり、特に手付解除に関する宅建業法第39条第2項の規定は、クーリングオフの規定と並ぶ買主の解除権を担保するための重要規定だからである。 |
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⑶ | について 売主が、買主に対し所定のクーリングオフについての書面による告知をしなかったときは、買主は、その取引の決済・引渡しが済むまでは、いつでも売買契約を解除することができる(宅地建物取引業法第37条の2第1項第2号)。 |
参照条文
○ | 消費者契約法第2条(定義) | ||
① | (略) | ||
② | この法律(第43条第2項第2号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。 | ||
③ | (略) | ||
○ | 宅地建物取引業法第37条の2(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等) | ||
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない | |||
一 | 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して8日を経過したとき。 | ||
二 | 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。 |
監修者のコメント
宅建業法の第5章「業務の規制」の目的は、取引の円滑化すなわち紛争の防止と宅建取引に精通していない消費者の保護を図るという2つがあるが、条文・制度の趣旨が後者のみというものについては、宅建業者同士の売買については適用する必要がない。そこで、クーリング・オフ制度など8項目について宅建業者間の売買について適用除外としている(78条2項)。それ以外の規定は、35条に代表されるように、取引の円滑化(紛争防止)も目的としているので、宅建業者間の取引でも適用することとされている。
いずれにせよ、買主が宅建業者以外の事業者でも宅建取引に精通していないという意味で一般消費者と同じであるから、適用除外とはならないのである。