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売買事例 1002-B-0114掲載日:2010年2月
取引後13年が経過した土地の地中埋設物についての瑕疵担保責任
当社が10年前に購入した駐車場を、そのまま駐車場として売却し、3年が経過したが、このたびその駐車場を購入した会社がその土地上に自社ビルを建てる。ところが、地中から大量の地中埋設物が発見された。この場合の瑕疵担保責任はどうなるか。
事実関係 | |
当社は宅地建物取引業者であるが、当社が10年前に買った駐車場を、そのまま駐車場としてある会社に売却し、3年が経過したところで、その会社がその土地に自社ビルを建てることになった。そして、建築工事が始まったのであるが、杭打ちと根切り工事に入ったところで、地中に大量の産業廃棄物が発見された。なお、その産業廃棄物を処理・搬出するのに約500万円の費用がかかるという。 | |
質問 | |
1. | この産業廃棄物の存在は「瑕疵」にあたるか。 | |
2. | この産業廃棄物の存在が「瑕疵」にあたるとした場合、当社は、その費用を買主に賠償する責任があるか。 | |
3. | 当社がその費用を賠償した場合、その賠償した額を元の売主に請求することは可能か。 | |
回答 | ||
1.結論 | ||
(1) | 質問1.について — 「瑕疵」にあたる。 | |
(2) | 質問2.について — 貴社が、今でも瑕疵担保責任を負う特約をしているとか、瑕疵の存在について悪意でない限り、貴社は責任を負わない。 | |
(3) | 質問3.について — 貴社が、瑕疵の存在について、貴社の責任として瑕疵担保責任を負わざるを得ないのであれば、貴社はその賠償した金額を元の売主に請求することは可能と考えられる。 | |
2. 理由 | ||
(1)について 「瑕疵」とは、その物件が通常有すべき品質・性能を欠いている状態をいうとされている。したがって、本件のように、その物件(土地)を利用するのに、約500万円もの別途費用がかかるというのでは、その土地が通常有すべき品質・性能を有しているとは到底いえない。 |
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(2)について 本件の取引は、商人間の売買であるから、売主の瑕疵担保責任については、買主に、商法第526条の規定による目的物の検査義務があり、いずれにしてもその責任の追及は引渡し後6か月間しかできない。したがって、貴社が、取引から3年経った今も瑕疵担保責任を負うという特約をしているとか、その隠れた瑕疵の存在を知っているのならともかく、そうでないのであれば、貴社が本件の瑕疵について責任を負うことはない。 |
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(3)について 貴社が、地中埋設物について、何らかの事情を知り得る立場にあり、貴社がその責任を買主に対し負うことになるとすれば、元の売主も、その地中埋設物について何らかの事実を知っているものと考えられ、したがって、貴社がその不法投棄などの事実を元の売主が知っていることを立証できるのであれば、貴社は元の売主に対し、民法第709条および第724条の規定に基づいて、その損害の賠償を請求することができると考えられる(後記【参照判例】参照)。しかし、貴社が上記のような立場になく、単に買主に対し現在も瑕疵担保責任を負う特約をしていたような場合に、その負担した処理費用相当額の損害について元売主に損害賠償請求することも可能と考えられるが、この請求については、平成13年11月27日の最高裁判例によって、すでに消滅時効にかかっているとの元売主からの主張も考えられ、かなり難しいと思われる。 |
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参照条文 | ||
○ 商法第526条(買主による目的物の検査及び通知) |
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(1) | 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。 | |
(2) | 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6か月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。 | |
(3) | 前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。 | |
○ 民法第709条(不法行為による損害賠償) | ||
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 | ||
○ 民法第724条(不法行為による損害賠償の請求権の期間の制限) | ||
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。 | ||
参照判例 | ||
○ 最判平成16年4月27日民集58巻4号1032頁(要旨) |
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本条(民法第724条)後段の除斥期間の起算点である「不法行為の時」とは、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合は加害行為の時であるが、当該不法行為に発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部または一部が発生した時と解すべきである。 | ||
監修者のコメント | |
会社間の売買(商人間の売買)については、商取引の迅速性の要請から、瑕疵担保に関する商法の特則(第526条)があり、買主は目的物を受領したときは、6か月以内に検査して通知しなければ、売主に対して瑕疵担保責任に基づく請求ができなくなる。もっとも、売主がその瑕疵を知っていた場合あるいは別の特約をしているときは別である。 これに関連して注意すべきは、宅建業者が売主で非宅建業者が買主となる売買においては、どのような場合でも売主として引渡しから2年間は責任を負わなければならないと解するのは正しくない。宅建業法第40条の規定は、当事者間において特約をしようとする場合の制限であって、何も特約しなければ、「引渡しから2年」ではなく、民法の「買主がその事実を知った(発見した)時から1年間」である。と同時に宅建業者が売主となるときであっても、買主が会社その他の商人であれば、上記の商法第526条が適用されることになる。 なお、質問3に関して、この会社が仮に瑕疵担保責任を負った場合に元の売主に瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求ができるかの問題について最高裁判例(平成13年11月27日)は、「引渡しの日から10年の経過により損害賠償請求権は消滅時効(民法第167条1項)にかかる」としているので、本件の元売主の消滅時効の主張(時効の援用)が、売買当時の諸般の事情から「権利の濫用」と認められる場合は別として、元の売主に何の責任もないようであれば、損害賠償が認められない可能性が高い。 |