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売買事例 0912-B-0110掲載日:2009年12月
個人が開発した土地を購入した分譲業者の瑕疵担保責任等
宅建業者でない個人が開発許可を取得し、その開発した土地を宅建業者が購入し分譲事業を行った場合、その開発土地に瑕疵があったときは、分譲業者の責任はどうなるか。
事実関係 | |
当社は、1年前に土地を取得し、それに建物を建築し建売住宅として分譲事業を行ってきたが、このたびその建売住宅を購入した顧客から、下水の排水状況が悪いということで、市から施設の改善措置命令が出されたというクレームが付いた。 なお、この土地は、地元のある個人が開発許可を取得し、地元の業者が工事を行ったという、いわゆる開発土地であるが、当社はその開発土地をその個人から購入したのである。 |
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質問 | |
1. | このような土地の場合、下水の排水施設のトラブルは誰が責任を負うのか。 | |
2. | 当社が、その排水施設の改良工事を行った場合、その費用を土地の売主(開発者個人)に請求することができるか。 | |
回答 | ||
1.結論 | ||
(1) | 質問1.について — トラブルの原因が、宅地内の施設にあれば、一義的には建売住宅の売主である貴社が負うことになる。しかし、その原因が、宅地外の道路内の配管や側溝の勾配などにあるとすれば、その道路が私道か公道かによって責任の主体が分かれる。そして、その道路が私道、すなわち開発行為による私道である場合には、貴社がその私道も含めて購入したのであれば貴社に、そうでなければ開発者個人にその責任があるということになろう。 | |
(2) | 質問2.について — 前記(1)のとおり、トラブルの原因が宅地内の排水施設にあるのであれば、一義的には貴社にその責任があることになるが、その場合の法的責任の内容は、売主としての債務不履行責任なり瑕疵担保責任ということになるであろうから、そうなると、貴社もその土地の売主である開発者個人に対し、売主の債務不履行責任なり瑕疵担保責任を追及することができるという関係になる(民法第415条、第570条)。 ただ、問題は、本件の開発土地取得の段階で、その取引に商法第526条の「商人間売買」における瑕疵担保責任の特例の適用があるかどうかである。そして、もし特例の適用があるとすれば、特約がない限り、貴社は、用地取得後すでに1年を経過しているので、土地の売主である開発者個人に対し、瑕疵担保責任を追及することができないということになる(同条第2項後段)。つまり、土地の売主である開発者個人が、一般の個人であるか、それとも商法上の「商人」であるかによって、貴社の売主に対する瑕疵担保責任の追及ができるかどうかが決まるということになる。 そして、また、貴社が売主にその債務不履行責任を追及するにしても、その取引が「商人間売買」ということになれば、その具体的な損害賠償額の認定に当たっても、過失相殺等によりかなり厳しい面が出てくる可能性が考えられる。 |
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2.理由 | ||
(1)について (略) |
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(2)について 本件の開発土地が、その開発者個人のもともとの所有地であるとか、かなり前に取得したものであるというのであればともかく、最初から転売を目的に取得したものであるというようなことになるとすると、その取得・転売行為は、商法第501条1号の「投機購買」に該当し、1回限りの行為であっても「商行為」になるとされる(絶対的商行為)。とすると、その「商行為」を行った開発土地の売主である個人は、一般の個人ではなく、商法上の「商人」になるのではないかという疑問が生じる。そして、その一般の個人である売主が、もし「商人」であるとすると、その開発土地についての貴社の仕入行為は商法第526条に定められている「商人間売買」に該当し、貴社は、その「隠れた瑕疵」について、引渡し後6か月を経過しているため、売主に対し瑕疵担保責任を追及することができなくなるということになる(同条第2項後段)。 ところで、今回の開発土地の売主である個人は、果して「商人」なのであろうか。 商法第4条第1項によれば、「商人とは、自己の名をもって商行為をなすを業とする者をいう。」とある。つまり、商人とは、単に「商行為」をなすだけではなく、その商行為をなすことを「業」とする者である、と定められている。したがって、逆に言えば、今回の土地の売主が、過去にも同じような「投機購買」を行っていたり、他に何か商売を行っているというような事情がない限り、「商人間売買」にはならず、貴社は、その土地の売主である個人に対し、瑕疵担保責任を追及することができるということになる。 |
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参照条文 | ||
○ 商法第4条(商人の意義) | ||
(1) | この法律において商人とは、自己の名をもって商行為をなすを業とする者をいう。 | |
(2) | (略) | |
○ 商法第501条(絶対的商行為) | ||
左に掲げた行為は、これを商行為とする。 一 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為 二〜四 (略) |
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○ 商法第526条(目的物の検査及び通知) | ||
(1) | 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。 | |
(2) | 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することができない瑕疵がある場合において、買主が6か月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。 | |
(3) | 前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。 | |
監修者のコメント | |
瑕疵担保責任は、言うまでもなく売主が負うべきもので、その責任は売主の故意・過失を問わない無過失責任である。要するに、その瑕疵の原因が他人にあって、自分の責任ではないという場合でも売主である以上責任を免れない。 なお、商人間(典型例は、会社間)の売買は、商取引の迅速処理の要請から、特約がない限り、商法526条の規定が適用され、しばしば買主が保護されなくなってしまう事態が生ずるので、仲介に当たっても注意されたい。もっとも商人間であっても、特約があれば、その特約のほうが優先する。また、売主が悪意(その瑕疵を知っていた)のときは、同条は適用されない。 |
より詳しく学ぶための関連リンク
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「他人の私道の通行・掘削同意」