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売買事例 0703-B-0007掲載日:2007年3月
売買代金の支払を約束手形で行う場合の問題点
売買代金の支払を約束手形で行った場合、業法上問題になるか。手形が不渡りになった場合、媒介業者に責任が発生するか。
事実関係 | |
当社は媒介業者であるが、以前に当社と取引したことのある建売業者が、一般の個人から土地を購入するのに売買代金の一部(残代金)を約束手形で支払いたいと言ってきた。これに対し、当社の営業担当者は、すでに売主の了解をとっているので、そのまま取引を進めたいと本社に了解を求めてきた。 なお、売主は(業者以外の)一般の個人であるが、過去にも土地を売った経験があるらしく、手形の満期日が決済・引渡し日から30日程度であれば、所有権移転の先行登記をしても構わないと言っているという。 |
質問 | |
1.このまま取引を進めても、業法上問題ないか。 | |
2.手形が不渡りになった場合、媒介業者にも責任が発生するか。 |
回答 | ||
1.結論 | ||
(1) | 質問1.について 売主のために、売主のリスクを十分説明し、かつ、買主業者の信用状況等を十分調査し、客観的にみてその手形が現金化されることが間違いないと判断されるのであれば、業法上問題になることはないと考えられる。ただし、手形の授受に当たっては、売買契約書に、買主が「売買残代金の支払の(確保の)ために手形を振り出す(交付する)」旨を明記しておくことが望ましい。 |
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(2) | 質問2.について 貴社の営業社員が、買主業者の信用状況等について十分調査せずに、買主の支払能力について「心配ない」などと誤解を生むような発言をしている場合には、媒介業者にも責任(使用者責任)が発生する可能性がある(民法第715条)。 |
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2.理由 | ||
(1)について 宅地建物の取引において、売買代金の支払を手形で行うことは異例のことであり、リスクも伴う。そのため、判例は、売買代金の支払を金銭ではなく約束手形の振出しで行った場合、手形は不渡りのおそれがあるので、これをもって代金の支払債務が当然に消滅することはなく、手形の授受は特別の約定がない限り、「支払確保」のためと推定されるとしている。 本件の場合も、特別の約定もなく手形の授受が行われるようなので、これは残代金の支払期日を手形の満期日まで猶予し、その支払を確保するためのものと解される。 しかし、この約束手形を「支払の(確保の)ため」にではなく、「支払に代えて」振り出す(交付する)ということになると、その約定は金銭の支払に代えて手形で支払うということになるので、その手形の振出し(交付)は「代物弁済」になると解されている。したがって、その場合には売買残代金の支払債務は消滅し、手形債務だけが残るということになるので、十分注意が必要である。 |
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(2)について 残代金の支払期日に金銭ではなく約束手形で授受することについて、売主がその意味を十分理解して(たとえば、手形が現金化されて初めて代金を受領したことになること、など)行うのであれば、後日手形が不渡りになったとしても、媒介業者に責任はない。 しかし、媒介業者が売主に対して、買主の信用力について誤解を生むようなことを言って、物件の引渡し・登記までも移転させてしまった場合には、後日の不渡りにより売主に損害が生じれば、これに対し責任がないとはいえない。 |
監修者のコメント | |
約束手形による支払いは、極めて危険を伴うので、できるだけ避けたほうがよいことはもちろんであり、またその場合でも登記は手形の現金化と同時にすることが望ましい。 いずれにせよ、媒介業者としては、売主に対し、リスクを十分に説明する義務がある。 |