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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。
ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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売買事例 0703-B-0001掲載日:2007年3月
複数業者が関与する場合の売主業者の取引主任者の記名押印
媒介業者が取引に関与する場合も、売主業者の取引主任者が重要事項説明書に記名押印する義務があるか。
事実関係 | |
当社は、金融機関系列の宅地建物取引業者であるが、このたび買主側の媒介業者として、宅地建物取引業者が売主となっている中古のオフィスビルの売買に関与することとなった。そこで当社は、社内規定に基づいて、売主側の媒介業者にエンジニアリングレポートの提出のほか、宅地建物取引業法上の重要事項説明書に売主業者の取引主任者の記名押印を求めた。
ところが、売主側の媒介業者は、エンジニアリングレポートの提出には応じたが、売主業者の取引主任者の記名押印には応じられないと言ってきた。 その理由は、媒介業者が取引に関与する場合は、売主業者には自社の取引主任者に記名押印する義務はなく、現に、本件都道府県を管轄する都道府県の担当者も同様の回答をしているからだという。 |
質問 | |
媒介業者が取引に関与する場合には、売主業者には自社の取引主任者に重要事項説明書に記名押印させる義務はないのか。 |
回答 | |
1.結論 (当該都道府県においては)義務があるとまでは判断していないものと考えられる。 |
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2.理由 ひとつの宅地建物取引に複数の業者が関与する場合、それらの業者全員が重要事項説明義務を負う。また、宅建業法とは別の民事上の説明義務は、売主が業者で、その媒介を他の業者が行う場合の売主業者についても同様に負うものとされている(大阪高判昭和58年7月19日判例時報1099号59頁:後出【参照判例】参照)。したがって、売主業者も重要な事項について説明義務を負う以上、何らかのかたちで取引主任者に説明させる義務を負う(業法第35条第5項)。 しかし、このような複数の業者が取引に関与する場合に、実際にどの業者が重要事項説明書を作成し、どの業者が説明・記名押印するかについては、業法は明確な規定を置いていない。したがって、(当該都道府県においては)実務上、売主業者が自社の取引主任者に記名押印をさせずに、媒介を依頼した媒介業者の取引主任者をして記名押印させたとしても、それをもって直ちに業法違反として取り扱わないとしているものと考えられる。 ただ、この運用は、あくまでも当該都道府県における運用であるから、その他の都道府県において行う場合には、あらかじめそれらの都道府県の業法所管課に確認しておくことが必要である。 なお、不動産の業界団体の中には、本件の問題について売主業者の取引主任者も記名押印をするように会員を指導しているところもあり、それが望ましいことは言うまでもない。 |
参照判例 | ||
○ 大阪高判昭和58年7月19日(要旨) 買主が、売主である宅地建物取引業者から媒介業者の媒介で土地を買い受けたところ、当該土地に建築規制が存在していたために購入目的である建物の建築ができなくなった事案において、判例は、建築規制の説明義務は土地売買に付随する売主としての当然の義務であり、買主は売主(業者) に対し説明義務の不履行を理由として売買契約を解除し、損害賠償を請求することができるとともに、媒介業者に対し重要事項説明義務違反による不法行為により損害賠償を請求することができるのであって、両者はいわゆる「不真正連帯債務(注)」の関係にある。 |
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(注) |
たとえば、友人同士2人が賃貸マンションを借りたとする。この場合、2人には共同賃借という主観的関連があるので、このような主観的関連のある債務(この場合、「賃料債務」など)を「連帯債務」という。これに対し、本件の判例のような場合には、売主の損害賠償債務と媒介業者の損害賠償債務は偶然に発生したものに過ぎず、両者の間には主観的関連がない。このような主観的関連のない債務を「不真正連帯債務」といい、この2人の間には連帯債務者間にはある「負担部分」というものがなく、それを前提とする「求償権」もないので(民法第442条第1項)、それぞれが債務の全額を負担する責任が生じ、そのうえで当事者間で負担割合を話し合うことになる。 |
監修者のコメント | |
宅地建物取引業法の解釈については、所管課である国土交通省総合政策局不動産業課において定めている「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方について」に従うことになるが、そこでも触れられていない事項は、個別ケースごとに国交省または都道府県の業法所管課に照会・確認せざるを得ない。
本事案のような場合、注意しなければならないのは、相手方担当者が所管課の回答を誤解していたり、真実でないことを言うケースもあるので、その説明を鵜呑みにせずに、こちらからも確認することが必要である。 |