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売買事例 1310-B-0172掲載日:2013年10月
ウッドデッキの白蟻被害と瑕疵担保責任の有無
当社は、「ウッドデッキ付」の築25年の戸建住宅の売買を媒介したが、引渡し後、そのウッドデッキの土台部分に白蟻被害が発見された。買主は、これは「建物の瑕疵」だから、売主には瑕疵担保責任があると言うが、ウッドデッキは「建物」ではないので、瑕疵担保責任はないと思うが、どうか。そもそも、これは「経年劣化」によるものだから、売主には責任はないと思うが、どうか。
事実関係
当社は、先日下図のような「ウッドデッキ付」の築25年の戸建住宅の売買を媒介したが、物件の引渡し後、買主から、ウッドデッキの土台部分に白蟻が巣喰っているという苦情が入った。
買主の主張は、この物件は、広告で「ウッドデッキ付」ということだったので購入したのであるから、これは「建物の瑕疵」に当たり、売主はその損害を賠償すべきだというものである。
なお、本件の売買においては、土地建物に対する瑕疵担保責任の期間は3か月となっており、まだその期間は終了していない。
質問
- 「ウッドデッキ付」という広告をしたからといって、ウッドデッキそのものは「建物」ではないので、売主は瑕疵担保責任を負わないと思うが、どうか。
- 仮に白蟻被害があるにしても、ウッドデッキも25年経っているのであるから、土台に白蟻が巣喰っていても、それは「経年劣化」として、責任は生じないのではないか。
回答
1. | 結 論 | |
⑴ | 質問1.について ― 必ずしも瑕疵担保責任を負わないということにはならない。 | |
⑵ | 質問2.について ― 白蟻被害の程度によっては、瑕疵担保責任が生じる可能性がある。 | |
2. | 理 由 | |
⑴ | について | |
ウッドデッキが、建物本体と分離しているのであれば、ウッドデッキは原則として「建物」とはいえないので、その白蟻被害については、3か月以内に請求しなければならない瑕疵ということにはならないが、ウッドデッキが、建物本体と一体になっているのであれば(たとえば、建物本体の床材がウッドデッキの床材になっており、両者がその床材で構造的に繋がっているような場合)、「建物」ということになるので、そのウッドデッキの土台部分に巣喰っている白蟻被害は建物の「隠れた瑕疵」に当たるということが考えられるからである。 なお、本件のウッドデッキが、仮に建物本体と分離されたかたちになっていたとしても、ウッドデッキそのものは、建物と一緒に、その付帯の設備(動産)として売買の対象にされたわけであるから、その瑕疵(白蟻被害)の程度いかんによっては、売主は、民法第570条の規定により、その付帯設備(動産)の「隠れた瑕疵」に対し、責任を負うということになる。その場合の売主の瑕疵担保責任の期間が「建物」の場合と同じ「3か月」となるかどうかについては、特段の事情がない限り、建物と同じ「3か月」とみるのが素直な解釈であろう。 |
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⑵ | について | |
ウッドデッキも築後25年が経過しているのかどうかについては、本件の【事実関係】を見る限り、明確になってはいないが、いずれにしても、媒介業者が「ウッドデッキ付」ということで広告をし、買主がそれを見て購入したというのは事実であろうから、そのウッドデッキは、いわゆる「使えるもの」として市場に出され、「使えるもの」として取引されたとみることができる。とすれば、その「使えるもの」が「使えない」位に白蟻被害を受けているのであれば、いかに野ざらしになっているとはいえ、「瑕疵」があるということになるし、それほどでもないのであれば、その部分については、「経年劣化」ということで売主には責任がないということもあり得よう。 |
参照条文
○ | 民法第570条(売主の瑕疵担保責任) |
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。 |
監修者のコメント
本ケースの売買において「建物の瑕疵のみ責任を負う」との特約があれば別であるが、そうでない限り、ウッドデッキが建物かそうでないかは問題ではない。どちらにせよ、ウッドデッキも売買の対象だからである。本件での問題点は、回答のとおり白蟻被害が「隠れた瑕疵」に該当するかどうかで、やはり程度問題であろう。
なお、引渡し後、買主が何もしないのに発見したのであれば、売主が「知りながら告げなかった」可能性がある。
また、本件のような紛争を避けるためにも、告知書(物件状況報告書)の活用と免責特約の検討が必要と思われる。