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賃貸事例 1306-R-0118掲載日:2013年6月
事業用定期借地権の登記をする地主のメリット、デメリット
事業用定期借地契約の媒介をする際、地主から事業用定期借地権の登記をした場合の地主のメリット、デメリットは何かを必ず聞かれるが、うまく説明ができない。
ついては、それをわかりやすく説明するには、どのようなことを知っておく必要があるか。そもそも、事業用定期借地権の登記のメリットは、地主にあるのか、それとも借地人にあるのか。
事実関係
当社は媒介業者であるが、事業用定期借地契約の媒介にあたり、必ず地主から聞かれるのは、なぜ事業用定期借地権の登記をしなければならないのか、登記をすることによる地主のメリット、デメリットは何かを説明して欲しいということである。
質問
- 土地に、事業用定期借地権の登記をすることは、地主にメリットがあるのか、それとも借地人にメリットがあるのか。
- 地主に事業用定期借地権の登記をするメリットがあるとした場合、それはどのようなメリットか。
- 地主に事業用定期借地権の登記をした場合のデメリットがあるとしたら、それはどのようなデメリットか。
- 借地人は、通常借地上の建物の登記をし、借地権の第三者対抗要件を具備するが(借地借家法第10条)、もし借地人が建物の登記をし、地主が土地に事業用定期借地権の登記をしなかったら、地主にどのようなデメリットが生じるか。
- 事業用定期借地権の登記をする借地人のメリットというのは、どのようなものか。
回答
⑴ | 質問1.について ― 地主、借地人双方にメリットがあるが、強いて言えば、地主の方にメリットがある。 | |
⑵ | 質問2.について ― 地主は、借地上の建物が借地権付の建物として、売買等により第三者に譲渡されたり、競売等により第三者に所有権が移転しても、最終的にはその借地権が定期の借地権であることを、その譲受人や競落人等の第三者に対抗(主張)することができるので、その借地期間が満了すれば、土地が返ってくるということである。もちろん、その借地権が賃借権の場合には、地主はその賃借権の譲渡の承諾を拒否することもできる(民法第612条)が、それでも借地人から借地借家法第19条の「地主(借地権設定者)の承諾に代わる許可の裁判」が提起されたときは、譲渡が許可されることもあるので、そのような場合にも、最終的に登記の効力(第三者対抗力)によって、借地期間の満了時に土地の返還を求めることができるということである。 | |
⑶ | 質問3.について ― 基本的には、地主に事業用定期借地権の登記をした場合のデメリットはない。強いて言えば、登記費用がかかるということであるが、それも、地主、借地人双方のメリットを考えた場合、どちらが負担してもよいという問題である。 | |
⑷ | 質問4.について ― 地主には、基本的にデメリットは生じない。なぜならば、土地に対する事業用定期借地権の登記がなくても、借地人による借地借家法第10条の「建物の登記」がなされれば、地主(借地権設定者)も事業用定期借地権を第三者に対抗することができると解されているからである。 | |
⑸ | 質問5.について ― 事業用定期借地権の登記をした場合の借地人のメリットとしては、借地人の権利が公示されることにより、借地人が事業資金の融資を受ける際の担保の途が広がるということである。具体的には、通常の借地上建物への抵当権の登記のほかに、借地権が地上権の場合にはその地上権に抵当権を設定することもできるし、借地権が賃借権の場合には賃借権を質権や仮登記担保権、譲渡担保権などの目的にすることもできるからである。 |
参照条文
○ | 借地借家法法第10条(借地権の対抗力等) | |
① | 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。 | |
② | ~④ (略) |
監修者のコメント
借地借家法第10条の規定は、事業用借地権にも適用があるので、事業用借地権の第三者対抗力の問題としては、借地権自体の登記に大きな意義があるわけではない。しかし、回答のような結論も踏まえておくことが望ましい。
より詳しく学ぶための関連リンク
・“スコア”テキスト丸ごと公開! 「事業用定期借地」