不動産エバリュエーションWatching

(公財)不動産流通推進センター編集・発行(発売:(株)大成出版社)の月刊誌『不動産フォーラム21』では、表紙において、特徴のある既存建物の有効活用事例を取り上げています。ここでは、その内容を転載し、ご紹介致します。

2025年03月13日公開 

風通る、地域コミュニティの再編(2024年11月号)

表紙 サブ1 サブ2 サブ3 サブ4

まずは、建物に入れないほど鬱蒼とした草木の伐採からこのリノベーションは始まった。
仕事の合間を縫って数ヶ月かけて伐採すると、かつて大地主の家であった伝統様式の詰まった邸宅が現れた。
改修は、伝統様式の魅力を丁寧にできる限り残しながらの設計となった。補修する部分には既存と同素材を用い、既存を活かしながら金継ぎのように補修し、耐久性の高いフレキシブルボードを建具、壁、家具の新規部分のほとんどに使用し、温故知新を目指した。
土間に隣接した田の字で構成された畳間と、3つの続き間が廊下でつながれた構成はそのままに、現代の生活スタイルを挿入。水回りも元々あったところに納め、土間にはキッチンを備え、間取りをほとんど変えることなく、改修することができた。
改修後、補修された立派な玄関はあるものの、農家であったことから、元々この家に出入りしていた周辺住民は、土間の方から訪ねてきて、自然と井戸端会議の場となる場面もしばしば。オーストラリアから移住してきたご主人は、ドローンを活用した映像制作の会社を立ち上げ、地域をPRする動画の制作をしていたこともあり、日本における地域コミュニティには関心が高く、周辺住民とはよくお茶を出し会話をする。草木を取り払ったことで、この地に気持ちよく通る風のように、希薄になった集落のコミュニティに異文化の要素が加わり、新たなコミュニティが再編されるような気がしている。

敷地のある鹿児島県姶良市は県内の中心地である鹿児島市に車で30分程度であることから、近年、九州自動車道が開通したこともあり、ベッドタウンとして人口が増加し、特に鹿児島市内に通勤する20〜30歳台の子育て層が増え、それに伴い、駅や国道の周辺に住宅地が広がり、生活インフラ的量販店や、その世代が好む小さなカフェやショップが少しずつ増え、賑わいを見せている。
そのような開発が進み、街中が過密になり、便利になっていく一方で、隣接するその他のエリアの人口流出が加速し、そもそも徐々に過疎に向かっていたところに追い討ちをかけるような状況も生まれている。この敷地もそんな街中エリアから車で10分程離れた、田畑に囲まれた農家集落の中、道路から見ると人を拒絶するように草木が鬱蒼と生い茂った中に建っていた。築年数は70年程と古く、ここに夫婦と子供の3人の住まいをつくることとなった。


before

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plan

所 在 鹿児島県姶良市
築 年 月 1950年1月
構 造 木造
間 取 り 4LDK-D
リノベーション面積 225.82m2
施工期間 10ヶ月
設 計 PAAK DESIGN株式会社
施 工 株式会社江藤建設工業
外 構 株式会社桂造園
資料提供:株式会社 groove agent(ゼロリノベ)
「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2023」ディスカバー・リノベーション賞受賞作品(PAAK DESIGN株式会社)

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