不動産エバリュエーションWatching

(公財)不動産流通推進センター編集・発行(発売:(株)大成出版社)の月刊誌『不動産フォーラム21』では、表紙において、特徴のある既存建物の有効活用事例を取り上げています。ここでは、その内容を転載し、ご紹介致します。

2024年09月09日公開 

戻す家(2024年6月号)

表紙 サブ1 サブ2 サブ3 サブ4

新潟県長岡市、築125年の古民家改修。雪が残るある日、本物件と出会った。外部が激しく劣化しており、雪の重みで一部屋根が崩れ、まるで廃墟であった。中に入ると、古さの中にも気品がある力強い空間が広がる。元々、古民家を購入し改修を検討していたS様は「残すべき使命を感じた」と話す。これが「戻す家」の始まりだった。
改修前に建物を隈なく見て回った。土壁の土に、床に敷かれた古材、建物を支える立派な柱と梁。全てが貴重な財産に思えてくる。しかし、このままでは地震の恐怖や冬の寒さなどの不安が残る。「一度全て取って、耐震・断熱改修した後に戻しましょう」と伝えた。
土壁は叩いて壊し、土にして保存した。
床の古材はきれいに取り、丁寧に水洗いした。
構造の柱・梁は埃を払い、一本一本磨いていった。
改修が進む現場にはいつしか、S様夫婦の両家も参加し、壁に土を塗る共同作業が行われていた。労力が愛着に変わる、そんな瞬間であった。完成した空間は大きな吹き抜けと建物の歴史が共存している。耐震、断熱の改修も施し安心と快適を備えている。S様のご両親は改修後も、庭の手入れ、薪ストーブの薪の支給など毎週のように手を掛けてくれる。改修中の共同作業がとても嬉しそうだった。時が経ち、なかなか会えなくなった両親が、今度は会いに来てくれる。あの日に戻るような気持ちは、何にも代えがたいこの家の本当の価値ではないだろうか。


after

before

plan

所 在 新潟県長岡市
築 年 月 1898年1月
構 造 在来木造
リノベーション面積 182.40m2
施工期間 6ヶ月
設計施工 株式会社モリタ装芸
資料提供:株式会社モリタ装芸
「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2023」1500万以上部門最優秀賞受賞作品(株式会社モリタ装芸)

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