不動産エバリュエーションWatching

(公財)不動産流通推進センター編集・発行(発売:(株)大成出版社)の月刊誌『不動産フォーラム21』では、表紙において、特徴のある既存建物の有効活用事例を取り上げています。ここでは、その内容を転載し、ご紹介致します。

2024年04月18日公開 

時空を旅する洋館(2024年1月号)

表紙 サブ1 サブ2 サブ3 サブ4

施主様は、ヨーロッパ文化の研究を続ける中、ハーフティンバー様式の木造建築への憧れが募り、セカンドライフでは「歴史ある洋館に住みたい」というロマンを持つようになった。そしてついに出会えた憧れの洋館! それは東京に建つ大正時代の洋館。ハーフティンバー様式の外観に一目惚れしたものの、外も内も老朽化が激しく、居住する兵庫県に移築できるのか? その価値はあるのか? 夢も不安もいっぱいの状況で、弊社の古民家再生と伝統構法の経験に期待してくださったのが、この移築リノベーションの始まりだった。調査を進めた結果、米国カスケード山脈の材がヨーロッパに渡って建てられた洋館が、大正時代に日本へと輸入され、内部を和洋折衷にアレンジして建築されたことが判明。時空を旅してきたこの洋館のロマンある物語に、施主様は移築を決心された。

私たちは、施主様の憧れと情熱をカタチにするため、解体移築でのリノベーションと減築を提案した。建築を読み解いていくと見えてきたのは「残したいもの」と「変えたいもの」。木造建築「ハーフティンバー様式」の外観。風格ある玄関まわり。洋館特有のサンルーム2つ。大正ロマンを感じさせる木製の格子窓と建具たち。これらを残し、現存する材を出来る限り使いながら、洋館の価値を蘇らせた。梁・柱・建具は番付けして移築。瓦も再利用。内部は和洋折衷を払拭し、礼拝堂を設え、異人館のような西洋式へ。加えて、木製格子窓の内側にはアルミ製サッシ を取り付け、寒さを解消。水回りも充実させた。施主様の情熱は、困難を可能にし、夢を叶え、洋館は移築した神戸郊外のシンボル的存在となった。そして施主様は今、時空を旅する洋館とともに心の旅を続けている。
移築リノベーションは、建物の延命、土地の有効活用といったメリットだけでなく、環境の面でも価値ある建物を手に入れることができる。全てを残せないから、 全てを捨てるのではなく、残したいものを残していく。素材や構法、様式等、洋館のDNAを受け継いだこの移築リノベーションは、未来へ継承されるリノベーションの姿として、今後発展していくだろう。


after

before

plan

物件名称 時空を旅する洋館
所 在 兵庫県
築 年 月 1920年1月(移築建物)
構 造 木造戸建
リノベーション面積 140.46m2
施工期間 移築を含めて2年
設計施工 株式会社河原工房
資料提供:株式会社河原工房
「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2022」」ヘリテージ・リノベーション賞受賞作品(株式会社河原工房)

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