不動産エバリュエーションWatching

(公財)不動産流通推進センター編集・発行(発売:(株)大成出版社)の月刊誌『不動産フォーラム21』では、表紙において、特徴のある既存建物の有効活用事例を取り上げています。ここでは、その内容を転載し、ご紹介致します。

2023年10月16日公開 

Mid-Century House|消えゆく沖縄外人住宅の再生(2023年8月号)

表紙 サブ1 サブ2 サブ3 サブ4

1950年代後半から1960年代にかけて、沖縄では米軍のために12,000戸ほどの戸建て住宅が民間の手により供給されました。それらの住宅は「外人住宅」と呼ばれて親しまれています。しかし建設から半世紀以上が経過し、一部はショップ等として活用されるものの、いま解体や建替えが急速に進んでいます。本計画は外人住宅を現代に通用する住まいとしてリノベーションし、その再生のモデルとなることを目指した計画です。
外人住宅は米本国の一般市民の住生活様式を基本にしており、当時の沖縄は元より日本本土の一般的な住宅と比較して、構造および床面積、そして間取りや設備において先進的な住まいであったと想像できます。一方で勾配が小さくフラットな屋根と、地面からの段差が小さい床スラブは、高温多湿の沖縄に決して適しているとは言えない構造でもありました。そして、建築後半世紀を過ぎた電気や水まわり設備は完全に時代遅れになっています。いっそ解体してしまおう。この住宅もそう考えても仕方ない状況でした。
今回のリノベーションでは、さらに50年、すなわち築100年まで通用する住宅を目指しました。
建物は欠損した躯体コンクリートを補修し、特殊な繊維シートでコーティングしています。 また、漏電の心配がある古い電気配線、給排水とガス配管も全て刷新しました。一方で、間取りは現代に通用するとしてほとんど改変せず、内装もシンプルに仕上げています。インテリアは建築当時のミッドセンチュリーを意識した名作の家具(レプリカを含む)を集めてコーディネートしました。
本住宅は「住まい」であると同時に、「民泊」および「撮影用のハウススタジオ」としても活用する予定です。これまで外人住宅が建築遺産として公に高い評価を受けてきたとは言えません。しかし今、沖縄に残る貴重な近代建築として正当な評価 をすべきなのではないでしょうか。外人住宅が安易に解体されていく状況に警鐘を鳴らすとともに、本計画が他の外人住宅再生のモデルケースになれば幸いです。


after

before

plan

物件名称 Mid-Century House YOGI
所 在 沖縄市与儀
築 年 月 1967年11月
構 造 鉄筋コンクリートブロック造 陸屋根
リノベーション面積 102.87m2
施工期間 約6ヶ月
設計施工 株式会社アートアンドクラフト
資料提供:株式会社アートアンドクラフト
「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2022」」ローカルレガシー・リノベーション賞受賞作品(株式会社アートアンドクラフト)

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