不動産エバリュエーションWatching

(公財)不動産流通推進センター編集・発行(発売:(株)大成出版社)の月刊誌『不動産フォーラム21』では、表紙において、特徴のある既存建物の有効活用事例を取り上げています。ここでは、その内容を転載し、ご紹介致します。

2019年04月19日公開 

世田谷野毛の家(2019年4月号)

表紙 サブ1 サブ2
27年前に販売された都心近郊の住宅地に建つ、木造在来工法2階建て地下RC車庫付の家を(株)リビタが取得し、リノベーションした上で再販売したプロジェクト。このころ建てられた一戸建ての多くは、大量生産を目的に工業化・企画化されており、そのほとんどは築20年を超えると建物価値(評価)がゼロになるとも言われる。この家は、ある意味その典型であると感じさせられるものであった。

リノベーションにあたり立てた方針は、「構造安全性と環境性能が確保された丈夫なハコと、手を入れる余地を残したシンプルで可変性の高い住まい」を実現すること。デザインについては、企画化され個性が隠されたままであった建物の特性を丁寧に紐解き、今日の住まい手の視点に立ちながら、永く住み継がれるものとして新たな価値を生み出すことにも挑戦しようと考えた。 また、内装解体から改修工事完了までのプロセスにおいて、様々な現地イベントを企画。建物の劣化部位などを実際に見ながら行う解体後建物見学会やセミナー、誰でも気軽に参加できるDIYワークショップ体験付竣工見学会など、広く住まいづくりを検討しているエンドユーザー向けの発信を行った。

改修後の建物は、スキップフロアという既存の構成を活かしながら、階段周りに吹き抜けをとり、浴室・主寝室・地下室をガラス張りとすることで、6層の床のつながりを多くの場所から把握できるようにした。また、家の中心に設けた浴室は、FRP防水の白い仕上げとすることで、テラスに面した窓から家中に光を拡散する。部屋の壁には構造用合板を採用し、住みながら自分で好きなところに棚などを付けられるようにすることで、住まいの編集性向上も図った。 この家を購入したご夫婦は、家を自らの暮らしの場、自らの資産と考えることはもちろん、次世代へ引き継ぐべき社会資産としても捉え、共感を得たことも購入の一因となった。

引渡し前には、入居者も一緒に無垢フローリングと壁の塗装ワークショップを実施したり、ライフスタイルに合わせた編集を加えたりした。それらを通じてこれから先も建物を育て、楽しみながらメンテナンスし続けられる、意識・知識・能力を引き上げることを試みている。

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物件名称世田谷野毛の家
所  在東京都世田谷区野毛2丁目
間  取 木造軸組在来工法一部鉄筋コンクート造・地下1階付2階建て
土地面積130.97m2(20.89坪)
建物面積133.97m2(20.89坪)
主要用途住宅
築 年 月1986年3月
リノベーション
竣工
2013年9月
「リノベーション・オブ・ザイヤー2014」総合グランプリ受賞作品(株式会社リビタ)

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