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売買事例 0802-B-0056掲載日:2008年2月
転売時の手付金を、購入時の手付金に充当することの可否
宅建業者である当社が、一般の企業から土地を購入し、同時に他の企業に転売することを計画している。この場合、転売する企業から受領する手付金を、購入時の手付金に充当する売買契約を締結しても問題ないか。
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当社は、宅地建物取引業者であるが、このたびある一般の企業から土地を購入し、同時に、ある大手企業に転売することを計画している。 なぜならば、当社には資金がないが、転売先には資金があるので、その転売先から受け取る手付金を購入時の手付金に充当したいと考えているからである。 |
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1. |
今回の土地購入時の契約で、業者が手付金をあとから支払うという行為は、業法第47条第3号との関係で、業者自らに信用を供与することにより、不当に契約の締結を誘引するという行為にならないか。 |
2. |
そもそも、手付金をあとから払うという売買契約は、法律的に有効なのか。 |
3. |
本件の転売行為は、土地の取得契約と「同時に転売する」といっても、両契約の間には多少のタイムラグが生じるので、業法第33条の2で制限されている「他人物売買」に該当すると思うが、どうか。 |
4. |
今回の転売において授受される手付金の額は、1,000万円を超えるが、売買代金の10%以下である。このような場合にも、手付金等の保全措置は必要なのか。 |
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回答 |
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1. |
結論 |
(1) |
質問1.について — 業法第47条第3号との関係においては、同条で禁止している「不当な契約締結の誘引行為」には該当しないと考えられる。 |
(2) |
質問2.について — 有効である。 |
(3) |
質問3.について — 「他人物売買」ではあるが、土地の取得契約が先行しているので、業法上の制限を受ける他人物売買にはならないと考えられる。 |
(4) |
質問4.について — 保全措置は必要である。 |
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2. |
理由 (1)について |
業法第47条第3号において禁止している行為というのは、業者が売主あるいはその代理・媒介をする場合で、売主である業者が、あるいはその代理・媒介をする業者が、買主に対し、あるいはその代理・媒介をする業者等に対し、手付を貸付けたり、分割払いや後払い、あるいは手形等による支払いの約束をするといった信用の供与をすることにより、契約の締結を誘引する行為を禁止しているのである。 したがって、本件の土地取得時の契約は、業者が売主あるいはその代理・媒介をする場合ではなく、買主になっている場合であるので、本条の適用はないと考えるべきである。 |
(2)について |
売買契約は、「諾成契約」であり、売主と買主の意思表示の合致だけで成立する。したがって、契約の成立には、「手付金」の授受といった要物性は要求されていない。 にもかかわらず、通常の契約において、「手付金」を授受することが多く、その意味において、手付金の授受が慣行化しているといっても過言ではない。
したがって、本件のように、手付金をあとから支払うといった「手付契約」の予約が成立してもおかしくはないが、法的には、「手付契約」と「売買契約」とは別個の契約であるから、売買契約において手付金が支払われないからといって、売買契約そのものが成立しないということではない。 |
(3)について |
業法第33条の2で制限をしている「他人物売買」は、業者が売主となり、業者以外の者が買主となる場合の他人物売買であるから(業法第78条第2項)、本件の転売契約は、まさしく業法が制限をしている他人物売買に該当するように見える。 しかし、本件の他人物売買が、業法の規制を受ける他人物売買であるか否かについては、転売者である業者が、その転売する土地について、(先に)「取得する契約」を締結していれば、適用除外となるので、本件のように転売契約の締結前に、取得する契約が先行している場合には、何ら業法上の規制を受けない取引ということになる(業法第33条の2第1号)。 |
(4)について |
手付金等の保全措置は、本件のような完成物件の場合には、売買代金の10%を超えるか、1,000万円を超える場合(どちらかが超える場合)には、講じなければならないとされている(業法第41条の2第1項)。 したがって、本件の場合には、保全措置が必要である。
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参照条文 |
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○ |
宅地建物取引業法第47条(業務に関する禁止事項) |
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宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次の各号に掲げる行為をしてはならない。 一、二 (略) 三 手付けについて貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為 |
○ |
宅地建物取引業法第78条(適用の除外) |
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(1) |
(略) |
(2) |
第33条の2及び第37条の2から第43条までの規定は、宅地建物取引業者間の取引については、適用しない。 |
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○ |
宅地建物取引業法第33条の2(自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限) 宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。 |
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一. |
宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているときその他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令で定めるとき。 |
二. |
(略) |
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○ |
宅地建物取引業法第41条の2(手付金等の保全) 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買(中略)に関しては、(中略)又は次の各号に掲げる措置をいずれも講じた後でなければ、買主から手付金等を受領してはならない。ただし、(中略)手付金等の額(中略)が代金の額の10分の1以下であり、かつ、(中略)政令で定める額(1,000万円)以下であるときは、この限りでない。 |
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【回答】のように、手付金は契約の成立に必要な要素ではない。手付金のない売買契約も問題なく有効に成立する。また、手付金をいつ支払うのかも契約自由の原則の範疇の問題であって、当事者の合意で自由に決定できる。
ただ、手付金の授受についての合意すなわち手付金契約は、要物契約であって、現実の交付がなされてはじめて成立する。したがって、たとえば手付金を100万円と合意しても、とりあえず50万円を支払うというのであれば、手付金として成立するのは50万円のみである。
宅建業法との関係は、【回答】のとおりである。 |
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