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売買事例 0802-B-0054
中古マンションの売買に伴う修繕積立金の清算の是非

中古マンションの購入希望者から、「修繕積立金は、売主の既積立分が一旦売主に返還され、その返還分を買主が負担するというようなことになるのではないか」と質問された。どのように答えたらよいか。

事実関係
 当社は、媒介業者であるが、このたび中古マンションの売買の媒介にあたり、管理組合の理事長から、管理組合には多額の積立金があり、近々修繕計画が実施されると知らされた。
 そこで、買主に対し、「このマンションは古いが、組合には多額の修繕積立金があり、近々修繕計画が実施されるので、外壁の塗装や設備を更新すれば、見違えるようになる。」と伝え、購入を勧めた。

 すると、買主から、「マンションの修繕積立金は、売主が組合から脱退することに伴い、売主が今まで積み立てた分は一旦本人(売主)に返却され、再度自分(買主)がその積立分を支払うことになるのではないか。」という質問がなされた。

 今までそのような質問をされたことがなかったので、念のため、そのことを管理組合に問い合せたところ、理事長は、「規約で、本人(売主)には返還しないことになっている。」というだけで、なぜそうなっているのかについての理由はわからないという。
質問
なぜ、そのような規約になっているのか。一旦、清算する方が正しいと思うが、どうか。
回答
 
1. 結論
 規約で「返還しない。」としているのは、一旦納入された修繕積立金は、以後、「組合財産」として管理するという、当然のことを宣言しているものと考えられる(民法第668条、第676条第2項)。したがって、売主は、区分所有者になった時から、その団体性維持のための制約には従わざるを得ないということになり、その意味において、売主・買主間で清算するのは正しくないということになる。
2. 理由
(1)  マンションの管理費や修繕積立金は、管理組合の安定的な維持・運営のために欠かすことのできない財産である。したがって、この重要な財産を、マンションの住戸を売却するたびに個別に清算をしていたのでは、管理組合の財務・経理が煩瑣になるだけで、安定した組合運営をしていくための障害になることから、組合財産については、法的にも特別な性質が付与されており、そのために、規約にあるように「一旦納入された管理費等は返還しない。」としておいた方が、迅速かつ合理的に運営することができるということになることから、念のため、多くの管理組合がそのような条項を定めているものと考えられる。
(2)  なお、組合は、数人が共同して事業を営むことを目的とする団体であることから、その「組合財産」は、この団体の目的を実現するために存在する一種の「団体財産」であり、「目的財産」であると解されている(後記【参照判例】参照)。したがって、組合財産については、上記のような法的性質から、後記【参照条文】にあるような通常の共有財産とは異なった性質が付与されている(後記【参照条文】参照)。
 
参照判例
 
○  大判昭和7年12月10日民集11巻2313頁(要旨)
 組合財産は、普通の共有と性質を異にし、組合の共同目的を達するために結合した一種の団体財産としての組性質を有する。
○  大判昭和11年2月25日民集15巻281頁(要旨)
 組合財産は、組合の事業経営という特定の目的のために各組合員個人の他の財産と独立に一団をなして存在する特別財産ないし目的財産であり、各組合員の私有財産と混同されることはない。
 
参照条文
 
○  民法第668条(組合財産の共有)
各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。
○  民法第676条(組合員の持分の処分及び組合財産の分割)
(1) 組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。
  (2) 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。
 
監修者のコメント
 マンションの修繕積立金は、管理費と同様に、区分所有者としての義務に基づき支払ったものであり、一旦管理組合に納入された後は、管理組合の財産となり、個々の区分所有者は、管理組合が解散されない限り、支払額について個別の返還債権ないし持分債権を有するものではない。したがって、規約で「返還する」と決めているときは、その規約どおりの効力が認められるが、そのような特別の取り決めがない限り、区分所有者でなくなった者に返還する必要は全くない。本事案の「返還しない」との規約の定めは、当然のことを念のため明示したにすぎない。
 もし、ご質問にあるように、一旦売主に返還され、買主がその返還分を支払うというものであれば、買主のその負担額は、宅建業法第35条の重要事項説明の対象としなければならない筈である。しかし、宅建業法35条を受けた同法施行規則第16条の2は、修繕積立金に関する規約の定め、すなわち月々の費用及びマンション全体の既積立額を重説の対象としており、マンション売買が行われたときの清算などは想定していない。

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