不動産相談

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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売買事例 1704-B-0227
不動産の親族間売買における留意点

 祖母が所有している自宅を孫の配偶者が購入したいとの相談を受けているが、通常どおりの媒介をしていいか。

事実関係

 当社は、不動産の媒介業者である。祖父が数年前に亡くなり、現在は、祖母名義の自宅に祖母が一人住まいをしている。当社は、その自宅不動産の売却の仲介を孫娘の配偶者から依頼されている。祖母は高齢で、近々、有料老人ホームに入所する予定である。祖母は、入所資金確保のために自宅不動産の売却を考えていたが、祖母が自宅を手放すことを聞いた孫娘夫婦が、その不動産の購入を決意したとのこと。孫娘は最近結婚し、新居を探していたという。
 親族間での不動産売買になるが、祖母としても孫娘に大きな負担をかけたくないということで、できるだけ安く譲渡したいと考えているようだ。
 孫娘の配偶者と話をしたところ、祖母と直接売買契約を締結することも考えたが、お金の支払は第三者を介してきっちりしておきたいとのこと。資金計画では、自己資金と住宅ローンの利用を予定している。

質 問

1.  親族に居住用の不動産を譲渡する場合、譲渡価額が恣意的になることもあると思う。低額譲渡とされたときには贈与税が課税されると聞いているが、低額譲渡になるかどうかの基準はあるのか。
2.  そもそも、別世帯に住んでいる孫の配偶者への居住用不動産の譲渡は、居住用財産の特例控除(3,000万円)を受けられるか。
3.  親族間売買で、価額以外に注意しなければならないことは何か。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 相続税評価額が基準の1つとされる。相続税評価額が時価相当と認められ、低額譲渡にはあたらないとした判例があるが、認められない場合もある。
 質問2.について ― 孫娘の配偶者は、租税特別措置法及び同施行令の「特別の関係がある者」には該当しない。
 質問3.について ― 住宅ローンの利用ができない場合があるなど、いくつかの留意点がある。
2.  理 由
について
 個人間で不動産を低額で売買した場合、「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、(中略)時価との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなす」(相続税法第7条)として、贈与税が課税されることがある。同法では、譲渡価格が時価に比較し、「低い価格」ではなく、「著しく低い価額」と規定している。
 ただし、税法では時価に関する定義は設けていないが、財産評価基本通達によれば、市街地においては路線価によって評価するとなっている。
 判例では、時価を、客観的交換価値である、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に、財産の現況、取引価額の決まり方等を勘案して、社会通念に従い、通常成立すると認められる価額と認定している。
 そして、相続税評価額(路線価)を「相続税評価額と同程度の価額かそれ以上の価額の対価によって譲渡が行われた場合、相続税法第7条にいう著しく低い価額の対価とはいえない」とした。しかし、何らかの事情により相続税評価額が時価の80%を下回っている場合は、「著しく低い価額」による譲渡になりうることがある(【参照判例】参照)。全ての譲渡で相続税評価額が是認されるとは限らないことを留意しておきたい。
 親族間の譲渡の際には、次項以下の問題もあるため、譲渡対象者並びに価額ともに、税務署又は税の専門家に確認しておくことが必要であろう。
について
 居住用財産の特例控除が受けられない者は、税法上では「政令で定める特別の関係がある者」と規定され、該当するのは、配偶者及び直系血族、個人と生計を一にしている親族、及び事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしているものなどである(租税特別措置法施行令第20条の3)。
 本事例での孫娘は直系血族ではあるが、別世帯に居住しており、孫の配偶者は、生計を一にしていないので税法での「特別の関係がある者」には該当しない。
について
 親族間売買において次の点に留意する必要がある。
ⅰ)  譲受人が住宅ローンの利用を希望しても、金融機関によっては、恣意的な融資、ローン事故や不正売買等の防御のため、融資が受けられない場合がある。ただし、親族間売買に至る背景や事情、物件等に問題がなければ、融資が可能である金融機関も多い。金融機関としては、重要事項説明書(物件内容)や売買契約書等を審査するため、仲介業者が介在するほうが、融資しやすいと考えられる。
ⅱ)  譲渡者は、譲渡所得税が課税される場合がある。なお、譲受人が「特別の関係がある者」に該当する場合、居住用不動産の特別控除が適用されず、多額の譲渡所得税が課税されることとなる(租税特別措置法第31条の3、租税特別措置法施行令第23条の3、同施行令第23条)。
ⅲ)  親族間が直接譲渡契約すると、当事者の契約条件や物件内容の理解に齟齬が発生したり、代金の支払いを巡ってのトラブルになることがある。

参照条文

 相続税法第7条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第3章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
 同法第9条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
 第5条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
 租税特別措置法第31条の3(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)
 個人が、その有する土地等又は建物等でその年1月1日において第31条第2項に規定する所有期間が10年を超えるもののうち居住用財産に該当するものの譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの及び所得税法第58条の規定又は前条、第33条から第33条の3まで、第36条の2、第36条の5、第37条、第37条の4、第37条の5(同条第5項を除く。)、第37条の6、第37条の7、第37条の9の四若しくは第37条の9の五の規定の適用を受けるものを除く。以下この条において同じ。)をした場合(当該個人がその年の前年又は前々年において既にこの項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、当該譲渡による譲渡所得については、第31条第1項前段の規定により当該譲渡に係る課税長期譲渡所得金額に対し課する所得税の額は、同項前段の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額に相当する額とする。
・二 (略)
〜④ (略)
 租税特別措置法施行令第20条の3(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)
 法第31条の3第1項に規定する当該個人と政令で定める特別の関係がある者は、次に掲げる者とする。
 当該個人の配偶者及び直系血族
 当該個人の親族(前号に掲げる者を除く。以下この号において同じ。)で当該個人と生計を一にしているもの及び当該個人の親族で次項に規定する家屋の譲渡がされた後当該個人と当該家屋に居住をするもの
 当該個人と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの
 前3号に掲げる者及び当該個人の使用人以外の者で当該個人から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持しているもの及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの
 当該個人、当該個人の第1号及び第2号に掲げる親族、当該個人の使用人若しくはその使用人の親族でその使用人と生計を一にしているもの又は当該個人に係る前2号に掲げる者を判定の基礎となる所得税法第2条第1項第8号の二に規定する株主等とした場合に法人税法施行令第4条第2項に規定する特殊の関係その他これに準ずる関係のあることとなる会社その他の法人
 (略)
 同施行令第23条(居住用財産の譲渡所得の特別控除)
 第20条の3第2項の規定は、法第35条第1項に規定する政令で定める家屋について準用する。
 法第35条第1項に規定する当該個人と政令で定める特別の関係がある者は、第20条の3第1項各号に掲げる者とする。

参照判例

 東京地裁平成19年8月23日判タ1264号184頁(要旨)
 相続税評価額が時価の80%の水準よりも低いことが明らかであるといえるような特別の事情は認められないから、相続税評価額と同程度の価額かそれ以上の価額の対価によって譲渡が行われた場合、相続税法第7条にいう著しく低い価額の対価とはいえないということができる。例外として、何らかの事情により当該土地の相続税評価額が時価の80%よりも低くなっており、それが明らかであると認められる場合に限って、著しく低い価額の対価による譲渡になりうると解すべきである。

監修者のコメント

 親族間売買における注意点としては、売買価額の設定その他回答に付け加えるべきことはないが、売買に当たり、他の親族の同意を取っておくことが望ましい。売買代金が少し相場より安い場合はもちろん、適正価額であっても、不動産が散逸しやすい金銭に変わるのであるから、売主の法定相続人にとっては利害関係がある。質問のケースの祖母の法定相続人が孫娘だけであるならよいが、孫娘の配偶者は、もともとは他人であるから、祖母の法定相続人が、あとで問題にし、紛争になることもある。祖母が売るというのだから問題ないと考え、他の親族に言わないで進めることは避けることである。

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