担当取引士乙の調査結果から、次の事象が顕在化しており、対象不動産には軟弱地盤リスクが予見される。
担当取引士乙調査果による顕在化している事象
① 対象不動産の西方約150mに北から南に流れる河川(都道府県が管理する二級河川)に近い。
② 対象不動産の一帯は、元々は、河川が蛇行する湿地帯の埋立地である。
③ 対象不動産に旧法定外公共物である水路が存する。
④ 建物の基礎の一部に亀裂があり、内壁のクラック、ドアの取付けの歪み等が顕在化している。
⑤ 空き工場のコンクリート床にクラックがあり、駐車場部分の簡易アスファルト舗装は、全体的に緩やかなうねりがみられる。
軟弱地盤が予見される場合、そのリスクの調査については、取引士自ら行う調査と専門業 者に発注する調査がある。
① 取引士が自ら行う調査
ア.現地の調査
イ.土地条件図(国土地理院発行)の調査(『宅建マイスターテキスト』P270参照)
・対象不動産は、「盛土地・埋立地」(土地条件図の赤斜線部分)に位置していないか。
盛土地・埋立地は、低地に土を盛って造成した平坦地や、水部を埋めた平坦地。
・対象不動産は、「後背低地」(土地条件図の緑色の部分)に位置していないか。
後背低地は、河川の堆積作用が比較的及ばない低湿地で水はけが悪い。
・対象不動産は、「旧河道」(土地条件図の蛇行した帯状の濃い緑色の部分)に近く、地盤が軟弱なエリアであることが見てとれる。
旧河道は、低地の中で周囲より低い帯状の凹地で、過去の河川流路の跡。
ウ.地形図・旧住宅地図・古地図等による調査
・地形図で、現在の道路、河川、旧河道等との位置関係を把握できる。また、旧版 の地形図との比較により土地利用の変化(埋立て・盛土等)を調査することができる。
・旧住宅地図・土地図により、以前の土地利用状況が確認できる。
・国立研究開発法人農業環境技術研究所が開示している「迅速測図」は明治時代初期から中期にかけて関東地方を対象に作成された簡易な地図で、当時の土地利用が分かるとともに地形図と対比することもでき、地盤の判断に有益である。
エ.ハザードマップ(洪水・液状化・津波)による調査(『宅建マイスターテキスト』P282参照)
国土交通省、各市町村のWEBページから入手することが可能で、洪水、土砂災害、津波の被害予測を調査する。
オ.地盤調査データ(地盤図(柱状図))の入手
国土交通省ホームページの「宅地防災」に開示されている地盤情報データベース、民間各社の地盤情報の提供ホームページから、地盤に関する情報を入手することがで
きる。
カ.造成計画図(盛土と切土の範囲と深さを示した切盛図の調査(『宅建マイスターテキスト』P274参照)
② 専門業者に発注する調査(『宅建マイスターテキスト』P275参照)
① 軟弱地盤の対策
ア 建物の基礎の構造方法の選択
・『宅建マイスターテキスト』P. 276(3)④の軟弱地盤リスクへの対応アに記載の通り、地盤により基礎の構造方法の選択肢が決まる。
イ 地盤の改良の必要性
・『宅建マイスターテキスト』P. 276(3)④の軟弱地盤リスクへの対応イに記載の通り、建物の自重と地盤の強弱により地盤改良を必要とする場合がある。
② 軟弱地盤リスクに対処した説明
軟弱地盤である土地の取引に当たっては、軟弱地盤であることによる土地利用のリスク、費用の発生等を明確に示し「本件土地は軟弱地盤であり、建物の基礎の構造方法が限定されること、及び地盤改良工事を必要とすることから、これらの費用が発生する」旨説明することが必要である。