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不動産コンサルティングに関わる海外調査報告

平成24年は、不動産コンサルティング技能登録制度発足20年の節目の年にあたり、これを機に名称を「公認不動産コンサルティングマスター」へ変更し、受験資格の拡大、更新制度の見直し等を行いました。
同時に世界各国の不動産コンサルティング事情、教育制度の実態についての最新情報の蓄積を図り、今後の我が国の不動産コンサルティングの発展に向け、当センターに求められる役割を展望したいと考え、「不動産コンサルティングに関わる海外調査」を行うこととしました。
文献による調査を踏まえ、平成25年1月~3月には海外現地調査を実施し、6月半ばに報告書を公表しました。
その調査報告の場として、スペシャリティ講座(当センター)及び総合報告会(不動産コンサルティング中央協議会主催)を開催することに致しました。

◆スペシャリティ講座 第一弾 開催報告◆
不動産コンサルティングに関わる海外調査①
アジアの不動産取引事情

7月25日(木)に東京の全水道会館においてその第一弾を開催いたしました。

本講座では、海外調査でもアジア地域を担当された 前・国土交通政策研究所長の周藤利一氏を講師に招き、成長著しいアジアの不動産事情を、多数の写真データ等を織り込みながら解説して頂きました。

スペシャリティ講座 スペシャリティ講座

主に取り上げたのは、中国、台湾、香港、シンガポール、韓国
1.不動産に関わる法体系
2.不動産取引業のしくみや現状
3.不動産市場の特性と動向
4.不動産取引業者、取引きを行う資格制度、試験
5.現地の写真
・・・等、項目ごと各国の特色が紹介されました。
高層マンションや商業施設の建設ラッシュで、発展しつつあるアジアの現状を現地調査ならではの臨場感でお話して頂きました。

また、ミャンマーとカンボジアについては、今回現地調査は行っていないものの、これから目をはなせない国としてご紹介がありました。特にミャンマー南部のダウェーは経済特区として開発が進みつつあり、その開発には日本も関与を検討中とのこと、今後不動産市場に名乗りをあげる都市であることも予想されます。

海外の不動産事情を知ることは、マスターとしての見識を高めるとともに、海外投資を検討するクライアントに向けてビジネスチャンスの機会を広げる第一歩と言えます。
今後も9月に第二弾、10月に第三弾の講座を予定しておりますので、特に海外不動産市場にご関心のある皆様は是非ご参加ください。

◆スペシャリティ講座 第二弾 開催報告◆
不動産コンサルティングに関わる海外調査②
欧米3カ国の不動産の今!

9月11日(水)に第一弾と同じく東京・全水道会館で実施いたしました。

今回は、海外調査で、欧米を担当された篠原 二三夫氏(株式会社ニッセイ基礎研究所 社会研究部 上席研究員 土地・住宅政策室長)を講師に、リーマンショックから立ち直り、活発な不動産投資が行われている欧米3カ国に関し、公認 不動産コンサルティングマスターとして知っておきたい海外不動産投資と各国の取引状況について解説をしていただきました。

スペシャリティ講座 スペシャリティ講座

講座の内容
1.海外不動産投資のリスク対応とメリット
2.各国・都市の一般指標の見方
3.各国・都市の不動産市場の見方
4.写真等による各国不動産市場の紹介
5.各国の不動産流通市場の制度や慣習

欧米3カ国では、非居住者(外国人)が不動産を購入することに対して、制度等における高い障壁はないとのこと。
しかし、当然のことながら為替リスク・金融市場リスク・税制改正リスク等の投資リスクがあります。それでも我が国がデフレにある現在、海外に目を向ける投資家も多く、分散投資等をしながら、これらの国々の市場に参加するメリットはあるということです。
アメリカは一時低迷した持ち家率も上昇し、現在は活発な不動産取引が行われています。MLS(マルチプルリスティングサービス)という不動産情報開示システムが確立され、さらに州制度と業界倫理規定に基づく不動産仲介業が社会的地位を持って存在していることは、特筆すべき点です。中でもNAR(全米リアルター協会)の会員であるリアルターはステイタスを有し、国際投資においても信頼されるものとなっています。
イギリスは、長期のリースホールド(借地権)が普及しています。都市部は住宅供給不足により価格は上昇傾向。不動産取引には、不動産会社のほか、住宅調査機関や弁護士といった専門家が、契約成立の安全と円滑化を図っています。不動産コンサルティングという点では、大手コンサルタント、不動産投資顧問業やアドバイザーが数多く存在し、国際的なネットワークを形成、不動産投資の実績を有しています。
ドイツは持ち家率が低く、多くの国民が借家に住んでいます。都市部を中心に賃貸住宅投資が盛んであり、内外からの投資需要は多いそうです。不動産の契約においては公証人制度が確立し、不動産仲介業者はむしろ顧客へのコンサルティングとして優れた物件や運用方法のアドバイスを行っています。
各国によって不動産事情や、不動産流通における専門家の役割が特徴的であることを理解することができました。

海外調査報告の最後を飾る総括編、「討論!海外の不動産事情から日本の現状を読む!」を10月4日(金)に開催します。新しい試みとして3名の講師によるパネルディスカッションを行います。アベノミクスの進展やオリンピックの開催など、多くの投資家が日本の市場に注目している中、盛んな取引が行われている海外の不動産業市場と同様に日本の不動産コンサルティングの分野が担う役割は拡大していきます。そんな不動産コンサルティングの発展に向けた討論を是非ご聴講ください。

  

◆不動産コンサルティング中央協議会主催◆
不動産コンサルティングに関わる海外調査総合報告会
討論!海外の不動産事情から日本の現状を読む!

10月4日(金)東京・全水道会館で実施いたしました。

海外調査報告の最終回にふさわしく、調査に携わった先生方にお集まりいただき、パネルディスカッションを行いました。多くの受講者の皆様がご参加くださり有意義な報告会となりました。

スペシャリティ講座 スペシャリティ講座

報告会の内容

1.基調講演 「海外調査報告の概要と不動産コンサルティングビジネスについて」
   中城 康彦先生(明海大学不動産学部教授 ・ 学部長 ・ 一級建築士 ・ 不動産鑑定士)
日本の不動産=土地という概念と各国の不動産概念の相違や、売買取引の仕組み、不動産コンサルティングに関わる専門家との連携の違いを解説した後、海外の事例をあげながら、日本の不動産コンサルティングビジネスの切り口はどうあるべきかとのお話がありました。
その切り口とは、以下のキーワードに象徴されます。
 ① 状況を把握すること「Clear」→インスペクション、サーベイング
 ② 価値を作ること「Create」→コンバージョン、プロパティマネジメント
 ③ やりくりすること「Manage」→リバースモーゲージ
つまり、“あるものを動かす”流通業と違い、“ないものを創る”のがコンサルティングであり、既成概念にとらわれない発想が今後の不動産コンサルティングの発展において必要ということでした。

2.「不動産コンサルティングビジネスの現状:アジア統括」
  周藤 利一先生(東京ガス株式会社顧問 ・ 前・国土交通政策研究所長)
「不動産コンサルティングビジネスの現状:欧米3カ国統括」
  篠原 二三夫先生(株式会社ニッセイ基礎研究所 社外研究部 上席研究員 土地・住宅政策室長)
既に海外調査報告の講座をご担当いただいた両先生から「海外調査報告書ダイジェスト版」をテキストとして、凝縮した内容で解説をしていただきました。

3.先生方によるパネルディスカッション
各国との比較から今後の不動産コンサルティングの発展に向けて

海外から見た日本の不動産市場の問題点は「不動産物件の指標に透明性がないこと」であり、その点で国際的な位置付けは低い。投資の観点から物件を見極めるために必要な性能保証ともいえる明確なデータの開示が、現在の日本の不動産取引には欠けており、課題である。ただしそのためには物件情報を標準化する等のインフラ整備は必要となってくる。
アメリカやイギリスなど、海外の不動産業界では教育制度が充実しており、ブラッシュアップをしていることから、日本の不動産業者が対等な取引を行ってゆくためには、海外の制度や慣習を理解することが重要である。
長期的な投資として不動産投資を顧客にアドバイスするのは、まさに公認 不動産コンサルティングマスターが適任であり、不動産の価値・価格というものをはっきりと示せること、そして災害等を含め安心・安全な不動産の情報提供ができることこそが求められる 等、のご発言がありました。

推進センターでは、今後も公認 不動産コンサルティングマスターの皆様に向けて、「海外との関わり」を重要なテーマとして取り上げていく予定です。

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