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対象不動産に関する
担当取引士山田くんの調査報告

1 対象不動産と近隣の状況

 対象不動産の立地概況

① 対象不動産は、東京都Ⅹ市○○町に所在し、JR○○線A駅の南方、直線で約1㎞、徒歩約15分に位置する。

② 地勢は、緩やかな南西傾斜で、対象不動産の西方約150mに北から南に流れる河川(二級河川)がある。

③ 対象不動産の近隣は、東側の私道を挟む隣地にリネン・サプライ業者の倉庫等が残るものの、戸建住宅、アパートを中心とする住宅街を形成している。A駅から徒歩10分圏には中層マンションが立ち並ぶが、徒歩15分圏の対象不動産の近隣は、戸建住宅及び低層アパートを中心とした低層住宅街で、一部に空き地や空き家が散見される。

④ 対象不動産の東側道路のほぼ上空を高圧送電線が通過しているが、敷地内には鉄塔敷きは無い。

3 対象地の現地調査

① 対象不動産は、間口約30m、奥行き約40mのほぼ整形の土地に、共同住宅と空き工場がある。

② 共同住宅は、永田氏の両親の居宅だった2階の一部とアパート6戸(1 階に4戸、2階に2戸)からなる。両親の居宅は、現在は空き家、アパートも6戸中2戸は空き家の状況にある。

③ 共同住宅は築41年が経過し、物理的にも築年相当の劣化・損傷が目立ち、基礎の一部には亀裂がある。内壁にもクラックが走り、ドアの取付けの歪み等が目視される。また、アパートの空き住戸を内見したところ、間取り・設備等の機能的な陳腐化や市場性劣化がみられる。

④ 空き工場は、コンクリート床に亀裂があり、鉄骨の柱のペンキ塗装の一部が剥離し、錆が発生している。電気は、特別高圧業務電力契約は解約され、事務所部分の照明・空調のみ使用できる。建物前面の荷捌きを兼ねた駐車場は、簡易アスファルト舗装がされているが、全体的に緩やかなうねりがみられる。

⑤ 敷地は、北側道路からの共同住宅と空き工場への出入口を除き、4方全てがブロック塀で囲まれている。ブロック塀は、一部に傾斜や破損、基礎の亀裂がある。共同住宅と空き工場の間はネットフェンスで仕切られている。

4 隣接地及びその境界付近の状況

① 東側道路の対側は、相当に築年数を経過しているとみられる建物がリネン・サプライ倉庫として活用されている。

② 西側隣地は、戸建住宅が立ち並び、それぞれの住宅の塀と対象不動産のブロック塀の間は約10㎝の空間がある。西側隣地と対象不動産は、北側道路沿いでは平坦、南西角では西側隣地が対象不動産より約30㎝低い。

・地番103-1の土地上の居宅には登記名義人が居住中。

・地番103-2の土地(更地)の登記名義人は、登記記録の住所には不在で、行方不明。

・地番104-1の土地上の居宅には土地名義人が居住中。ただし、認知症の症状が重いとのこと。

・地番104-2の土地の登記名義人は、登記記録によればニューヨーク在住。

③ 境界標は、いずれの境界点にも見当たらない。官民査定も未了。

5 公簿等による調査

① 土地 所在:東京都Ⅹ市○○町101番  地目:宅地  地積:700.00㎡
同 所   102 番  地目:宅地  地積:500.00㎡
地積測量図:無

② 建物
(共同住宅)
所在地:東京都Ⅹ市〇〇町102番地  家屋番号:102番1
種類:共同住宅  構造:鉄骨スレート葺2階建て  床面積:300.00㎡
昭和52年新築

 (空き工場) 所在地:東京都Ⅹ市〇〇町101番地  家屋番号:101番1
種類:工場  構造:鉄骨スレート葺平屋建て  床面積:500.00㎡
昭和50年新築

③ 公図(抜粋)
 公図によれば、101番の土地と102番の土地の間に、東西に2本の無地番の土地が介在しているが、現況は一体の敷地として使用されている。

④ 旧公図(抜粋)
 担当取引士山田くんは、無地番の土地を調査するため、旧公図を入手した。
 これによれば、無地番の土地は、青色は水路、赤色は里道であることが覗える。

 

6 接面道路の調査

① 北側 市道

・認定幅員12.0m、官民査定未了。(道路課にて調査)

・法42条1項1号道路。(建築指導課にて調査)

・北側の道路は、車道約8m、両サイドの歩道は、それぞれ幅員約2m。対象不動産と北側の道路に高低差はない。(現地調査)

② 南側 私道(所有者M氏)

・幅員6m、M氏所有の土地(地番107番、115番、120番)における開発行為により対側に一方後退し幅員6mに拡幅された。(開発課)

・法42条2項道路に指定されている。(建築指導課にて調査)

・道路沿いにブロック塀があり、南側道路は出入口として利用されていない。(現地調査)

③ 東側 私道(所有者M氏)

・南側道路と連続するM氏の所有する私道。

・開発課及び建築指導課による調査は、上記南側私道と同じ。

・M氏が開発行為により拡幅した部分は、対側に一方後退し幅員6m、開発行為の範囲に入らない部分は3.6mの幅員の道路となっている。

・道路沿いにブロック塀があり、東側道路は利用されていない。(現地調査)

7 役所調査

① 主な公法上の規制
  市街化区域  準工業地域  建蔽率:60%  容積率:200%
  準防火地域  高度地区指定:無  敷地の最低面積制限:無
  建築協定:無
  日影規制:(一)種 4h・2.5h 測定面4m  埋蔵文化財包蔵地:無
  計画道路:無  造成宅地防災区域:外  土砂災害警戒区域:外
  津波災害警戒区域:外 

② 土壌汚染対策法第6条に基づく要措置区域及び同法第11条に基づく形質変更時要措置区域の指定:無

③ ハザードマップによれば、豪雨時に1.0m~1.5m の浸水の恐れがある区域とされている。

8 生活関連施設の調査

① 上水道:東京都水道局

・北側市道の配水管(管径200㎜)から対象不動産(共同住宅、空き工場)へ引込み。

・南側道路及び東側道路には私設の給水管(管径100㎜)。ただし、対象不動産には引込まれていない。

② 下水道:Ⅹ市下水道課

・北側市道に合流式下水道管が埋設(下水管は平成元(1989)年4月1日供用開始)

・南側道路及び東側道路には、合流式下水道管が埋設(下水管は平成10(1998)年4月1日供用開始)。

・対象不動産の排水は、北側市道の下水管に接続され、南側道路及び東側道路の下水管には接続されていない。

③ 都市ガス:Tガス会社

・北側市道のガス管から対象不動産(共同住宅、空き工場)に引込み。

・南側側道路及び東側道路にもガス管の埋設はされているが、対象不動産には引込まれていない。

9 面接聞き取り調査(売主・永田氏からの聞き取りした事項)

① 対象不動産の一帯は、元々は、河川が蛇行する湿地帯であったところ、昭和40年代の河川改修により、蛇行河川は現在のほぼ直線の河川に改修され、河川改修と同時に湿地帯の埋立て造成が施工された。

② 永田氏の父親が造成後の宅地を昭和50(1975)年に購入し、昭和51(1976)年から土地の一部でメッキ工場を操業し、昭和52(1977)年に、工場の奥に共同住宅(両親の自宅・アパート)を建築した。

③ メッキ工場は平成10(1998)年3月に廃業した。なお、廃業時に土壌調査を行ったとは父親からは聞いていない。

④ メッキ工場廃業後しばらく空き工場であったが、平成11(1999)年4月から写真の現像所としてY社に一括賃貸した。Y社は平成29(2017)年2月に退去し、賃貸借契約は終了した。現在は、再び空き工場となっている。写真現像所の退去時にも土壌調査を行ったとは父親から聞いていない。

⑤ 共同住宅のうち2階の両親の居宅だった住戸は空き家。アパートは、6世帯のうち2世帯は空き家、入居中の4世帯も6か月以内に退去通知を受けている。

⑥ 東側のリネン・サプライ倉庫は、以前はクリーニング工場であったが、平成20年頃からリネン業者が、リネン用品倉庫として活用しているが、洗濯等の作業は行われていない。

⑦ 対象不動産は、永田氏が平成29(2017)年12月に父親から相続により取得した物件であり、上記の他は詳細には把握していない。

⑧ 永田氏から、対象不動産の土地・建物の権利証のコピー及び建物図面(配置図、平面図)、建築確認通知書、建物検査済証を預かった。なお、土地の実測図、境界確認書等は、永田氏は保有していない。

⑨ 永田氏は、空き工場は建物が老朽化し、共同住宅も6か月以内に空き家になること等から、対象不動産を売却し、新たな不動産投資に売却資金を活用したい意向がある。

10 インスペクションについて

① 永田氏との媒介契約締結にあたり、担当取引士山田くんは永田氏に建物状況調査(インスペクション)を実施する者の斡旋を行った。

② 永田氏は、対象不動産の建物、特に共同住宅は老朽化が進んでおり、取り壊して売却する考えであり、インスペクションは実施しない意向である。

担当取引士 山田くん
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