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売買事例 1510-B-0204
外国人の不動産の取得売却に係る住民票・印鑑証明書の代替書類

 外国人や海外の日本人が日本の不動産を購入したり、売却する場合の登記用の住民票・印鑑証明書の代替書類を知りたい。

事実関係

 当社は不動産の媒介業者であるが、最近は外国人の土地取得やマンション購入等が増えているので、この際、そのための登記に必要な住民票や印鑑証明書の代替書類について知っておきたい。

質 問

 日本国内にいる外国人が日本国内の不動産を購入したり、売却するケースのほか、海外にいる外国人や日本人が日本国内の不動産を購入したり、売却するケースなど、それぞれのケースごとに必要となる登記のための住民票や印鑑証明書について、その代替書類を知りたい。

回 答

 住民票について
 まず、外国人の住民票については、「中長期在留者」や「特別永住者」など、日本に在留できる一定の資格を有する外国人であれば、その住居地を届け出た市区町村の窓口に申請することにより、外国人用の住民票を取得することができる(出入国管理及び難民認定法第19条の7条第1項・第3項、住民基本台帳法第30条の46)。
 しかし、日本に在留できる一定の資格のない外国人や海外に居住する外国人については、その国の官公署で発行する住所を証する書面(住民登録証明書)を入手してもらい対応するが、その場合の問題点として、それが本当に住所を証明するものであるかの判断や翻訳を必要とすることなどを考えると、かなりの時間と手間がかかる。そこで先例では、その国の公証人の認証のある住所に関する宣誓供述書であれば、所有権移転の際の住所証明書の代替になり得るので、あらかじめ依頼者から本国の住所を聞いておき、これを宣誓供述書の形式にして、それにその国の所属公証人の認証を得て、住所を証する書面とすることができる(昭和40年6月18日民事甲1096号民事局長回答)。
 また、その宣誓供述書は在日の当該大使館領事部で認証された宣誓供述書でも住所を証する書面とすることができるので、あらかじめ当該大使館領事部に問い合わせ、その発行の可否を確認しておくとよい。
 印鑑証明書について
 在日の外国人であれば、その住居を届け出た市区町村に印鑑を登録することにより、印鑑証明書を取得することができる。
 しかし、海外に居住している日本人の場合には、印鑑登録をしていないこともあり、また海外に居住する外国人の場合にはそのほとんどが印鑑登録をしていないので、日本人の場合にはその現地の公証人の署名証明書または登記委任状の内容を含んだ宣誓供述書を公証人の面前で宣誓したうえで署名し、認証文を付与してもらうという方法があるが(昭和48年4月10日民三2999号民事局第三課長事務代理回答)、外国人の場合には、その外国人が来日していれば、当該外国在日大使館でサイン証明書を発行してくれるところが多いので、それで替えることができる。しかし、そのサイン証明書と司法書士に依頼する登記委任状に署名するサインとの同一性の識別の観点から、事前に司法書士に登記委任状を作成してもらい、それを当該外国人売主に交付し、その外国人売主がこれに当該国の在日大使館において認証を受けることにより、それぞれ印鑑証明書の代替とすることができることになっている(昭和59年8月6日民三3992号民事局第三課長依命通知。後記【参照行政通達】参照)。
 なお、外国人売主が来日しなかったときの印鑑証明書の代替措置であるが、これも同様に事前に司法書士が宣誓供述書を作成し、それを当該外国人の住所宛てに郵送し、現地の公証人の面前で署名を認証してもらい、それを日本に返送してもらうことにより、登記申請の添付書類としての適格性を有することになる。
 まとめ
 以上の記述を含め、本件の問題を整理すると下表のようになるが、下表に示されている内容はあくまでも1つの参考として記載したものであって、国によっては該当しない場合もあるので、具体的なケースごとに、それぞれの本国ないし在留国の官公署に確認することが必要である。

属  性

住民票 代替書類

印鑑証明書 代替書類






(注)
中長期在留者等

外国人用の住民票
(出入国管理及び難民認定法第19条の7条第1項・第3項)
(住民基本台帳法第30条の46)

①印鑑証明書
②当該国の在日大使館または本国の官憲によるサイン証明書
③登記委任状に当該国の在日大使館の認証を受ける
(昭和59年8月6日民三3992号民事局第三課長依命通知)

中長期在留者等 以外

①その国の官公署で発行する住所を証する書面(住民登録証明書)
②先例
・その国の公証人の認証のある住所に関する宣誓供述書
(昭和40年6月18日民事甲1096号民事局長回答)
・在日の当該大使館領事部で認証された宣誓供述書

①当該国の在日大使館または本国の官憲によるサイン証明書
②登記委任状に当該国の在日大使館の認証を受ける
(昭和59年8月6日民三3992号民事局第三課長依命通知)

海外(自国)
在住

①その国の官公署で発行する住所を証する書面(住民登録証明書)
②先例
・その国の公証人の認証のある住所に関する宣誓供述書
(昭和40年6月18日民事甲1096号民事局長回答)
・在日の当該大使館領事部で認証された宣誓供述書

【来日している】
①当該国の在日大使館によるサイン証明書
②登記委任状に当該国の在日大使館の認証を受ける
(昭和59年8月6日民三3992号民事局第三課長依命通知)
【来日していない】
宣誓供述書を現地公証人に署名の認証をしてもらうか、本国の官憲が発行するサイン証明書を日本に返送

海外在住 日本人

在当該国の日本領事館もしくは大使館で発行された在留証明書
(サイン証明書も発行される)

①先例で認められた国の現地公証人の署名証明書
②登記委任状の内容を含んだ宣誓供述書を公証人の面前で宣誓したうえで署名し認証文を付与
(昭和48年4月10日民三2999号民事局第三課長事務代理回答)
③一時帰国の場合は、公証人役場に司法書士宛 の委任状を持参し、本人のサインを公証してもらう

(注) 「中長期在留者」とは、在留資格をもって在留する外国人のうち、①3か月以下の在留期間が決定された者、②短期滞在の在留資格が決定された者、③外交又は公用の在留資格が決定された者、④これらの外国人に準じたものとして法務省令(入管法施行規則第19条の5の1号・2号)で定めた者、を除いた者をいう。

 「中長期在留者 等」とは、中長期在留者、特別永住者、一時庇護許可者、仮滞在許可者、出生又は国籍喪失による経過滞在者で、市町村区域内に住所を有する者をいう。

 

参照条文

 出入国管理及び難民認定法第19条の7(新規上陸後の住居地届出)
 前条に規定する中長期在留者は、住居地を定めた日から14日以内に、法務省令で定める手続により、住居地の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法第252条の19第1項の指定都市にあっては、区。以下同じ。)の長に対し、在留カードを提出した上、当該市町村の長を経由して、法務大臣に対し、その住居地を届け出なければならない。
 (略)
 第1項に規定する中長期在留者が、在留カードを提出して住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第30条の46の規定による届出をしたときは、当該届出は同項の規定による届出とみなす。
 住民基本台帳法第30条の46(中長期在留者等が住所を定めた場合の転入届の特例)
 前条の表の上欄に掲げる者(出生による経過滞在者又は国籍喪失による経過滞在者を除く。以下この条及び次条において「中長期在留者等」という。)が国外から転入をした場合(これに準ずる場合として総務省令で定める場合を含む。)には、当該中長期在留者等は、第22条の規定にかかわらず、転入をした日から14日以内に、同条第1項第1号、第2号及び第5号に掲げる事項、出生の年月日、男女の別、国籍等、外国人住民となった年月日並びに同表の上欄に掲げる者の区分に応じそれぞれ同表の下欄に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない。この場合において、当該中長期在留者等は、市町村長に対し、同表の上欄に掲げる者の区分に応じそれぞれ同表の下欄に規定する在留カード、特別永住者証明書又は仮滞在許可書(一時庇護許可者にあっては、入管法第18条の2第3項 に規定する一時庇護許可書)を提示しなければならない。

参照行政通達

 昭和59年8月6日民三3992号民事局第三課長依命通知
「外国人が登記義務者として登記を申請する場合には印鑑証明書に代えて、申請書又は委任状の署名が本人のものであることの本邦の所属国大使館等の発給した証明書を提出して差し支えない。」

監修者のコメント

 平成25年末現在における中長期在留資格者は169万3,224人、特別永住者は37万3,221人で、これらを合わせた在留外国人の数は、206万6,445人となっており、質問のように外国人の土地取得やマンション購入事例が、今後ますます増加する傾向にある。外国人の土地等の不動産の取得については、わが法制度は相互主義をとっており、結論的には現在制限はない。
 登記の関係書類については、回答のとおりであるが、平成25年7月1日から住民基本台帳法の改正が行われ、外国人登録が廃止され、住民登録に移行した。3か月以上合法的に滞在する者には、従来、外国人登録証というものがあったが、それに代わる身分証を発行することとし、日本人と同じように住民登録ができ、住民票を作成することとなった。

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