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売買事例 1304-B-0165掲載日:2013年4月
金融絡みの物件を売買する場合の不動産担保融資制度の基礎知識
当社は、稀に金融絡みの物件を取り扱うことがあるが、金融絡みの物件についてはわからないことが多い。
ついては、金融絡みの物件を取り扱う場合の不動産担保融資制度の基本的な事柄を知っておきたい。
事実関係
当社(宅建業者)は、稀に金融絡みの事故物件を取り扱うことがあるが、とかく金融絡みの物件には裏があることが多いので、よくわからないことが多い。
ついては、金融絡みの物件を取り扱う場合の不動産担保融資制度の基本的な事柄を知っておきたい。
質問
- 通常、不動産担保融資といわれているものには、どのような担保権が設定されているのか。
- 譲渡担保とか、再売買の予約、買戻し特約、仮登記担保といわれているものは、どのような担保権が設定されているのか。その場合、登記記録にはどのように登記されるのか。
- 前記2.のような担保制度は、それぞれどのような違いがあるのか。
回答
⑴ | 質問1.について ― 抵当権とか根抵当権が中心になっていると考えられる。 | ||
⑵ | 質問2.について ― それらは、金融界の実務や判例等で認められている不動産担保融資制度であり、民法に規定されている担保物権を設定するというようなものではない。 なお、当該不動産の登記記録には、次のように登記される。 |
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⑶ | 質問3.について ― 金融界や判例等で認められている不動産担保融資制度のそれぞれの違いは、次のとおりである。 | ||
① | 譲渡担保は、担保にしようとする不動産の所有権を債権者に移し、債務者が約定どおりに弁済すれば、これを再び債務者に返還するという担保制度である。 | ||
② | 再売買の予約は、一旦売り渡した不動産を、(債務の弁済のために)再び売買して元の売主に戻すことを予約するやり方である。これは一種の買戻しであるが、民法の買戻しの規定(第579条以下)を使った場合には種々の制約があるので、制約のない民法の「売買の一方の予約」(第556条)の規定を使って行われる。 | ||
③ | 買戻しの特約は、不動産の売買契約と同時に、10年以内の買戻期間を定めて、その期間内に売主が受領した代金と契約費用を買主に返還して、その売買契約を解除することができる旨の特約である(民法第579条、第580条)。 | ||
④ | 仮登記担保は、たとえば債権者が停止条件付の代物弁済契約とか、代物弁済の予約、売買の予約などの契約をし、将来の所有権取得を保全するために仮登記をしておいたうえで、万一弁済期に債務者が債務を弁済できないときは、当然に(停止条件付代物弁済契約の場合)あるいは債権者が予約完結権を行使することによって債権者がその不動産の所有権を取得するという方法による担保制度である。 この仮登記担保制度については、昭和53年に「仮登記担保契約に関する法律」が制定され、「金銭債務」を担保するための停止条件付代物弁済契約や代物弁済予約などのいわゆる「仮登記担保契約」に基づく債権者の所有権取得に対し、一定の制約が加えられた。具体的には、債権者の所有権取得の手続として、(i)債務者に通知をし、その通知が債務者に到達した日から2か月が経過しなければ所有権を取得できないとし(同法第2条)、更に、(ii)債権者に対し、物件の評価額と債権額との差額についての清算義務を課し、清算金の支払いと所有権の移転登記および引渡しを同時履行の関係にあるものとした(同法第3条)。 |
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参照条文
○ | 民法第556条(売買の一方の予約) | |
① | 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。 | |
② | 前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。 | |
○ | 民法第579条(買戻しの特約) | |
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。 | ||
○ | 民法第580条(買戻しの期間) | |
① | 買戻しの期間は、10年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は10年とする。 | |
② | 買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない。 | |
③ | 買戻しについて期間を定めなかったときは、5年以内に買戻しをしなければならない。 | |
○ | 仮登記担保契約に関する法律第2条(所有権移転の効力の制限等) | |
① | 仮登記担保契約が土地又は建物(以下「土地等」という。)の所有権の移転を目的とするものである場合には、予約を完結する意思を表示した日、停止条件が成就した日その他その契約において所有権を移転するものとされている日以後に、債権者が次条に規定する清算金の見積額(清算金がないと認めるときは、その旨)をその契約の相手方である債務者又は第三者(以下「債務者等」という。)に通知し、かつ、その通知が債務者等に到達した日から2月を経過しなければ、その所有権の移転の効力は、生じない。 | |
② | 前項の規定による通知は、同項に規定する期間(以下「清算期間」という。)が経過する時の土地等の見積価額並びにその時の債権及び債務者等が負担すべき費用で債権者が代わって負担したもの(土地等が2個以上あるときは、各土地等の所有権の移転によって消滅させようとする債権及びその費用をいう。)の額(以下「債権等の額」という。)を明らかにしてしなければならない。 | |
○ | 同法第3条(清算金) | |
① | 債権者は、清算期間が経過した時の土地等の価額がその時の債権等の額を超えるときは、その超える額に相当する金銭(以下「清算金」という。)を債務者等に支払わなければならない。 | |
② | 民法(明治29年法律第89号)第533条の規定は、清算金の支払の債務と土地等の所有権移転の登記及び引渡しの債務の履行について準用する。 | |
③ | 前2項の規定に反する特約で債務者等に不利なものは、無効とする。ただし、清算期間が経過した後にされたものは、この限りでない。 |
監修者のコメント
不動産を目的とする債権担保制度として民法が予定するものは、抵当権・根抵当権又は質権の設定であるが、質権は不動産の占有を債権者に移さなければならないので利用がしにくく、抵当権(根抵当権)が主流を占めている。しかし、その抵当権も実行に当たっては、競売という面倒な手続を経なければならない。そこで、実務の世界で考え出されたものが回答にあるいくつかの制度である。そのうち、買戻し特約は民法上厳格な要件が規定され(これは強行規定と解されている)、なかでも買戻し価格が、当初の売買の代金額プラス契約費用を超えてはならないとされていることから債権者にとってあまり、うまみがないので、債権担保の手段としての利用は少ない。また、仮登記担保は、判例法理が確立するまでは、債権者が、債権額をはるかに超える不動産の所有権を取得してしまうという暴利的結果がもたらされた。そこで、最高裁が債権者に清算義務を課す判例理論を打ち立て、間もなく回答にある「仮登記担保契約に関する法律」が制定され、この方法を抵当権と併用して債権保全に利用する、うまみも減少した。
各種の不動産担保方法の内容は、回答のとおりであり、それぞれの法律効果を十分に吟味したうえで選択する必要がある。